浜村温泉で映画をつくる記録〈5〉キーワードその②桃井かおり
私の憧れの人、女優の桃井かおりさん。
憧れなんていったら、なんかただのミーハーみたいですが、いやまあミーハーでもあるんですが、物心つく頃からの私の生けるバイブルであり、道しるべであり、だけど届かない遠い存在、つまり、夢なのです。
親の言うことも先生の言うことも恋人の言うことも友達の言うことも聞かず、私はひたすら、桃井さんの監督作品やエッセイや雑誌のインタビューなんかを読んで、桃井さんならどうするかを考えて行動してきた。
だけど、当然私は、桃井さんではない。口ばっかり桃井節をかっこつけて、実際は実力が伴わないからすべてがうまくいかない。そして、また人を傷つける、裏切る。それでいつも苦しかった。朝起きて、鏡を見て、どうして私は桃井かおりじゃないんだと(アホみたいだけど本当のこと)自分を責めまくってた。
それでも私は桃井さんの言葉でたくさん救われてきた。桃井さんの言葉は練って創られたような完成度でありながらとても自然体。撫でもするが刺しもする。(ぜひ桃井さんの名言のまとめサイトみたいなのいっぱいあるから見てみてください。)
そんな桃井さんと一緒に仕事をするのが私の夢。ただファンとして、追っかけて、「ファンです!」なんていうのは簡単だ。そうじゃなくて対等な仕事仲間として、仕事をしたい。いつか。と思っていた。
だけど、時間は止められない。年配の俳優たちがなくなるニュースを見る度に、思う。「夢」なんていってたら、本当にただの「夢」で終わってしまう。「夢」なんて言葉に甘えてないで、つかみにいかないと。
「夢って、頭で考えるものではなく、体で見るもの。」って桃井さんは言う。桃井さんの夢の定義からすれば、私のはもはや夢でも何でもない。空想とか妄想の類いか。
体で叶えに行く。
そのために何が必要か。
桃井さんがどうやって仕事を選んでいるのかはわからないけど、やっぱり、いい作品に出たいに決まってる。桃井さんが海外で若い人たちと映画作ったりしてるのも知ってるし、旦那さんとの毎日を大事にしてるのも知ってる。
どうやったら、桃井さんの限られた時間を、少しでも私と仕事するために分けてもらえるか。全然全然分からないんだけど、桃井さんの気持ちになって一生懸命考えるしかない。もちろんお金が必要ならいくらでも積めるくらいに用意しておく。
今やれることは、私のお得意の(ていうかこうするしか脳がない)言って歩く作戦のみ。
桃井かおりさんと仕事をする夢をこの映画で叶える。