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サンタクロースの存在

クリスマスについて強烈に記憶に残っていることがある。

ギリギリ記憶があるくらいの年齢だから、私がまだ、恐らく幼稚園児くらいの頃。

まだまだ、お菓子のブーツが嬉しかったお年頃の私は、クリスマスイブの日に母に連れられて、近所のスーパーに来ていた。

スーパーにはお菓子のブーツがたくさん並んでいて、母に「クリスマスプレゼントは何がいい?」と聞かれた私は、取り敢えずお菓子のブーツが欲しいと言った。
特に、他に欲しい物がなかったから目についたクリスマスのブーツが欲しいと思った記憶がある。

母は買い物かごにお菓子のブーツを入れて、
「じゃあ、これをサンタクロースから貰おうね」と、優しい微笑みで私に言った。

小さな私はとっても聡かったので、この時、すべてを理解した。


夜になり、両親は私に早く寝ろ早く寝ろと、いつにない圧力をかけた。
取り敢えず、早くクリスマスのブーツが欲しかった私は、素直にいつも寝ている部屋の布団に入って、すぐに電気を消した。


3分後


ガラッと襖が開き、私の枕元に、ガサッと何かが置かれて、また襖が閉まった。
一瞬の出来事だ。

リビングからは、両親のヒソヒソ声が聞こえる。
「寝てた?」
「寝てたんじゃない?」


いや、そんなにすぐ寝れないでしょ。

私は心の中で、クリスマスのサンタクロースに対してだいぶ雑な両親に、静かなツッコミを入れていた。


クリスマスの朝、目が覚めた私は、枕元にあることを昨夜のうちに知っていた、クリスマスのブーツを眺めながら、妙に現実的な気持ちでいたことを今でも鮮烈に覚えている。


大人になり、フィンランドにあるサンタクロース村に行き、サンタクロースとお喋りしたことがあった。

「君の街にも行ったことがあるよ。」

と、サンタクロースは語り掛けてくれたけれど、私の家には一度も来ていないことを、残念ながら私はよく知っていたのだ。



ここを見てくださったみなさまは、何歳までサンタクロースを信じていましたか?


クリスマスが近くなり、お菓子のブーツを見かけるたびにふとこのことを思い出して、気持ちが良いほど雑な両親に笑いがこみ上げてくる。

当時子どもだった私はなんとなく残念な気持ちもしていたけれど、大人になった今、当時妙に大人になっていた自分の姿も含めて、なかなか笑える微笑ましい想い出になっている。