あなた宛の伝言、お預かりしています 4 <ミントティ>
まるで身体中に沁み込むようなミントティーを飲み干した私は、マスターにこのミントティーの淹れ方を尋ねていた。
半ば衝動的に。
「お客さま。」
マスターは、私の問いかけを聞き終えると、元から佇まいの良かった姿勢を改めてただし、私を優しく見つめた。
「それこそが、私の仕事なのですよ。」
マスターは、嬉しそうにそう私に告げた。
「私が淹れたいと思う茶葉を見つけ出し、私が淹れたいと思う水を使って。そしてそれを喜んでくれる人がいる。その循環が、なによりの楽しみなんです。」
マスターがそんな一言を紡ぐたび、茶葉を吟味しているマスターの姿や、水の味を確かめているマスターの姿が、今私の目の前で微笑むマスターの姿に重なって映るようだった。
その言葉たちを聞きながら、私の頬はだんだんと熱くなった。
もちろん、プロとしてここに居るマスターに対して、お茶なんて知識さえあれば簡単に淹れられるのではという意味合いの、浅はかな発言をしてしまったことに対しての羞恥もあったが、それよりなにより、マスターの言葉から垣間見えた、このお茶を淹れるまでに様々に為されてきた、マスターの創意工夫や一喜一憂などが伝わってきた気がして、それに興奮に似た高揚感を覚えたからだ。
「また、来ます。」
私は、マスターに訴え掛けるような勢いでそう口にした。
「このお茶を飲みたくなったら、またここに来ます!」
微笑むマスターにそんな宣言をしながら。
私の心の中には、春のひだまりのような温もりが芽生えていた。