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石井裕也監督『ぼくたちの家族』

大好きだけどなかなか好みの作品に出演してくれない妻夫木聡が、『川の底からこんにちは』しか観ていないのに信頼してしまっている石井裕也監督作品に出ているということで観に行ってきました。

まず印象に残ったのは弟役・池松壮亮の演技。人懐っこくて馬鹿っぽい、でもチャラいというほどでもない、普通で魅力的な俊介をとても自然に演じていて、ファンになりました。長塚京三と妻夫木聡が抑えた役だったこともあり、彼が主役じゃないかと思うほど。

お話自体は基本的に病気モノのフォーマットに沿っていながら、タイトルの通りそれがテーマではないので着地点も含めて雑然としているように感じました。どこかピントがずれていて、他の監督がカットしたところを繋げたドキュメンタリーのような。掴みどころがなく戸惑いながらもこの家族のことが気になってたまらない、不思議な感覚で映画館を出ました。

母の脳腫瘍という大きな出来事をきっかけに家族が集まりはするけれど、そこで起きるコミュニケーションは劇的ではなくとても普通で、この家族の実在を色濃く感じてしまう。ぼんやりとした心地良い感覚から思ったことは、理想的な家族とは程遠くても、情けなさの中にも男たちの格好よさがあり、その真ん中で可愛らしく笑う母親が居て、バラバラだけど放っておけない、それで十分なのだ、と。

4人ともそれぞれ難しい役だったのではないかと思うのですが、これだけ素敵な家族になっていたその力量も見どころ。病院の待合室での4人のシーンがとても好きです。

最後に、公式HPを見たらネタバレだらけで最悪だったので観ないほうが良いです!


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