ウェス・アンダーソン監督『グランド・ブダペスト・ホテル』
上品で知的な美しさと、テンポ良く繰り出されるユーモア。
それはリアリティとファンタジーとも言い換えられるかもしれない。
そういったものが調和し引き立て合い、観ている間ずっと楽しい気持ちだった。
多用されるセンターアングルとシンメトリーの画面は、徹底した美術と衣装へのこだわりと自信があってこそ。眼福。
キャラクターも魅力的。グスタヴもゼロも優秀なホテルマンということで個性は前面に出ないが、時折見える人間性が愛おしい。そして、仕事で得た信頼感を下地に、物語が進むにつれて絆が強まっていく関係性にとても惹かれた。
また、入れ子構造になっているお話は、少しの複雑さを加えながらこちらとあちらの世界を綺麗に結んでくれて、思う存分虚構を満喫することができた。
雪上チェイスで疾走感を味わい、脱獄や逃亡劇にわくわくし、悪人面がすぎる敵の存在にドキドキする。ゼロとアガサの真っ直ぐな恋には純粋に羨ましくなる。
100分という決して長くない上映時間に映画を観る楽しみがギュッと詰まっており、1週間経っても良いもの観たなぁという嬉しさが続いている。何度でも観たい。