caa70f09風中の縁12

巴雅爾(はがじ)と伊珠(いしゅ)5


巴雅爾は寝台に移り伊珠を招き入れた

伊珠が床に横たわると顔を覆うベールを外した

重なる唇 巴雅爾の吐息が伊珠の首筋にかかる

床に滑り落ちる蒼い衣  巴雅爾の白い腕が伊珠の体を抱きしめる

あのひとの 無忌の猛々しい愛し方とは違う 優しく包み込む様な愛し方

ひとつひとつ記憶に留めようとするように丁寧な愛撫をする巴雅爾

(巴雅爾、あなたが私を拒絶しないで受け入れてくれていたなら

あなたから離れることはなかったのに..

動の衛無忌と静のあなた

あなたが昏睡して目覚めた時 歌ではなく言葉で愛する男を教えてくれと

言った時、私は誰を選んだのだろう)

伊珠 なにを想っている 今は私だけを想っておくれ

巴雅爾が耳元で囁いた

吸い込まれるあなたの眸 あなたこそなにを想っているの

甘美な時が流れる 聞こえるのは鉄瓶の沸く微かな音だけ

ことがすみ 気だるい肢体をあなたが包んで眠る

あなたの寝息 永久の平安

もう夜は明けた?

まだだよ 星が輝いている

嘘つき 外は白んでいるわ

まだ床を出たくはないんだ このまま このままで

巴雅爾が伊珠を抱きしめる腕に力がこもる

夢かうつつか  夢なら覚めたくはない 今が続くといい

巴雅爾が伊珠をもう一度抱きしめた


‘’伊珠が東の高梁畑で巴雅爾をみつめていた

巴雅爾が西の高梁畑で伊珠をみつめていた

巴雅爾は北の高梁畑で伊珠をみつめていた

。。。。‘’







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