いや、ちがうんだけど
ふとしたことで涙が出るし朝起きた途端全力で卓球をしたような疲労感にぎょっとなりエドと顔をあわせるたびに目を見開かれシーッと威嚇されつつ徒労感に悩みそれこそまた涙が出てきて持ち直そうとインスタントコーヒーをど甘くして飲みほす。炭水化物、炭水化物。脳からの命令で最近は朝パンを食べている。朝飯を食べる習慣が昔からなかったから今さらながらの朝飯に最初胃がびっくりしてなかなか消化をしてくれず午前中膨満感がひどかったけれど徐々に慣れてきて今は逆に食べないと脳がうまく機能しないと感じる。今まで1人でこなしてきた仕事をこなせなくなった。だから、外注にだすから、営業のおじさんにいわれるも、いや、ちがうんです。なにがちがうのか不明瞭なのだけれど、半泣きでうったえた。外注にだすと外注費がかかる。けれどあたしの精神が限界に達しおじさんが外に出した。不甲斐なさをひたすら感じけれど身体もついてこずどうしょうもない感情に押しつぶされ会社のデスクでワンワンと泣いた。もう、無理、できない。泣き声がフロアーに響きわたる。涙がとめどなく出てくる。おじさんたちの顔は見えないけれどきっと途方に暮れた顔をしていたにちがいない。どうしたの? いや、ねー。そんなやりとりがあたしの頭の上で聞こえる。泣いたら多少すっきりし顔を上げ仕事の続きをしたかったけれどタイミングがわからず少ししてから泣き顔を上げた。えっ? つい声がもれた。もう誰もいなかったのだ。皆自分のことで忙しい。あたしのことを構っている暇などはない。デスクの上にお茶とシュークリームが所在なく置いてあった。お茶は汗をかいていたし、シュークリームに至っては暑さによって授乳をし終えたしぼんだおっぱいみたいになっていた。
泣きながら食べ最後まで仕事を終えた。時計を見ると23時ちょっと前だった。明日は休んでもいいから。おじさんは疲れた顔をしながらやさしい声でそう告げる。はい、すみません。そうあやまるのだけが精一杯だった。
あたしが居ないと回らない仕事。変わりはいないからね。その言葉がとてもプレッシャーになっていた。いつも緊張の糸がピンピンに張っていて緩みなどかいもく許されなく糸は徐々に細くなり緩む前にピンという音をあげて切れたのだ。糸の切れた音がしたのを確かに聞きだからこそ声をあげ泣いたのだ。
このままではどうにかなってしまう。どうにか。心の悲鳴や鬱積の吐きどころがなくてだからおとこを求めた。クタクタになった日。彼にあいたくて抱かれたし週末のヘルスバイトはお金ではなく脳の疲れをも凌駕させるほどの身体の疲れが欲しかったのだ。
あまえているのかな、と、付き合っているおとこに相談をしたこともあるけれど、おとこは首をよこにふって、そんなことないよ。会社に属している以上無理なら無理っていえばいい、といわれた。そうね、あたしはおとこに抱きついて笑顔のお面をはりつける。大きな手のひらであたしの頭をゆっくりと撫ぜるおとこを大変愛おしいと思ってその胸でまた泣いた。
それでもあたしはきっと仕事は辞めれない。いや、辞めないだろう。ヘルスのバイトも。既婚者との恋も。なおちゃんとのつきあいも。