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愚行録
愚行……。考えの足りない、ばかげた行い。
愚行録をやっと見に行った。貫井徳郎さんのなんとも言えない後味の悪いミステリー小説が大好きで、愚行録の映像化に伴い見るのを楽しみにしていた。
が、いかんせん、あたしの住んでいる田舎は最近やっと一部の映画館で上映されることを知り、今週で終わるとの最中、滑り込みセーフで観ることができた。
愚行録の小説は語り口調の小説で苦手な部類だったので、少し読み断念した。だからこそ、映像化されたものが見たかったのだ。
ネタバレは小説の中にあるため、書いてもわかっているけれど、映画はうまいことあやふやにしてあり、
考えさせられる。
妻夫木くんの死んだ魚のような目と、満島ひかりちゃんの精神を病んだ幸薄い感じがまっちし、見入ってしまった。
結局、光子こと、満島ひかりちゃんの子どもの父親は?
映画の中で育ち、家柄という単語がたくさん出てきた。子どもは親を選べない。産まれてきたところで人生の大半が決まってしまう。
お金持ちなら、お金持ちの人生を。
貧困家庭なら、貧困家庭の人生を。
なにが幸せで、なにが不幸せかなどはわからない。
大人になればあるていど自分の器量と努力でのし上がることは出来るが、記憶の断片にくすぶっている忌々しい根幹があれば、それは死ぬまでくすぶり続けてしまう。
あたしもおそろしく育ちが悪い、貧困な家庭に産まれてきた。
好んで産まれてきたのではない、と、昔、親に悪態をつき、唾を吐いたことがある。
人の親になり、
それでもなお、親の気持ちなどわかりはしない。
愚行録を観て、あたしはなんて愚行なのだろうと、
胸が熱くなった。
誰にでもある心の愚行。
あたしはこれからも愚行を録画してゆくのだろうか。