xintian zhiyang

趣味は文化鑑賞。出版社は退職しました。書いてない日曜小説家。嗜好は偏り気味。普通の人です。

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最近の記事

映画『あんのこと』入江悠 (監督・脚本)鑑賞雑記 20240623

映画『あんのこと』 (入江悠 : 監督・脚本)を鑑賞。   一言で表現するならば、これほどまでに、やるせない作品が存在するものなのか?というものだった。   物心ついた頃から、あらゆるものを奪われ続ける環境下にあり、もはや、自分自身が夢も希望も生きる意味さえ収奪されている存在であることにさえ思い至らないという、絶望よりも深い漆黒の闇のごとき人生をさまよう物語だ。   折しも、コロナウィルス感染拡大防止策が国家レベルで進行し、言うなれば、9・11以降における社会構造の変化以上に

    • 『ブルーを笑えるその日まで』(監督:脚本:武田かりん)鑑賞雑記20240109

      『ブルーを笑えるその日まで』(監督:脚本:武田かりん)を鑑賞。 2023年は、『PERFECT DAYS』(監督:ヴィム・ヴェンダース)で映画は見納めの予定だったのだが、クリスマス前、ここにきて思いもよらぬメッセージ性の強い作品に出会うことになった。 構想は数年間に及び、監督自らアルバイトをしつつ、クラウドファンディングで2年前から資金と作品への理解者(ファン)獲得に動き出していたとのこと。吉祥寺は30年間以上を歩き回っているエリアにもかかわらず、迂闊にも存じ上げず…。

      • 2023年に鑑賞した映画の一部と過去の思い出深い作品についての雑記(2023,11,25)

        皆様、こんにちは。今年の夏は強烈な暑さでしたね。しかも、6月頃から、10月どころか、11月になっても夏日を観測。11月の最高気温記録を100年ぶりに更新したとか…。ここにきて、ようやく秋らしくなってきたものの、もう11月下旬。秋をすっ飛ばして冬に突入の気配でもあります。 さて、秋と言えば、食欲の秋、芸術の秋という言い回しがありますが、最近は言わないのかな?今回は、ここ最近読んだ本のことでも…と思ったのですが、作品名を拾い出すだけでも大変なので諦めました(笑)。 代わりに、今年

        • 『アリスとテレスのまぼろし工場』鑑賞雑記 20230926

          『アリスとテレスのまぼろし工場』(監督・脚本 岡田磨里 制作MAPPA)を観た。一言でいうならば、これはぜひ観ておくべき一作だ。(一部、ストーリーの中核に濡れる部分があるので、鑑賞後に目をお通しになることをお薦めします)   公開約一か月前の予告以外の事前情報は一切無し(作品のHPも見ていない)で、そのタイトルだけを目にすると、一見すると、ジュブナイル系の学童向け作品か、ホラー要素のあるミステリー風味の作品か?と思わせられる。ところだが、その実は、しっかりした青春恋愛物語であ

          『こちらあみ子』映画公開直前に向けて、今村夏子作品を振り返る(20220525)

          記憶をたどれば、今村夏子作品との出会いは、こちらあみ子であった。ピクニックとチズさんが収録された文庫本だ。 そもそもの出会いは、広島県出身の作家さんがなにやら文学賞を受賞したということで、地元書店の店頭で新刊を目にした時だった。地元贔屓的な感覚で眺めていたことは間違いない。その後、むらさきのスカートの女で芥川賞を受賞することになるのだが、受賞後、単行本を購入してからの期間は、今村氏の作品に類似した、日常の光景を描いているはずでありながら、どこかしら心が落ち着かず、軽やかな筆致

          『こちらあみ子』映画公開直前に向けて、今村夏子作品を振り返る(20220525)

          『シン・ウルトラマン』鑑賞雑記(20220525)

          庵野監督の『シン・ウルトラマン』を観た。半世紀以上前、安良少年が『ウルトラマン』を見たときの感動を2022年現在の人々と共有したいという想いがひしひしと伝わってくる仕上がりだった。   今回、事前情報をシャットアウトして劇場に足を運んだのだが、庵野監督と樋口真嗣氏、摩砂雪氏がタッグを組んでいるのであれば、面白くないわけがないのだ(笑)。よもや、OPのメインタイトル出現の大界でおぉ!とおどろいてしまうことになろうとは思いもよらなかった。   本放送時や後年の平成ガメラの時代には

          『シン・ウルトラマン』鑑賞雑記(20220525)

          映画『大怪獣のあとしまつ』鑑賞雑記

          『大怪獣のあとしまつ』 (【監督・脚本】三木聡 松竹・東映2022年2月公開)を観た。 作品冒頭の時点で持った印象は、あぁ、庵野監督作品が世に出て以降の作品だなぁ。というものと、押井守監督が好きそうな題材のような気もするけど、押井監督がこの題材で作っていたら、どうなっていただろう?というものだった。 円谷のウルトラ・怪獣シリーズの魂を松竹と東映がそれぞれの歴史と感性でもって料理したら、タイトルや予告編から受けるであろう能天気さとは打って変わった正真正銘の感動的特撮怪獣映

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          『スマホ脳 』(アンデシュ・ハンセン〈Anders Hansen〉著 久山 葉子訳 新潮新書)読了雑記2021.02.12

          今更ながらだけれど、『スマホ脳 』(アンデシュ・ハンセン〈Anders Hansen〉著 久山 葉子訳 新潮新書)を購入。 この30年間における精神疾患、特に鬱や学習障害等々の急増要因をどこに見出すかにおいては経済格差や相対的貧困の再生産などが挙げられているが、なるほど2012年頃の電子通信分野における技術的成果を人類の変革期の波の一つと考えれば思い当たることはある。 社会とか、世間とかという単語が示す外界という概念は、基本的に、自分の足で歩いて移動できる範囲内で直接接触

          『スマホ脳 』(アンデシュ・ハンセン〈Anders Hansen〉著 久山 葉子訳 新潮新書)読了雑記2021.02.12

          アニメ映画版『ジョゼと虎と魚たち』鑑賞雑記~文学史上、元祖にして唯一の車椅子ツンデレ物語!?~2021.01.23

          アニメ映画『ジョゼと虎と魚たち』を観た。 なお、2021年1月22日現在、日本国内での上映はほぼ最終週に入り、 多くの映画館で上映終了間近となっていることをお断り申し上げておく。 まず、劇場公開に先駆け、秋口に映画館で初めて予告編を見た時の印象について。 愛らしく、涼やかで、今風の若者の雰囲気を取り込んでいて一見して親しみの持てる魅力的なキャラクターデザイン。背景美術もこのうえなく美しく、流れる楽曲も朗らかでテンポ良く、全編から明るく爽やかな印象を受けた。 関西弁というか大

          アニメ映画版『ジョゼと虎と魚たち』鑑賞雑記~文学史上、元祖にして唯一の車椅子ツンデレ物語!?~2021.01.23