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幼馴染はアイドル



僕には幼馴染みがいる。



そりゃ、幼馴染みくらいいるだろうと思うだろうけど、僕の幼馴染みは普通と違う。

そう言い切れる自信がある。



遙香「〇〇~、はやくゲームしようよ~」


一人暮らしの〇〇のベッドにもたれかかりながらゲームのコントローラーを手にこちらに向かって笑顔で呼ぶ幼馴染みの一人”賀喜遙香”。


なにを隠そう人気アイドルグループ乃木坂46のセンターも務めるエースの一人。


現役アイドルが幼馴染み。

これだけでも相当だが、まだまだ続きがある。



菜緒「〇〇、この漫画の続きどこにあるん?」

遙香がもたれかかるベッドの上で寝転びながら先ほどまで読んでいた漫画の続きを催促する美少女。

こちらも人気アイドルグループ日向坂46のセンターさま、小坂菜緒。


彼女もまた〇〇の幼馴染みの一人。


今をときめく乃木坂46と日向坂46のセンター2人が、どこにでもいる普通の大学生の部屋でくつろいでいる。

そう、賀喜遙香と小坂菜緒は〇〇の幼馴染みなのだ。





彼の名前は喜多川〇〇。

都内の大学に通う大学2年生の19歳。

どこにでもいる普通の大学生で、唯一人とは違うのは人気アイドルを幼馴染みに持つということ。

大学進学を機に一人暮らしをはじめたのだが、この段階では幼馴染がアイドルをしているなんて夢にも思わなかった。


自慢ではないが、そういう方面には興味がなかった〇〇は、アイドルなんてグループの名前くらいは聞したいたことがない程度。

テレビもゲームくらいでしか使ってなかったので、ぜんぜん知らなかったのだ。







そんな〇〇の日常が変わったのは、ある日の出来事がきっかけだった。



一人暮らしにも慣れはじめたある日、家でのんびりしているとインターホンが鳴った。


時刻は午後9時をまわろうとしていた。

こんな遅い時間に宅配便なんか来ないし、そもそも最近なにかくる予定もない。


おそるおそるインターホンに出ると、女性の声が聞こえてきた。



〇〇「…はい、どちらさまですか?」


??「あ、出た!」
??「〇〇? 〇〇やんな!?」


ん? 

どこかで聞いた覚えがある声。


その声を聞いた瞬間、一気に記憶がフラッシュバックした。



まだ大阪に住んでいた頃。

仲の良かった幼馴染みと一緒に一日中一緒にいたあのころの記憶。



〇〇「…遙香に、菜緒?」




咄嗟に言葉が出ていた。




遙香「そうだよー、開けて~」


菜緒「はよして~」



〇〇「ち、ちょっとまってて」



〇〇は慌てて玄関まで走っていき、慌てて鍵を開けた。



そこには懐かしい記憶の面影を残しつつも、美しく成長したかつての幼馴染みの姿があった。





遙香「〇〇~、久しぶり~!」


遙香はそういうと玄関前だというのに〇〇のもとに飛び込んできて、そのままぎゅうっとハグをしてきた。



菜緒「会いたかったで」


遙香に続いて遠慮がちに〇〇に抱きついてくる菜緒。



かつては感じなかった女性特有の香水の鼻腔をくすぐる香り。


そのなかにかすかに過去に感じていた幼馴染みの二人のそれぞれの匂いがして、懐かしさを感じた。




〇〇「ひさしぶり二人とも。あ、こんなとこじゃ何だからよければ入る?」



遙香「うん!」



菜緒「おじゃまします」




引っ越してきて両親以外だれも入ったことのない部屋に最初に入るのが、まさか幼馴染みの女の子だとは予想もしなかった。




菜緒「へー、〇〇にしては綺麗にしてるやん」



部屋に入ると菜緒は部屋をぐるりと見渡すようにしながらそんなことをつぶやくようにいった。


〇〇「まあ、引っ越してきたばかりだしね」



遙香「ギターまだ続けてるんだ」



遙香は部屋の隅のスタンドにかけられていたアコースティックギターとエレキギターを見つけると懐かしそうにそういいながら〇〇が中学生の頃から使っているアコースティックギターを手にして弦を鳴らした。



〇〇「趣味程度だけどね。ふたりともてきとうに座ってよ。二人とも紅茶でいいよね?」



菜緒&遙香「「うん!」」




友達にもらった電子ケトルでお湯を沸かしながら、ティーパックの紅茶をマグカップにセットする。


普段お客さんなんて来ないから不揃いなばらばらのマグカップを引っ張り出した。


自分の分はインスタントコーヒーに牛乳を入れてカフェオレにする。


ついでに一つ分だけミルクを入れてミルクティーに。

もう一つはストレートティーにして、トレーにお砂糖をのせて二人の元に戻ってきた。




〇〇「はい、菜緒はミルクティー、遙香はレモンなかったからストレートティーでいいよな」


遙香「うん、大丈夫! ありがとう」

菜緒「ふふ、覚えててくれたんやね、私たちの好きな飲み物」



三人で同じ中学に通っていたときに、コンビニで飲み物を買うとき、菜緒は紙パックのミルクティー、遙香はいつもレモンティー、そして〇〇はいつもカフェオレだった。



身体に染みついたいつもの癖のような感覚。



なんだか照れくさかったけど、二人の嬉しそうな表情を見て、自分まで嬉しくなった。


二人掛けのソファーに菜緒と遙香が仲良く座り、〇〇は彼女らと向き合う形で地べたに座りながらつかの間、久しぶりに再会した思い出話に花を咲かせた。




中学までは同じ学校に通っていた幼馴染みだったが、高校に進学する時に両親の仕事の関係で遙香は栃木に引っ越して、〇〇も東京に引っ越し、菜緒はそのまま大阪に残った。


あのときは離ればなれになりたくなくて、三人で号泣しながら逃げだそうとかバカな計画を立てたりもしたのも今となっては良い思い出だ。



当時スマホももっていなかったから、最初のほうこそ家電で電話したりもしていた。

でも、時が立つにつれて次第に連絡も取らなくなってしまっていたから、こうして二人に再会できたのは結構驚いている。



そういえば、なんで二人は自分の家がわかったんだろう。


〇〇はふと疑問に思った。



〇〇「そういえば、なんで僕の家わかったの?」



遙香「私のお母さんが〇〇のお母さんとお話しした時に、〇〇が一人暮らしをはじめたってきいて、それで〇〇のお母さんに教えてもらったの」




なるほど。

三人の親は引っ越してからもなにかと連絡を取り合っていたくらい仲良く、今でも年に1回は集まったりしているらしいから、合点がいく。



菜緒「ってか、一人暮らししたんなら教えてくれてもええやん」



拗ねたような表情で菜緒は持っていたマグカップを傾けながらいう。



遙香「そうや、せっかく三人とも東京におるんやから!」



昔のくせだろう、関西弁にもどった遙香ものっかってくるが、ここで一つ疑問が生じた。



正直二人とは連絡を取り合っていなかったから連絡先を知らないのだが、どうやら二人は今でも仲が良いようで、しかも東京にいるような口ぶりだった。



〇〇「ごめんて。てか、二人って今東京にいるの? 今なにしてるん?」



二人につられて関西弁に戻りかけた〇〇が発した言葉に、二人の表情がかわった。



菜緒「…は?」


遙香「…え?」



信じられないといった表情で〇〇を見つめる二人。



なぜそのような表情を向けられているのかわからない瑛は、慌てて言葉を発する。




〇〇「え、な、なんかへんなこといった?」




その言葉に、驚きの表情からあきれた表情に変わった二人が、今度は言葉を発する。



遙香「…〇〇、アイドルとか興味ある?」




〇〇「いや、まったく」



きっぱりと言い放つ〇〇に、再びあきれ顔となりため息をつく二人。



菜緒「乃木坂46と日向坂46って知っとる?」



〇〇「聞いたことはあるけど、よーわからん」





菜緒「…遙香、これダメなやつや」




遙香「せやね、〇〇に期待したうちらがアホやったわ」



なんか気がつけば馬鹿にされている気がするが、いちおう自分がわるいということにしておこう。


その方が良いと、〇〇はこれまでの経験で学習していた。




〇〇「えっと、なんか、すまん」



遙香「〇〇、あのテレビYouTubeうつる?」



〇〇「え、ああ、映るよ」


遙香「ちょっとかりるね」



そういうと遙香はテレビをつけるとYouTubeモードにしてからリモコンを弄りながら自分たちの名前を検索画面に入れはじめた。



〈賀喜遙香 小坂菜緒〉



そんな検索ワードでしらべてどうするつもりだと思いながらみていると、検索結果が表示されると、ものすごい量がヒットした。



そして適当な動画を再生する。


そこにはキラキラとしたアイドルらしいかわいらしい衣装を着て歌って踊る遙香と菜緒の姿が映し出されていた。





〇〇「え? こ、これって…?」



菜緒「このまえの他番組のときにコラボしたやつやね」


遙香「私と菜緒でダブルセンターやったやつね、楽しかった~!」




え、どういうこと。


頭の中の疑問が渦巻いていくが、〇〇の頭は一つの答えを導き出していた。



〇〇「…二人とも、アイドルってこと?」




遙香&菜緒「「そう!」」




〇〇「えーーーーーーーーーーーー⁉」




部屋に〇〇の声が響き渡る。

〇〇の幼馴染はまさかのアイドルだった。




つづく
※この物語はフィクションです。
※実在する人物などとは一切関係ございません。

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