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職場の女神がランチに誘うのは自分だけらしい

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午前中と言われる時間も残りわずかとなった頃合い。


ランチタイムが近づくにつれて、〇〇の意識は今日はなにを食べようかという方に、次第に向いていく。


昨日の夜は中華だったからそれ以外。


社食は食い飽きたから外かな



そんなことを思いながら残り僅かな時間ギリギリまで作業をこなす。


12時になると周りの社員たちがゾロゾロと席を立っていく。

中にはお弁当や買ってきたコンビニ飯をデスクで広げる人たちの姿も見て取れる。


さて、ご飯行くか。


〇〇はデスクチェアの背もたれに体重を預けて伸びをしてから立ち上がろうとした、まさにその瞬間だった。



麻衣「〇〇、ランチ行こ!」


なぜかテンション高めの白石麻衣が、〇〇をランチに誘いにやってきた。


〇〇「麻衣さん、お疲れ様です。俺今日外行く気分なんすけどいいっすか?」



麻衣「おっ! 奇遇だね、私も! 混むから早く行こっ!」



麻衣に”はやくはやく”と急かされて、財布とスマホだけ持って後を追う。


エレベーターのボタンを押すが、なかなかやってこない。

お昼タイムはエレベーターが死ぬほど混雑する。


下手すると何回か見送らないといけないほどに。



麻衣「んー、何食べようかな。〇〇は何の気分?」



エレベーターを待つ間、麻衣がランチメニューに思いを馳せながら、隣で立つ〇〇にも意見を求める。



〇〇「昨日の晩飯が中華だったので、それ以外でお願いしたいですw」



麻衣「お、またまた奇遇。私も昨日中華だったのw じゃあ、洋食か和食だね。ん~、何がいいかな」



そんな会話をしているとようやくエレベーターがやってきたが、案の定人でいっぱいだった。

辛うじて一人は乗れるかくらいな状態。


見送るか

そう〇〇が思いかけた瞬間。



麻衣「乗るよ!」



麻衣はそういって〇〇の手を引いてギュウギュウのエレベーターに乗り込んだ。


なんとか乗り込めたが、身体を寄せ合わないと乗れないレベル。

気が付けば、麻衣の顔が目の前に来ていた。


鼻孔を擽る麻衣の香水やシャンプーなどの香りが合わさった女性特有の匂い。


男性にとってはクラッとしそうなほどにいい香り。



〇〇「麻衣さん、近いっすw」



麻衣「しょーがないでしょw 我慢しなさいw」


わざとらしく顎を〇〇の胸元につけてしゃべる麻衣。


ワイシャツに越しに妙な振動が伝わってゾクッとしたのは麻衣には内緒だ。



そんなエレベーターからようやく解放されて、二人はオフィスビルをでてランチのお店へと向かう。



麻衣「なんか、お魚食べたい気分かも。どう?」



〇〇「いいっすね。じゃあ、”魚丞”っすかね」



麻衣「だねw」



麻衣と行先を決めてお店に向かう。


定食屋”魚丞”

焼き魚や煮魚、時には刺身など、とにかく魚を使った定食が美味しいと密かな評判の定食屋。


〇〇と麻衣がランチに魚を食べに行くとなると、魚丞に行くのがお決まりとなっていた。



店にたどり着くと、幸いにも並んでいる列はなく、すぐに店に入れた。


テーブル席に対面する形で座り、メニューを二人の間に広げて二人して覗き込むようにして選ぶ。


麻衣「〇〇決まった?」


〇〇「はい」


麻衣「おっけー、すいませーん!」


麻衣が店員を呼ぶ。


麻衣「私は、ぶりの照り焼き定食でお願いします」


〇〇「俺は、銀だら西京焼き定食で」



店員は注文をとるとカウンターの中へ戻っていった。




麻衣「すんなり入れてよかったね」


〇〇「そうですね。いつも結構並んでるんですけどね」


麻衣「日ごろの行いがいいからかなw」


〇〇「俺がっすか?w」


麻衣「私に決まってるでしょw」


〇〇「えー、黒石さん発動させてばかりじゃないっすか」


麻衣「あ?」


噂をすれば…

美人の真顔はマジで怖い。


〇〇「調子乗りました。すいません!」 


麻衣「まったく、新入社員のときにおどおどして可愛かった〇〇はどこに行ったのやら」




麻衣と〇〇は、〇〇が新入社員として入社した時からの付き合いである。

〇〇が入社した時の指導員が麻衣で、社会人としてのイロハを教えてもらった恩人でもある。


だからこそ、〇〇は麻衣に頭が上がらない。

それだけ尊敬しているし、恩も感じている、大先輩なのだ。


それは麻衣が出世して、〇〇も中堅社員というポジションになっても変わらない。

同じ部署の上司部下。

しかし、それ以上の信頼関係が〇〇と麻衣のあいだには形成されていた。




店員「ぶりの照り焼き定食と銀だら西京焼き定食おまちどうさまでした~」




二人の前に、それぞれの定食が置かれる。

どちらも食欲を掻き立てるおいしそうな香りと見た目。



麻衣「じゃあ、いただきまーす!」

〇〇「いただきます!」



二人は勢いよく定食を頬張る。

麻衣「ん~、おいしー! やっぱ魚丞のぶり照りは絶品だわ!」



〇〇「ほんと、毎回思いますけど、美味しそうに食べますよねw」



麻衣「ん? だって美味しいんだもん」



裏表のない性格。

それこそが麻衣が万人から好かれる要因なのだろう。


”女神”とあだ名されるだけはある。



麻衣「〇〇だって美味しそうに食べるよね」



〇〇「そうっすか?」



麻衣「うん! 美味しそうに勢いよく食べてて見てて気持ちいいよ」



〇〇「マジすか。初めて言われましたw なんか照れますけど、ありがとうございます///」



麻衣「あ、照れてるww フフ、でも〇〇と一緒にご飯食べるの、私は好きだよ。私がランチ誘うの、男の人だと〇〇くらいだからね」



〇〇「あ、ありがとうございます///」



思わず照れが止まらなくなる〇〇。


そのあと、二人でスタバによってコーヒーを帰ってから会社に戻った。



会社の女神とランチに行ける。

それは男性社員の羨望の的となるのを、麻衣は知ってか知らずか、デスクに着くまで〇〇と並んでオフィスに戻る。



そのあと、男性社員の同僚たちから羨ましいオーラを浴びせられる〇〇なのであった。







つづく

※この物語はフィクションです。
※実在する人物などとは一切関係ございません

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