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5 隣は推しメン
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会社で仕事をしていた〇〇。
定時まであとわずか。
順調にタスクをこなし、珍しく面倒な突発的な打ち合わせなどもほとんど入ってこなかったおかげで定時上りがみえてきた。
〇〇「(よし、今日は早く帰れそ………ん?)」
デスクに置いておいたスマホにLINEの通知が届いた。
ブラインドタッチをしながらもスマホの液晶画面に視線を向ける。
そこに表示されていた”賀喜遥香”の文字。
なんだろう。
打っていたPCの文字を打ち終えると、〇〇はスマホを手にしてメッセージを確認した。
遥香「< おつかれさま、〇〇! 今日も夕ご飯一緒に食べてもいいかな? >」
遥香からのメッセージ。
わざわざ言わなくてもそのつもりだった〇〇。
言われて改めて思ったが、アイドルとご飯を食べてるってすごい状況だなと思いながらも、遥香に返事を返す。
〇〇「< おつかれさま。もちろんいいよ。なにか食べたいものある? >」
〇〇が返信するとすぐに既読がついて、返事が返ってくる。
遥香「< お魚料理がいいって! >」
ん?
いいって?
なんだか言葉に引っかかりがあるが、まあいいかと遥香に”了解!”と返して残りの仕事にとりかかった。
なんとか無事に仕事を定時で終えた〇〇は、近くのスーパーで買い物をしてから帰ることにした。
さて、なににしようか。
魚料理というリクエストだけを頼りにスーパーを徘徊する。
入口から進み、魚売り場へ。
もう時間も遅いのであまり残っていない。
〇〇「お、鯖が残ってる」
辛うじて鮮度が良さそうで、売れ残っているものを見つけた。
パックに入った鯖を買い物かごに入れる。
〇〇「(鯖か… じゃあ、あれを作ろうかな…)」
つくるものを決めて、残りの食材もスーパーで買って家へと急いで帰る。
手を洗って、さっそく晩御飯の準備をしていると、少しして玄関のドアが開く音がした。
「おじゃましまーす!」
ん?
おじゃまします?
明らかに遥香のものではない声が聞こえてきて、思わず手が止まる〇〇。
しかし、考える間もなく玄関に通じるリビングのドアが開いた。
真佑「わー! なんかいい匂いがする!」
遥香「〇〇、ただいまー! ごめんね~」
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ドアが開いて入ってきたのは遥香だけではなく、彼女と同じ乃木坂46で遥香と同期の田村真佑の姿があった。
〇〇「え? あ、ま、まゆたん!?」
真佑「どうも、田村真佑です! あなたが〇〇さん?」
〇〇「は、はい、そうですけど…」
真佑「かっきーから話を聞いて会いに来ました!」
〇〇「え? かっきー?」
〇〇は思わず遥香をみる。
遥香「ご、ごめん! お弁当食べてるときに思わずまゆたんにポロっと言っちゃって…」
ああ、なんとなく想像できる。
かっきー、たまにおっちょこちょいだもんな…
〇〇「まあ…いっか。 食材も余分があるし、まゆたんの分もつくるよ」
真佑「ほんと!? やったー!」
遥香「ごめんね、ありがとう、〇〇!」
ということで、まゆたんの分の料理も仕上げることにする。
〇〇「はーい、おまたせしました」
料理をさらにのせてテーブルへ並べる。
真佑「わー! 美味しそう!」
遥香「すごい! 〇〇、これってなんて料理!?」
〇〇「鯖のハーブチーズ焼き。簡単にできるけど、美味しいから是非召し上がれ」
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真佑「すごっ! これ本当に〇〇さんがつくったの!?」
〇〇「ええ、まあ。でもそんな難しくないですよ」
真佑「んんん、なかなかやるわね… いや、でもまだ食べてみないと」
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料理を前にボソボソと独り言のように唸っている真佑。
〇〇「ま、まゆたん?」
遥香「と、とにかく食べよ! 冷めちゃうまえに!」
〇〇「そうだね。じゃあ―」
遥香・真佑「「いただきまーす!」」
真佑は料理をひとくち口にいれる。
真佑「ん~~~! うまっ‼」
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遥香「でしょ!」
なぜか遥香がどや顔を披露している。
〇〇「なんでかっきーが自慢げなのw」
遥香「んふふ、〇〇の料理は私が一番よく知ってるからねー」
〇〇「まあ、確かに一番食べているのはかっきーだね」
遥香「でしょ?」
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遥香はそういうと屈託のないまぶしい笑顔を見せる。
〇〇と何気ないやりとりで自然に笑いあう二人。
それを真佑は料理をもう一口食べながらおもむろに言葉を漏らす。
真佑「これはかっきーの胃袋がつかまれちゃうのもわかる気がするわ…」
遥香「ん? どうしたの、まゆたん?」
遥香がふと真佑を見ながらいう。
すると、真佑が満足そうに遥香と、そして〇〇を交互にみてから大きな声で指でOKサインをだしながら立ち上がった。
真佑「合格!!」
なにがなんだかわからない〇〇と遥香。
〇〇「え? ご、合格って??」
真佑「とりあえず〇〇さんなら、かっきーのお世話を任せられるので合格よ!」
遥香「ちょ、まゆたん! お世話って」
真佑「だってかっきー料理できないし、意外とズボラでしょ」
遥香「そ、そんなこと…!」
真佑「あるでしょ…?」
遥香「う、うぐっ… は、はい そうです…」
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どこかで見たことのあるようなやりとり。
二人の関係性が見て取れる。
真佑「というわけで、遥香のことよろしくね、〇〇さん」
〇〇「は、はい!」
というわけで
とりあえず真佑に認めてもらえたらしい〇〇。
しばらくはこの関係も継続ということになったようだ。
真佑「あ、見てみて! かっきーの写真集あるよ!」
遥香「ちょ! まゆたん恥ずかしいからやめて!」
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ご飯を食べ終えて、遥香と真佑は帰っていくと思っていたがなぜか部屋に居座っていた。
そして、気が付けば〇〇の部屋から遥香の写真集を見つけると、ソファーに腰かけて談笑中。
真佑「ってか、〇〇くん私の写真集ないんだけど~」
すっかり打ち解けて”〇〇くん”呼びになっている真佑は、遥香の写真集を片手にいたずらに言う。
〇〇「だって、推しメンはあくまでかっきーだから」
真佑「ちぇー で? 〇〇くんのお気に入りはどのカット?」
〇〇「え?///」
真佑「さぁさぁ、どれどれ?」
ニヤニヤと迫る真佑。
なんだか、逃げられる気がしない。
遥香の気持ちが少しわかった気がした。
〇〇「俺が好きなのは……これ…///」
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真佑「あー、さすが〇〇くん、お目が高いね~ でも、水着とかランジェリーカットとかじゃないんだ?」
またニヤニヤしながら聞いてくる真佑。
酔っているのかと問いただしたくなるが、そんなことはないのだから恐ろしい。
それに真佑だから許される絡み方である。
〇〇「んん、確かにそういうのも魅力的だけど、やっぱりかっきーの一番の魅力は笑顔だと思うから。だから一番いい笑顔のこのカットが好き…///」
自分で言っていて思わず照れ臭くなる。
真佑「ヒュ~ ほんといい人だね〇〇くんは」
真佑は〇〇の答えをきくと、満足そうに写真集を戻すために〇〇の寝室に向かっていった。
なんとか乗り越えた。
真佑を見送っていた〇〇はそのままソファーに深々と身体を預け息を吐きながら目を瞑った。
すると、グイッととなりに重みが加わった感覚。
目を開けると、そこにはすぐ隣に腰を落として、〇〇にもたれかかるように座ってこちらを見つめている遥香の姿があった。
遥香「ふふ、私の”笑顔が好き”かー、そっかそっか」
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嬉しそうにそういいながら〇〇を見つめる遥香。
〇〇「聞いてた…のね?///」
遥香「ばっちり」
〇〇「…忘れてください///」
遥香「やーだ」
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遥香はそういいながら、〇〇の肩に手をかけながら〇〇をみつめるのだった。
つづく
※この物語はフィクションです。
※実在する人物などとは一切関係ございません。