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公共事業を受託するという仕事の話

メルマガでも読書メモでもないnote、ちょっと久しぶりです。

3月が決算期の我が社も、決算が終わり、法人税の納付を済ませました。超ちっさい会社なのでたいした金額じゃありません。ただ、2016年に法人化したことで、自分自身が納税者であるということを、より強く意識するようになったように思います。会社員だって納税してるんだけど、給与から天引きされちゃうから意識しずらいんですよね。

で、納税者のひとりであることを強く意識するようになると、同時に、その税金は適正かつ有効に使われているのか、ということも気になり始めます。そしてこれ、ブーメランのように自分に返ってきます。なぜなら、私自身が公共事業に関わることが多いから。「納税者である自分が納得できるかどうか」というのが、自分の仕事に対するクオリティ評価のモノサシになる。これ、けっこうキビシイ(笑)。キビシイんだけど、同時にここだけは妥協したくないポイントというか、この視点があるから公共事業に関わることができるんだろうとも思っています。

公共事業とひとくちにいっても、いくつかの種類があります。自社事業に対して補助・助成金を受け取るタイプのものとか、特定の業務を委託されるタイプのものとか。私が関わるものの多くは、特定の業務を行政機関から委託されるタイプのものです。受託事業者の決定方式もいろいろあって、かかる金額を比較する競争入札という形式もありますが(工事や物品など)、私の仕事の場合、事業内容が問われるタイプのものなので、企画提案(プロポーザル)形式になります。「公募要領」が公開され、「仕様書」にしたがって企画を提案するというものです。公募情報はWEBサイト上でオープンにされていますし、公正な審査を経て事業者が決められます。特定の事業者に便宜をはかるなんてできない仕組みですね(笑)。それでも悪いことをする人はいるんでしょうが、こうした公共事業の仕組みというかは、税金がどう使われているのかは、関わってみるまで知らなかったことでもありました。

もうひとつ、一般的には知られていないというか誤解されがちなことなのですが、公共事業を受託した事業者は、その事業で利益は出せません。総事業費に対して一般管理費が10%程度ということが多いからです。一般的な企業活動と比較すると、かなり少ないですよね。事業単体でシビアにみたら、実質的には赤字なんじゃないでしょうか。その上、超絶細かい会計報告を求められます。特に中央官庁からの直接委託だと、かなりシビアです。この業務にかかる負荷がハンパない上に人件費としてカウントできなかったりもする。そうしたこともあってか、委託元から示された「仕様書」に従って「言われたことだけ言われた通りに」「効率的にさばきたい」と考える事業者もいたりします。なんですが、私はこのスタンス、いちばんキライなやつでして。「納税者である自分が納得できる税金の使われ方か」と考えたら・・・消化試合みたいにテキトーにされたらイヤじゃないですか?

なので、ここで大事なのは、なぜ公共事業を受託するのか、売上という数値以上の意義を見出せているか、という点だと思ってます。ひとつは、公共事業そのものの意義。必要だから事業が存在するわけなので、誰に・どんな価値を提供するものにするのかにこだわることは大前提。さらにいうなら、その価値を最大化して社会に還元できるようにすることにも視野に入れられたら・・・。もうひとつは、自社にとっての意義。公共事業を受託することで何を得たいのか、どう自社事業に活かしていくのか。こうした視点ナシに公共事業だけにしがみついていると、赤字体質から抜け出せなくなってしまいますし、なにやってる会社かわからなくなる、なんてことも。売上以上の意義を明確にすることが、結果的に社会に価値を還元していくことにつながるはずだと思ってます。

というわけで、今年度もスタートしてあっという間に1ヶ月が経過。末端に過ぎないのですが、いくつかの公共事業に関わることになりそうです。微力ではありますが、いずれの事業も、納税者たる自分が納得できる仕事にすべし、と襟をぴしぃっと正す5月。あらためまして、今年度もどうぞよろしくお願いします。
あ、ちなみにですね、こうして自分の仕事の手綱を手離さないことも、ストレスコントロールになってます。公共事業は担当者と仕様書次第な部分も大きいので、うまくいかないことは、本当にいろいろ起きます。

松倉由紀
キャリア教育コーディネーター・教育研修プランナー。1975年長野県上田市生まれ。静岡大学人文学部卒業。地元での就職に失敗(4か月めで退職届!)ののち、大手通信教育会社、人材派遣会社、コンサルティングファームを経て現職。キャリア教育の領域で教育プログラム開発と「しくみ作り」をする「企画屋」「クリエイター」であり「風呂敷たたみ屋」。2016年4月個人事業主から法人成り(株)ax-factory(https://ax-factory.wixsite.com/corporate)を設立。2020年京都造形芸術大学通信教育部(グラフィックデザイン)を卒業。デザインで学びをおもしろくします。
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