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「宇宙ビジネス」がなくなる日

こんにちは、CEO中村に3回目のバトンが回ってきました。

急に暖かくなり、東京では桜の花も半分以上葉っぱに変わってしまいましたね。特に先週末は汗ばむ陽気で、半袖姿の方も多く見られました。私は5歳の息子と江戸川区にある葛西臨海公園に出かけたのですが、多くの人で賑わっていました。余談ですが、アクセルスペースでは自発的な部活動もあって、趣味の合う人が集まって時々遊んでいます。先週もSlackの部活チャンネルでサイクリングとフットサルが企画され、参加者募集が行われていました。私はカラオケ部所属なんですが、みんなで行くにはまだちょっと早そうですね。。。

いきなり話題が逸れました。今回、ちょっとセンセーショナルなタイトルをつけてしまいましたが、これは実は私が何年も前から機会があるごとに言及している点であり、今後のわれわれのビジネスを考える上でとても大事なテーマだと思っています。もちろん、宇宙ビジネスが「なくなる」と言っても、衰退して消えてなくなるという意味ではありません。

場所で定義されたビジネス

世界の宇宙産業が、スタートアップ企業の主導により大きく変わりつつあることは多くの方がご存じではないかと思います。SpaceXなどはその筆頭格ですよね。宇宙に限らず、主にスタートアップがテクノロジーの力で既存産業をdisruptする(これまでのあり方を大きく変える)動きというのはいろいろなところで起こっていて、その事業領域を表す言葉として「なんとかテック」がよく使われます。「なんとか」の部分には既存産業が入ります。例えば、金融であればFinTech(フィンテック)、農業であればAgriTech(アグリテック)、教育であればEduTech(エデュテック)など。「フィンテック企業」といった言葉は耳にする機会も多いのではないでしょうか。FinTechほど有名ではありませんが、宇宙もSpaceTech(スペーステック)として話題に上ることもあります。こうしたスタートアップが牽引するさまざまな事業領域の中で、宇宙だけは特殊です。なぜか。

それは、宇宙だけ、場所を表す言葉だからです。金融も医療も、不動産も教育も、健康も農業も、他はみんな事業領域を表しているのに。そう考えると、「宇宙ビジネス」って何なのでしょうか。他の場所に置き換えてみたらどうでしょう。「空ビジネス」「海ビジネス」「砂漠ビジネス」「東京ビジネス」。。。なんか変ですよね。宇宙がフロンティアで、人類の活動の種類が少なく、規模も小さかったから、これまで特に問題はなかったのだと思います。

「宇宙ビジネス」の行く末

しかし今や、「宇宙ビジネス」に含まれるものは多岐にわたります。ロケットや衛星などの宇宙機開発のほか、地球観測(衛星画像)や衛星通信などはイメージしやすいと思いますが、近年は新しい分野が次々と出てきています。宇宙旅行、宇宙資源探査、宇宙エンタメ、宇宙建築などなど。また、衛星を作るプレイヤーが増えたことで、その周辺にも新たなビジネスが生まれています。小型衛星用コンポーネント製造、宇宙ゴミ監視・除去、衛星への燃料補給、地上局ネットワーク、衛星画像のAI解析などなど。「宇宙ビジネス」の意味するものは、拡大の一途をたどっています。

そのうち、いや、すでにと言った方がいいかもしれませんが、「宇宙ビジネス」の指すものが広くなり、多様化しすぎて、何か意味のある表現ではなくなりつつあると思っています。これは、インターネットと同じかもしれません。例えば今どき、「当社は革新的なインターネットビジネスを展開しています」と投資家にピッチする起業家はきっといませんよね。

「宇宙ビジネス」という言葉は、近い将来使われなくなるでしょう。宇宙ならではのビジネス、つまり宇宙であるからこそ意味のあるビジネスについては、カテゴリごとに分類されていくことになると思います。例えば宇宙資源探査、宇宙輸送(ロケット)、軌道上サービス(宇宙ゴミ監視や衛星への燃料補給)などと言ったビジネス。そうでないものは、地上の類似のビジネスカテゴリに吸収され、それらの延長・拡大として語られるようになるのではないでしょうか。国内旅行と海外旅行をビジネス分類上分けたりしないように、宇宙旅行も旅行ビジネスの一部と見なされるようになるでしょう。衛星画像分析も、本来航空写真分析と分ける必要はないはずです。

少しさみしい気もしますが、しかしこれは喜ぶべき変化です。私は、「宇宙ビジネス」という言葉が使われなくなってはじめて、「宇宙ビジネス」は成熟したと言えるのではないかと思います。

ちなみにアクセルスペースは、地球観測ビジネスと定義できるAxelGlobeだけでなく、特定の顧客向けの専用衛星開発も行っているので、事業全体を表す適切な表現が今のところないですね。もしみなさんにいいアイデアがあればぜひ教えてください。

宇宙を普通の場所に

アクセルスペースのビジョンは「Space within Your Reach」です。直訳すれば「手の届く宇宙」ですが、日本語では「宇宙を普通の場所に」と表現しています。宇宙が普通の場所になり、「昔、自分たちの事業を宇宙ビジネスと呼ぶ時代があったなあ」とビール片手に懐かしむことができるように、これからも着実に成果を積み上げていきたいと思います。

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