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【徹底解説】エリック・テンハグのすべて:PART3(マンチェスターユナイテッド編)

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はじめに

2024年9月10日現在、3シーズン目を迎えたテンハグ。
1シーズン目はプレミアリーグ3位、カラバオカップ優勝という好成績を納めた。
しかし、2シーズン目は最悪と言っていいほど過酷なシーズンとなった。
怪我人の続出(CBが0人の時も)や、選手のプライベートでの問題などピッチ内外で様々な問題が発生し結果、プレミアリーグ8位フィニッシュ。
マンチェスターユナイテッド過去最低順位で終えるシーズンとなった。
だが、FAカップを優勝したことによりヨーロッパリーグ(EL)出場権を獲得し、首の皮一枚で繋がったというところだろう。
そして、彼のクビがかかっているとも言える24/25シーズンが始まった。優秀なオーナー、フロント陣に「私はユナイテッドを再建できる監督だ!」と示せなければ確実に解任されるだろう。

PART3では22/23、23/24シーズンのテンハグの戦術を中心に振り返っていこうと思う。


第1章:22/23シーズン

土台作りのはずが理想から遠のいたシーズン

 就任初年度、クリスティアーノ・ロナウドの度重なるトラブルなど、問題を抱えながらもマーカス・ラッシュフォードの覚醒によってプレミアリーグ3位、カラバオカップ優勝という好成績を収めた。
 問題が起きたとしても対処できた理由として、PART1, 2でも紹介したマネジメント能力の高さを備えていたからだろう。
 また、ガルナチョをトップチームに定着させたこともテンハグの成果と言ってもいい。

 しかし、戦術面はというとテンハグの理想とするポゼッションハイプレス戦術で戦うことは少なく、自陣でブロックを敷きブルーノをファーストターゲットにした鋭いカウンター戦術を多用していた印象だ。
 ユナイテッドにはどちらかというと、ポゼッションよりカウンター向きの選手が多いため、22/23 はテンハグの理想とするフットボールを構築するための土台作りのシーズンだったように感じられた。

 しかし、選手に合わせた戦術で勝てば勝つほどテンハグの理想からは遠のいていた。以下のスタッツを見れば明らかだろう。

 リヴァプール、アーセナル、マンチェスター・シティ、バルセロナを撃破した4試合は、ポゼッションの平均が35.8%。パス本数の平均は、相手が516本でこちらは242本。

 なぜ、テンハグは理想とする戦い方ではなく現実的な戦い方を強いられたのか。
理由は、夏の移籍市場で第一ターゲットだったフレンキー・デ・ヨングを獲得できなかったからだ。
デクラン・ライスロドリのようなショートパスとロングパスを巧みに操り、ドリブルで中盤をコントロールするMFの獲得は、彼の理想とする戦術を体現するため第一歩だった。

 しかし、実際に補強したのはBプランのカゼミロ。ボールを刈り取る能力と危機察知能力に長けた潰し屋
 縦パスを入れたり、展開したり、DFラインからパスを引き出したりなどというプレーは苦手。
 カウンター戦術に振り切った
22/23シーズンにおいては、彼の獲得は成功と言える。

・テンハグの鋭いカウンター戦術

ブロックを形成した守備

 22/23シーズンの守備では、ブルーノを起点とするカウンターを展開するために自陣でブロックを敷いたゾーンディフェンスが多く見られた。
 CFとトップ下でアンカーへのパスコースを消した「4-2-3-1」のブロックを形成。

ボール奪取からカウンターへ

 チームが自陣でボールを奪うと、ブルーノが空いたスペースへ下りてくる。
まずは、ブルーノにボールを付けることがチームの最優先。敵のプレスが及ばないフリーの状態でボールをもらうことで簡単に前を向ける。

 その状態でボールを受けたブルーノは自身のヴィジョンを用いて、完璧なタイミングで非常に質の高いロングパスを全線のラッシュフォードへ届ける。

 あとは覚醒したラッシュフォードが決め切るだけだ。

 運動量をそこまで必要としなかったからこそ、カゼミロエリクセンの2センターは機能し、ビルドアップがシンプルでOKだったからこそ、ヴァランは素晴らしい活躍を見せてくれた。(マドリー時代はラモスがなんとか相手を剥がすことで成立していて、ヴァラン自体はあまりビルドアップが得意ではなかった。)

このように、テンハグはカウンター戦術を基本に置いたことで22/23シーズンは好成績を収めることができた。

・22/23シーズンで浮き彫りになった課題とは?

理想とする戦術の不定着

ジョン・マータフ元SDなど有能とは言えないフロント陣によって、テンハグの理想とするフットボールを行うための補強ができず、カウンターが基本戦術となりポゼッションの土台作りができなった。

得点力不足

このシーズンはラッシュフォードの覚醒があったからこそ、好成績を収めらえたものの、彼以外の得点源がなかった。したがって、10ゴール以上を狙えるFWを獲得することが来シーズンに向けた課題となった。

オーナー問題

金の亡者・グレイザーファミリーによって、クラブの買収問題がずれ込みチーム強化の停滞が起きてしまった。23/24シーズンの移籍市場については次の章で述べようと思う。

第2章:23/24シーズン

プライベートの問題と怪我人続出

 プレミアリーグ3位フィニッシュ、カラバオカップ優勝。
 初年度のミッションを達成したテンハグは、2度目の夏に理想のフットボールに近づくべく大型補強を敢行。
 ビルドアップに問題があったデ・ヘアに代わり、足下技術が高くアヤックス時代に指導経験のあるアンドレ・オナナをインテル🇮🇹から獲得。
 そして、運動量と前への推進力があるメイソン・マウント、スピードとフィジカルを兼ね備えたラスムス・ホイルンドを獲得。しかし、予算不足のなかで進めた補強はバランスが悪かったといわざるを得ない。

 この夏の移籍市場を振り返ると、最前線と中盤のキーマンが高額すぎたため、懸案だったMFとCBの適任を獲得できなかった。
 ホイルンドに7200万ポンド。メイソン・マウントに6000万ポンド。ラトクリフ、INEOSが集めた新生フロント陣ならもっと良い取引をしてくれただろう。

 シーズンが始まると、ホイルンドが早々に怪我で離脱カゼミロの不調により守備が崩壊し開幕5戦で3敗を喫しスタートダッシュに失敗。ラッシュフォードの覚醒も終了。さらに守備の要であるリサンドロ・マルティネスが長期離脱を強いられると、アントニーの暴行疑惑、そしてサンチョが指揮官との確執で構想外になるなど、内部に大きな問題を抱えることに。

 2シーズン目に入ったテンハグは選手が揃わないまま、理想のフットボールを無理やり追求する。結果、選手たちに戦術が浸透するまでに時間がかかり、攻守ともにスタイルやコンセプトが曖昧に。リーグでは中位に沈みチャンピオンズリーグはグループ最下位で敗退してしまった。

 テンハグのサッカーはファーストチョイスの選手が怪我せず揃っていれば強い。しかし、怪我人が出た瞬間、崩壊が始まる
 PART2でも述べたがローテーションをほとんどしないことがその要因だ。

 結果論だが、これだけの問題をシーズン序盤に抱えてしまったのなら、もう1年カウンターに徹すると割り切った方が”成績は”良いシーズンを送れたのではないかと考えてしまった。

・最悪のシーズンでも視えた希望の光

 過去最低と言っても良い23/24シーズンだったが、アカデミー出身のガルナチョ、メイヌーはサポーターに未来への希望を感じさせてくれた。
 ガルナチョはフィニッシュワークこそ課題はあるものの積極的な仕掛けとオフザボール、そして何より献身性の高さを見せチームを活性化させた。メイヌーはフィジカルと卓越した技術とプレービジョンでゲームをコントロールし守備でも奮闘。これからのユナイテッドの中盤は彼が中心だろう。
 二人共まだ粗削りな部分はあるもののチームへのコミットメントの高さを見せてくれた。
ホイルンドも最終的にはリーグ10ゴール2アシストの成績を収めた。24/25シーズンに期待だ。

・中途半端なフットボール

 正直、23/24シーズンに戦術と呼べるものなんてほぼ無い。
 序盤から終盤にかけて攻守の戦術を落とし込めておらず、結果的にビルドアップは選手任せとなってしまった。選手任せのビルドアップだとしても決まり事があれば良いもののそれも見られなかった。
 ほぼ毎試合と言っていいほど異なるスタメンで戦わざるを得なかったことも戦術の不浸透の原因と考えられる。
 このシーズンから本格的にカウンターからポゼッションへ移行しようとテンハグは考えていただろう。
 しかし、0を1にするシーズンにしては問題が起こりすぎた。あの状況でチームを作り上げられる監督なんていないだろう。同情の余地は大いにあるが、、、

良い兆しが見えた1つの攻撃パターン

 シーズン通して、ユナイテッドが上手くいく時のパターンは1つ見られた。
言っておくが”1つ”だけだ。

 そのパターンとは、アンカーを飛ばして1つ落とし展開することだ。
2CBやオナナから全線の選手に配球しボールをキープ。落とし先には多くの場合、ブルーノがスペースを見つけポジションを取る。前向きでボールを受けたブルーノは簡単にサイドに展開でき、チームはゴールへと迫っていく。

 この攻撃において、ホイルンドのポストプレーは非常に効果的だ。ほとんどの相手を背負え、的確にボールを落としてくれるため攻撃をスムーズに運ぶことができる。
 ブルーノやエリクセンにボールを落とせば、非常に精度の高いキックでサイドに展開できる。メイヌーならば1枚相手を剥がしチームを前進させてくれる。

ドーナツのようにぽっかりと空いた穴

 ボールをロストした場合、高い位置でハイプレスを仕掛け、ボールを奪い攻撃を繰り返すというのがテンハグが理想とするフットボールだ。
しかし、23/24シーズンの守備ははっきり言って酷すぎる

ハイプレス戦術が浸透し切っておらず簡単に相手の前進を許してしまう。中でもラッシュフォードの守備はマイナスな意味で非常に存在感を見せた。約10年間、守備をしていなかったため、守備の仕方が分からない。そんな彼がいきなり守備を覚えられるとは到底考えられない
 そんな彼を使い続けたテンハグにも責任はあるだろう。

 攻撃に人数をかけるが機能しない中途半端なハイプレスを行うため、DFとMFの間に大きなスペースを与えてしまう。そして、相手が数的有利のカウンターを受け失点することが非常に多かった
 海外ではDFとMFの間が空いていることから、ドーナツ・デフェンスと呼ばれていたこともあった。

 また、ペナルティエリア内では帰陣が遅いため、マンツーマンで守備をしなくてはならない状況が多々見受けられた。
 PA内においてマンツーマンで守備をするデメリットとして、サイドやポケットでボールを持った相手へプレスを仕掛けると、選手たちは自動的に1つニアの相手へマークをずらさなければいけなくなる。その結果、ファーにガラ空きのスペースを作りそのスペースを突かれ失点してしまう。
 そのため、プレスバックと帰陣の速さはこれからのユナイテッドにとって大きな課題だ。

 ただ、シーズン終盤のテンハグは守備陣形に修正を見せた。
ブルーノをゼロトップ起用。そして、ハイプレスにこだわらず「4-2-4」の陣形でゾーンを形成することによって、中盤をコンパクトに。
 ブルーノとマクトミネイで敵の2センターをマークしながらCBに牽制をかける。ウイングは中に絞り、2センターを警戒しながらサイドバックにパスが出た際にはプレスをかける。
 相手は中を経由したビルドアップが難しいため、外から迂回してユナイテッドの綻びを探す。しかし、ユナイテッドのサイドバックには守備能力の高いワンビサカとダロトが待ち構え、敵ウイングとのマッチアップでほとんど負けることがなかった。

FAカップではこの守備が非常にハマりマンチェスターシティを撃破優勝することができた。

・24/25シーズンに向けた課題

単調な攻撃パターン

 選手達のポゼッションの理解度がバラバラで、結局はブルーノ任せのカウンター、個の力に頼り切った打開で得点するシーンが多く見られた。低い位置からのショートパスによるポゼッションの浸透を早急に深めなければいけないだろう。
 また、ビルドアップの中心が組み立ての苦手なカゼミロだった。ビルドアップ時はカゼミロを一列上げ、ブルーノが落ちて組み立てるか、アンカーの補強が必須だ(24/25の夏、ウガルデ獲得)。

守備の脆弱性

守備とビルドアップの要であるリチャが離脱(エヴァンス以外全CB離脱もあった)すると、カウンターやクロス対応、連動した守備の脆弱性があらわになった。DFの補強は必須だ(デ・リフト、ヨロ、マズラウィ獲得)。

選手起用について

ラッシュフォードのプレスが甘く、チームのハイプレスが機能しないシーンが多々見られた。ガルナチョなどがいるもののテンハグは頑なに彼を起用し続けた。PART2で述べたようにテンハグはスタメンをほとんど変更しない。彼自身の考え方を変えるか、選手層の厚みを増さなければ厳しいだろう。

おわりに

 全3PARTに分け、テンハグについて深堀ってきました。
みなさんがテンハグという人間について少しでも知ることができたら、この記事を書いて良かったな〜と思います!
 24/25シーズンはまだ始まったばかり。ザークツィーやデリフトなど強力な新戦力を獲得できたテンハグ。昨年は色々なトラブルに見舞われましたが、今年は勝負の年だと思います!(彼のクビもかかったシーズン)
 まずは、戦術の浸透。それからプレミアリーグトップ4フィニッシュ、ヨーロッパリーグ優勝、国内カップ優勝を目指して頑張ってほしい!
 24/25シーズンの戦術については節ごとにまとめていきたいと考えています!

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最後まで読んでいただきありがとうございました!



出典
https://youtu.be/OJ2ARHftG0Q
https://youtu.be/obni01hC86I
https://seko-note.com/21134/
・https://www.manutd.com/ja/amp/news/detail/erik-ten-hag-reacts-to-brighton-v-man-utd-19-may-2024
・https://kichitan.hatenablog.com/entry/2024/06/08/141709
・https://www.footballista.jp/special/44251
・https://ja.namu.wiki/w/%EB%A7%A8%EC%B2%B4%EC%8A%A4%ED%84%B0%20%EC%9C%A0%EB%82%98%EC%9D%B4%ED%8B%B0%EB%93%9C%20FC/2023-24%20%EC%8B%9C%EC%A6%8C/%EB%AC%B8%EC%A0%9C%EC%A0%90
・https://note.com/wr_football/n/nce4b6b221219
https://note.com/fumi7atleti/n/n80d51b9a0d6b


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