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レナティスの感想。ネタバレ少なめ。
標題のとおり、レナティスをクリアまで駆け抜けたので、その感想をダラダラと述べます。
ネタバレはあんまりしないので、未プレイの方も泥舟に乗った気持ちで読んでもらえばよいかと思います。
唐突に自己紹介をすると、私はいわゆる野村FFで育った世代である。
最初に触ったffは10で、9,7と戻って、13,15と進み、今では立派なヒカセン(14プレイヤー)である。
1,2,3,4もリメイクされたポータブル版を遊んだが、どれも非常に面白かった。
KHにも造詣は深く、2も3も最高難易度で裏ボスを倒すまでやり込んだし、非ナンバリング作品も全てプレイ済みである。
そんな生粋のffヲタクであり、かつ野村ヲタクでもある私が、野村ヲタクの作ったゲームですよと言って売り出されたレナティスを遊ばないわけにはいかなかろう…ということでしっかりレナティスも遊んでみた。
シナリオ完走まで行ったところで、他のレビューを探してみたが、あまりしっくりくるものがないというか、プレイ人口があんまり多くなさそうだと思ったので、せっかくなので筆を取ってみようと思った次第である。
ダラダラとプレイ歴を語ったのは、私の立場を明確にしておくべきだと思ったからである。
要は、レナティスは私のような人間をターゲット層にしたゲームのはずで、私はレナティスと親和性が高いはずである。
その上で、結論から言うと、全体的にはよくできていたと思う。ただ、細部に神が宿っていないので、大味なゲーム体験になる部分が多く、惜しいなと思ってしまった。言うなれば、超高級なA5和牛を焼いて、牛角のタレで食べるみたいな感じである(決して牛角を批判する趣旨ではなくあくまで比喩である。筆者は牛角のタレは大好きである。)。
まずはシナリオであるが、全体的な筋書きと、キャラの魅力はいずれもよくできていたと思う。
渋谷に蔓延する薬物という妙にリアルなテーマと、魔法使いといういかにもファンタジックなテーマが比較的綺麗に融合しており、大きな破綻も見受けられなかった。
味方キャラも、それぞれそれなりに過去を掘り下げられる場面があり、いずれも、群像劇として申し分のない程度にはキャラの魅力があると言っていい。
行動そのものも、まぁキャラの性格を踏まえればどれも理解はできるという範疇に収まっているので、キャラが破綻しているとも言えないだろう。
ただ、このような群像劇的なシナリオ構成で、かつ、セリフやカットシーンの数を現状のママにするのであれば、グラフィックのレベルがもっと高くなければ説得力に欠ける。グラフィックをこの水準にするのであれば、もう少し内心に説得力を持たせる描写が必要であったと思う。
というのも、グラフィックの関係上、キャラの表情の変化があまりに乏しいので、視覚的には感情を読み取れない。声優の演技はいずれも見事であったので、そこで補われてはいるものの、絵的な変化が乏しいので、ほぼ紙芝居である。少しだけムービーも挟まれるが、販促用に作ったものの流用感は否めない。
そうして、微細な感情が表現されないために、カットシーンの中でキャラクターの感情を正確に読み取ることが困難である前提とすると、説明不足と言わざるを得ない。
公式から公開されているトレーラーの中に、主人公が孤独を憂うシーンがあるが、恐らく転機になるべきこのシーンすら、描き込みが甘いと感じた。
また、ラスボスの行動原理は理解の上で見れば非常に見事にまとまっていたし、私はこういうのは大好物である。声優の演技も実に見事であった。
だからこそ、もっとラストの描き込みが欲しかった。この部分の説明は決して野暮ではなく、必要なエモだったと思う。
私はオクトパストラベラーシリーズも好んでプレイするが、さるゲームのグラフィックはドット絵であり、いわゆる昨今のAAAゲームのグラフィックではない。それでも「泣ける」という声をよく聞くし、私もさんざっぱら泣かされたので、レナティスとの違いを考えてみたが、おそらく、演出の違いである。
レナティスの作曲はKHでお馴染みの下村女史である。作中の音楽もいわゆる下村節全開であり、耳心地はいい。
しかし、流石に盛り上げどころのイベント直後に通常戦闘画面に移行し、通常戦闘曲が流れるというのは萎える。オクトパストラベラーのようにバトルエクステンドがないとダメとまで言う気はないが(バトルエクステンドをご存知ない方は是非ググってみて欲しい。まさに天才の所業である。)、こういった細部の演出が「ああ、作り物だな」と現実に引き戻される原因になっており、没入感を損なうのである。
このように、シナリオ面では、全体の構成は素晴らしいものがあったが、細部の詰めの甘さでモヤっと感を残すものだった。
続いてバトル面及びUI面であるが、バトルは世間で言われるほど悪くないし、それどころかかなり爽快感があって良かったと思う。スキル数もそれなりの数が用意されており、キャラ数も少なくないので、色々なプレイが楽しめる設計にはなっている。
とはいえ、最初から最後まで一貫して、回避してMPを貯め、スキルで連撃数を稼いでダメージ倍率と必殺技ゲージを伸ばし、必殺技ぶっぱで火力を出すというプレイスタイルが強く、設置型スキルと連撃スキルに落ち着きがちなので、若干ワンパターンになり、大味感は否めない。
上級者はもっと色々できるのかもしれないが、そこに至る前にクリアできてしまうので、感想がこんな感じになるのはまぁ通常プレイの宿命なのだろうと思う。
UI面も、渋谷探索はかなり面白いし、ファストトラベルが非常にストレスフリーなので基本的には高評価である。
他方で、森にファストトラベルがなく、移動手段も徒歩しかないのは正直言ってダルい。森がクエスト場所だと、渋谷内に表示がされないのもあまりに前時代的すぎるだろう。この辺はアップデートによる改修を期待したいところである。
やや辛辣なことも書いたが、全体としては決して悪くないゲームであるので、野村FFやKHに触れてきた民は是非プレイしてもらいたい。
そして、これは完全に余談だが、野村さんにはKH4をいい感じに締めてもらって、かつ、ヴェルサスでもVERUM REXでもいいので、引退前に1作爪痕を残して欲しいと思う。