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「な」から始まる印象【自動記述20241211】

午前12時8分

 な、から始まる言葉。
 夏。
 夏の空の青さ。
 白い雲。 
 森の緑。
 その三色で構成される世界。
 自然の豊かさ。
 あるいは何も無さ。
 そして全てがそこにあった。

 全てがそこにあるのにも関わらずそのことに気づかないまま日々を送る人々。

 風が田を渡り向こうの山へ消えてゆく。

 川の流れ。
 陽の光の照り付けるアスファルトに夕立。
 ペトリコール。
 何もかもが現れて匂い立つ。

 葛の花の夢幻的な香りが立ち込めるトンネルの手前の切通し。

 車などこれまで一度も通ったことがないかのような道は轍もなく綺麗に整備されていて、まるで今そこを歩くために神が設えたかのよう。

 すべてが遠ざかってゆくと同時にすべてが近づいてくる奇妙な遠近感覚が暑熱に混ざって、濡れたシャツと皮膚との隙間を通り抜ける生ぬるい風がわたしの身体を形作る。

 生まれたこと。
 生まれたことを知ること。

 それから水を飲み、どこへ向かおうかと考えることもなしにどこかへ向かうこと。

 道は時折分岐しているがどちらへ行こうかなどと考えることもなしに選択すること。

 眠気だけがこの世界の暗がりだった。
 眠気だけが。

午前12時15分

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