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海に眠るダイヤモンドを見た感想

このドラマの脚本を担当した野木亜紀子さんが手がけたmiu404も大好きだしアンナチュラルも何周も見たし、ラストマイルもしっかり見に行った人間である。

だから、今回の海に眠るダイヤモンドも公開が決まったと同時に絶対見ようと決めていて楽しみにしていた。

全話見終わってやっぱり素晴らしいドラマであった。

だけど反面で納得できないこともあった。

もやもやむくむくとする感情を抑えきれなかったので、これは今もう書くしかないと思って筆を取った。

前々から挑戦したかった、ドラマや映画の感想という分野。

ほぼ初めての挑戦なのでドキドキしながら書いていこうと思う。

ただ、マジで容赦なくネタバレをぶっこむし、思ったままに書くのでまだ未視聴の人はぜひUターンバックして見終わったらまた読みに来てくれると嬉しいです。

さて、始めますわよ???

結論から書くと、私はこのドラマのピークは7話だと思っている。

7話とは、端島の炭鉱の坑内の火が消えずに、
結局この火を消すことを諦めて水没破棄することが決定されたところである。

「ここで働いていたあなた方を誇りに思う」

という炭鉱長の言葉と、それにシンクロするように坑内で一酸化炭素により幸せな幻覚を見ながら死んでいく進平の構図。

ここはもう涙なしには見られないこのドラマ最大の見せ場であり、俗にいう「泣きどころ」だった思う。

なぜこの場面が泣けるかをまずは語らせてほしい。

端島という、小さな小さな島には本当にいろんな種類の人が住んでてそれぞれの人が残酷なまでに厳格なピラミッド構造に分類されている。

まずは炭鉱を運営する会社の人間、そしてその炭鉱で働く労働者、労働者を支える食堂やクリーニング店などのサービス業の人たち。

中でもそのトップに君臨するのが炭鉱を運営する会社の職員であり、彼らは大学を出ている高学歴でいわゆるインテリ揃いで。

炭鉱で働く人たちのように汗水垂らして石炭を掘るわけでもないのに、炭鉱労働者よりもいい場所に住みいい賃金をもらっているというところで常に労働者たちから嫉妬混じりの恨みや負の感情を向けられている存在であり。

また、会社の職員側も炭鉱で働く労働者たちに教養や学がないことを見下していて、

端的に言うと仲が悪く、相入れず、対立しているという構図が作中嫌と言うほどに強調されている。

しかし、これが主人公の鉄平の父親の一平によって雪解けしていき、
炭鉱労働者たちに対して残酷なほど一線を引いていた炭鉱長が労働者たちに心を開きようやく、

島全てが家族

「一島一家」

が成就した途端に炭鉱の坑内が燃えるのである。

みんなで愛し、憎み合う時もありながらもようやく完成した端島という一つの家族が、やっと家族になれたところでその屋台骨が崩壊する。

この7話までの物語は、たくさんの問題を抱えて、歪みあってた人たちが一つになるまでの物語であり、それが完成する過程を丁寧に丁寧に見せられた後で、派手にぶっ壊すのをこれまた怒涛の勢いで見せつけられたのが7話だった。

坑夫である一平と、炭鉱長。

二つの立場を象徴する2人のシーンの後で、
工場長のスピーチが鳴り響く。

そして、これからこの端島で誰よりも幸せになるはずだった進平が実現しなかった「一島一家」を完成させた端島での幸せな未来の幻想を見ながら死んでいく。

この残酷で容赦がなく、人の心を抉りまくる計算し尽くされた構図はめちゃくちゃすごいし私はこのシーンを巻き戻ししながら何回も何回も泣いてしまった。

故にこのドラマは十分に素晴らしいドラマなのである。

が、しかしながら。

この7話以降の展開に私は納得がいかないのである。

このドラマはどんな分野のドラマか?

青春群像劇?ラブストーリー?

私がこのドラマの結末に納得ができなかったのは、このドラマをラブストーリーとして見つめていたからかもしれないなあ、と今これを書きながら思っている。

このドラマを私は、鉄平と朝子の物語として捉えていた。

2人がどうすれ違い、どうして一緒にいられなくて。

老いた朝子の隣になぜ鉄平がいないのか。

それを追いかけながら物語を辿ってしまった私は、鉄平の起こした行動に納得ができなかったのであるる。

なぜか?

鉄平が身を滅ぼすほどの献身を注いだ相手が、彼が愛した朝子ではなかったからである。


仮にこれがもしもの話、朝子のために鉄平が全てを犠牲にして島を出て、ヤクザから逃げ回り、それ以後会えなくなって。

そのまま死んでしまったとしたら、私は素直に感動できたと思うのだ。

たとえ朝子との幸せな未来がなくなっても、その理由が鉄平が朝子のために全てを犠牲にしたことだったならば、納得できたはずなのだ。

しかし、ドラマの中で鉄平は朝子のためには何もしてないのである。

彼は、朝子との未来を捨てて、
「一島一家」の残骸や、幻想を追いかけることを優先させたのである。

つまり、彼にとって朝子がいちばん大切ではなかった。

という事実が浮き彫りになる。

こうなると、このドラマをラブストーリーとして見ていた私のなかで構図が破綻してしまう。

おそらくこのドラマに納得がいかなかったりモヤモヤとしてしまった人たちは、
このドラマを私のように鉄平と朝子のラブストーリーとして見ていた人たちなんじゃないかなあと思う。

ラブストーリーは、
お互いがお互いを最優先にする行動をとっていかなければ破綻してしまう。

鉄平が、朝子との未来を捨てた時点でラブストーリーとしての物語は破綻してしまったのだ。

そして、この展開に我々ラブストーリー勢はついていけずにもやついたままにドラマが終わってしまったんじゃないかなあと思う。

ではなぜ、鉄平は朝子との未来を捨てたのだろうか?

それは鉄平にとって何よりも優先するべきは
「端島」だったのである。

彼が心から愛していたのは端島だけだった。

その伏線というまでのものではないけれど、
父親と兄が苦労して大学の学費を出してくれたのに2人の希望を裏切って端島に舞い戻った物語の冒頭から、
残酷なほどにわかりやすく「鉄平のいちばん大事なものは端島という世界である」ということが提示されているのである。

そして、鉄平がいちばん重視することは端島に暮らす人々がみんなで幸せに楽しく生きられることであり端島がずっと続いていくことなのである。

だからこそ、
大切な端島に暮らす友達の賢将が朝子のことが好きだという噂を聞けば朝子への自分の行為を自覚しているにも関わらず、あっさりと手を引こうとする。

鉄平にとっては、端島の大切な人たちの心に波風立てるくらいなら好きな女を諦めることの方がよっぽどマシな事で。

彼の愛も献身もドラマの最初から最後まですべては端島に注がれているのである。

ではなぜ鉄平はあの時端島を出たのか。
なぜ、あの時朝子には向けられなかった献身のようなものをリナのためにならできたのか。

それは、リナとその息子だけが鉄平の信じたものを背負った存在だったからだという説明ができるんじゃないだろうか。

坑道を水没破棄して、新しい鉱脈を探りながらも。
もはや石油の影響力は無視できないほどに膨れ上がり、全国の炭鉱が閉山を始めていたあの時代、端島の中にも最良の時代は終わったという空気がありたくさんの人が島を出て行ったあのタイミングで。

鉄平だって端島の未来が輝かしいものではないことくらい察しはついていたはずだ。

では、鉄平が端島に捧げてきた人生や献身のいく先を朝子との未来に向ければいいではないか、とラブストーリー過激派の私は思ってしまうのだけれど。

これが7話の私が号泣したシーンに繋がっていくんだけど。

一島一家、島全体が家族になった端島での未来の中に、リナとその子供の誠の未来を思い描いてその幻想を抱きしめて坑道の中で死んでいった進平。

そして、端島の石炭のことばかり考えて最後まで炭坑夫として端島で死んでいった一平。

その全ての命を背負った誠だけが、
端島に全てを捧げて、愛情を向けてきた鉄平にとって守る価値がある存在であったのではないだろうか。

そして、しつこいようだがそれは朝子ではなかったという話なのである。

鉄平が献身、自分の人生も身の安全も捧げた相手は朝子ではなかった。


だから、最終話のエンドロールでも端島にいる全ての人たちの日常が映った後でたくさんの人たちが行き交うのをバックに鉄平は朝子に結婚を申し込む。

なぜあの二人の幻のプロポーズのシーンがが二人きりのコスモス畑ではなくて、端島の人が行き交う世界で行われたのかと言えば、
鉄平にとって端島で朝子と一緒になり端島で歩いていく未来に価値があり、朝子のために端島と切り離されることはできなかったことは最後まで貫かれるのである。

だから、この物語は端島といういつかは滅びてしまう仮初の楽園であり家族である一つの世界を愛した鉄平と端島の物語であり。

決してラブストーリーではなかったのである。

だから、朝子にあげるはずだったギヤマンも誰も取りに帰ることができない端島の奥においたのだ。

それは鉄平が朝子と一緒になる舞台として端島しかあり得なくて。

端島以外の場所に二人の未来はあり得なかったというのは、私の考えすぎだろうか。

鉄平が愛したのが朝子であり、一人だけ仲間内で大学にもいかず端島以外で暮らしたことがなくて、端島から出ることもそうそうない最も端島に根差した人間だったというところに何かを読み取ろうとする私は捻くれているのだろうか?

見終わってもやついてこれを書き終わってやっとスッキリした。

海に眠るダイヤモンドとは、鉄平と端島の物語であり。

そこに生きた人たちを鉄平は丸ごと愛していて、朝子はその一部にしか過ぎなかった。

だからこの物語は鉄平と端島の物語であると同時に、朝子の一生をかけたすれ違いと片思いの物語にも見えてくる。

まるでダイヤモンド。
まさにダイヤモンド。

いろんな角度から見ればいろんな見方ができていろんな輝きのあるドラマでした。

それが私の感想。

初めてドラマの感想というものを書いて見てどんなふうに受け取られるのか震えながら投稿ボタンを押す私はめちゃくちゃ今緊張しているので、感想とか色々もらえるととても嬉しいです。

それではみなさんまた会いましょう!



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