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日記風小説:続々・白
2022.2.2wed
日常に追いやられて日記なんて捨て置いてた。隔絶がほどけたあなたとぼくに変化はない。あるんだけど、ない。入院中は別世界にいるんだなとおもってたけど、今はこの世界の延長線上にいるんだなとおもってる。会えないけど会える。
2022.2.5sat
冬の初めにふたりではしゃぎながら通販したチョコレートが届いた。でもあなたは療養中で糖分を控えてるから、きっと僕ひとりでかたづけなきゃならないんだろう。行き場のないこの心を手のひらで均して、「届いたよ、元気になったら食べよう」ってメッセージを送った。
2022.2.7mon
どうやらほんの少しずつだけど、日常を取り戻してるみたい。久しぶりに僕の家にあなたがいて、泣きそうになった。それに気づいたあなたが僕を抱き締めるから、ちょっと泣いた。きっとそれにも気付かれてあなたに謝らせてばかりだった。
2022.2.14mon
チョコレート、駄目なんだとおもってた。カカオはいいのか。そっか。お塩が効いたスティックのチョコレート、fromベルリン。かつてそこで過ごしたあなたの思い出話を聞きながら、本当においしくて、嬉しかった。
2022.2.15tue
こんなにすきで、驚いてる。あなたがすきだよ。とてもとてもすきだよ。ひとつきほどの隔絶が、あなたの存在をますます大きくしたよ。もうこんなの、どうしようもない。どうにもなれないのに、だいすき。
2022.2.20sun
寒いとみるみる弱ってしまうあなたは、そのくせ雪がとても似合って困る。雪に埋もれたあの家で、愛してやまない猫たちと、どうかあたたかくいますように。辛くありませんように。痛みませんように。心細くありませんように。
2022.2.23wed
雪がひどいから会えない。当たり前に会いたい。
2022.2.24thu
これ読み返して、恋愛脳すぎてちょっと引いた。そもそものきっかけがあなたの入院だったから、だからまあそれでいいんだけど。忙しくなると書いてなくて、現実味があるのちょっと笑える。あなたに読まれたら恥ずかしくて情けなくて、想像だけで しんどい。
2022.2.25fri
会えない日が続く。心細くありませんように。痛くありませんように。苦しくありませんように。辛くありませんように。あなたがしあわせなら、ぼく無しでもしあわせなら、それでいい。それでもいい。だって会えないんだから。
2022.2.28mon
2月ももう終わり。ぼくに手料理を振る舞って、ぼくがたいらげるのを眺めるばかりのあなたにも慣れてきた。そして食後に?ふたりでチョコレートを食べる。これがたぶん、これからのぼくらの日常。あなたといられればそれでいい。シンプルに。単純に。