やすみかたをわすれちゃった。

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  • 異類戀愛譚

    かみさまがむすびつけてくださった。しあわせかどうかは、ぼくらがきめる。

  • 夕暮れみたいな恋

    (ひとくくりの自由詩たち) 輪郭がぼやけるような。静けさに包まれていくような。まどろむような。とけて消え行くような。

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詩:ぼくはミュージシャンにはならない

どこにもいけない音楽を口の中で転がして 飴玉みたいに消えるのを待っている だれかの音楽を聴いていても満たされる 音楽に寄り添えれば生きていける 音楽の真ん中では生き方を忘れてしまう きみを大切にしたいんだ ときどき味をもつ飴玉を分け合いたくてキスをする クスクス笑うからこれ以上正しいことはないね ぼくはミュージシャンにはならない 誰も知らない音楽をあなたの耳元に降らせる ピロートークはへたくそだけど上手に眠らせてあげる いつだって穏やかな沈黙が僕らに無いのは きみが名付

    • 詩:あきめく

      せかいがあったかい色になった 欠けたままのとこが痛んできた 失ったものを数えちゃった 救いがないくらい不幸になった 取り戻せないものを願っちゃった やり場がないくらい真実だった   あとは眠るだけの葉が絨毯になって 転んでも鮮やかに柔らかいな   だれかがだれかをおもう心に ふれてしまって泣けてきちゃった 忘れていられた悲しみなのに 取り出して丁寧に抱き締めちゃった ふかふかの憂鬱で包んでおくね 欠けたところに押し込んでおくね せかいが色を無くすころには ひとつに溶け合っ

      • 家中真っ暗にして、一番涼しい風が入る窓の下に座って、お風呂が沸くまでのボイラーの音を聞く。遠くに鳴くカエルの声も聞く。風になびくカーテンの音も聞こえる。昼間楽しそうに話していたあのこの声も、脳内に響く。いい夜だ。

        • 夏と梅雨が重なっている今時分は、グレーのネイルがよく似合う。心地よい憂鬱のなかだから、黄緑や橙の差し色。暑ささえなければ、こんなにいい季節はないよな。

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        詩:ぼくはミュージシャンにはならない

        • 詩:あきめく

        • 家中真っ暗にして、一番涼しい風が入る窓の下に座って、お風呂が沸くまでのボイラーの音を聞く。遠くに鳴くカエルの声も聞く。風になびくカーテンの音も聞こえる。昼間楽しそうに話していたあのこの声も、脳内に響く。いい夜だ。

        • 夏と梅雨が重なっている今時分は、グレーのネイルがよく似合う。心地よい憂鬱のなかだから、黄緑や橙の差し色。暑ささえなければ、こんなにいい季節はないよな。

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        • 異類戀愛譚
          6本
        • 夕暮れみたいな恋
          2本

        記事

          祖父が会いに来てくれた。蛍になって。美しくて悲しかった。寂しさになるにはまだもう少し時間が必要。でも、さよならだ。

          祖父が会いに来てくれた。蛍になって。美しくて悲しかった。寂しさになるにはまだもう少し時間が必要。でも、さよならだ。

          「桜って散るんだな」と感じ入った朝。高速道路のインターを降りてすぐの交差点、信号を待つ間に小ぶりの桜の街路樹を見ていたら、ひらひらと花びらを散らした。風は無かった。咲き切ったんだな、とおもった。木や枝は離れていく花びらに見向きもせず、花びら側も未練もなさそうだった。春だった。

          「桜って散るんだな」と感じ入った朝。高速道路のインターを降りてすぐの交差点、信号を待つ間に小ぶりの桜の街路樹を見ていたら、ひらひらと花びらを散らした。風は無かった。咲き切ったんだな、とおもった。木や枝は離れていく花びらに見向きもせず、花びら側も未練もなさそうだった。春だった。

          人見知りである。関係構築が苦手である。1人は平気である。だから随分前に「友人をつくろう!」という意志をもって振る舞うことをやめた。そんなことをしたら空回って1人反省会を繰り返すだけだと嫌というほど学んだから。無理のない範囲で、必要最低限で、いざというときは頑張れる自分でよかった。

          人見知りである。関係構築が苦手である。1人は平気である。だから随分前に「友人をつくろう!」という意志をもって振る舞うことをやめた。そんなことをしたら空回って1人反省会を繰り返すだけだと嫌というほど学んだから。無理のない範囲で、必要最低限で、いざというときは頑張れる自分でよかった。

          うっとりするネイル。お気に入りのアクセサリー。いつもの指輪。とっておきの洋服。最高の靴。嬉しいお祝いメッセージ。完全武装で臨む始まりの日。ETCカードがいつもの場所になくて焦ったけど、どうということもなく余裕綽々で間に合った。1年間の学生生活の初日としては上々かと。はあ緊張する。

          うっとりするネイル。お気に入りのアクセサリー。いつもの指輪。とっておきの洋服。最高の靴。嬉しいお祝いメッセージ。完全武装で臨む始まりの日。ETCカードがいつもの場所になくて焦ったけど、どうということもなく余裕綽々で間に合った。1年間の学生生活の初日としては上々かと。はあ緊張する。

          短歌:ブラックアウト

          てのひらで瞼を撫でてあげました 瞬きを取り戻してほしくて    削れたら痛いはずだね じくじくと泣いてくれたら削らなかったね 「ただ少し空気に毒がまざってるだけさ」きみだけに及ぶ致死量 まんまるの君の背中にかぶさった 羽を生やして飛ばないように ここはいま暗闇 ふたりきりの国 何をしたって正しい祝日      

          短歌:ブラックアウト

          短歌:終末に読書

          明日もし世界が滅びるならふたり膝でキスして本を読むかな 川端か秋成折口芥川 あなたの人生最期の一冊   その膝を枕にさせて 谷崎の『春琴抄』を読むあいだだけ   一首ずつ読み交わす恋の真似事であなたが定家わたしは式子   この夜を最後に世界が滅ぶからあなたの声の絵本で眠る        

          短歌:終末に読書

          都々逸:ヘルプレス

          いたむあなたによりそうだけでぜんぶ赦せるちからがほしい   きっと笑ってしまうのでしょう きずをみせてはくれないで   ずっと待ってる 悲しみ濁す日々の相手のご指名を どうかかみさま、かみさま、ぼくのかわりにあのこを救ってよ 所詮僕なぞお呼びでなくて彼女はひとりで立つだらふ

          都々逸:ヘルプレス

          詩:⏯

          あなたの記憶領域で一時停止された僕   嫌いになったわけじゃないでしょう 過剰摂取で疲れたんでしょう 愛を思い出したら再生してよ いつでも続きから始められるよ いつまでだって待てるから 置いてけぼりにしないでくれよ 古ぼけて埃にまみれても きっと僕はあなたをすきだよ 優しく息を吹きかけてくれ あの日の続きから始まるんだよ

          詩:⏯

          都々逸:⏯の恋

          一時停止にした初恋の再生ボタンはどこかしら チカチカ点滅している僕はきみのひとさし指を待つ 僕はゼロ分ゼロ秒のまま きみに恋した朝のまま きみがわらったそれだけだった一時停止の恋をした   だって再生してたら僕はいつか擦り切れ死ぬだろう

          都々逸:⏯の恋

          短歌:あいすべし

          黒目がちのまんまるの月みたいな目 わたしはきみの夜になりたい     きみはまだ「愛して」どころか愛されたいひとの名前さえ呼べないんだね おとなになろうとしてる 不器用に妹を撫でつつ唇を噛んで 泣いてもいいよ抱き上げてひそひそと子守唄歌うよ 愛しているよ   ただずっと愛とか幸せとか期待で満たされていてね むねもおなかも ちぐはぐな祈りのかたち小さな手 神も仏もみえてるんだね たいたがる君のお陰で思い出す 今日の向こうの向こうがあること 無邪気さでひとを傷つけるたや

          短歌:あいすべし

          短歌:鍵はたったひとつだけ。

          きみが馴染む後ろ暗がりのその隅の隅の隅までぼくは知ってる     ぼくを嫌い?すきになれない?離れたい?そうじゃないならいいかな、いいよな   抱き寄せてしまおう いいさ 腐れ縁の孤独と馴れ合えなくなったって   この腕に気づかず安らかにいておくれ まもってあげる あいしてあげる   嘘じゃない 誓ってもいい ぼくたちは孤独よりふたりぼっちが最善   待ってるよ 強がりを飲み干してぼくなしじゃ生きられないと吐くのを   その頬の温度と湿度でわかるけど言われてみたい しらないこ

          短歌:鍵はたったひとつだけ。

          短歌:何卒幾久しく

          愛なんて知ってたまるかと泣くのならぼくのところへおよめにおいで     永遠を飼い慣らすんだ きみが愛を知ろうが知るまいが知ったことかよ   嗚呼 きみの寝顔を見てると泣きそうになるこの心は何を知ったか   愛なんて知らなくていい ぼくだって知ってたまるか これ以上など 夜毎に密かこの愛で染め織った千紫万紅をきみに着せてる   ぼくたちは救われやしない 愛なんて所詮博物館の王冠   やるせなくとめどなくしとど泣くきみと抱き締め合った 静謐だった   たえきれずこころにつけた

          短歌:何卒幾久しく