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AWESOME Choices Issue no.011 品質管理の仕事を通して、より良い品を市場に提供することを使命に活躍するというキャリア

伊勢智子さん


現在、富士フイルム和光純薬株式会社の品質管理部にて、試薬製造工程管理並びに品質管理業務に従事しています。薬品を理化学分析し、規定の基準に満たしているかどうか判断し、製品化しています。大学の研究室や製薬メーカー等の実験用の薬品として、製品を使用していただいているため、通常の薬局やスーパーで販売される製品ではないため、TVCMなどもしていません。

しかし、私たちが販売した試薬を使って研究した結果、医薬品が開発されたり、様々な製品の原料となる縁の下の力持ち的な仕事だと思っています。

学生時代は、関西大学工学部化学工学科で廃液処理技術の基礎研究をしていました。具体的には、薬品を使用せずに有害物質を濃縮分離する技術の研究に携わっていました。

現在は製薬会社の品質管理部で活躍されているとのことですが、高校時代の進路選択の時のお話について聞かせてください

中学時代の理科を担当していた先生の授業内容が面白く、理科に興味を持ったことがきっかけだったと思います。高校に進学してから、簡単な化学反応実験(サリチル酸ナトリウムの精製実験)の授業を経験し、机上の反応式が目の前で反応し物質として得られたことに感動しました。それから、化学に興味をもち勉強する様になりました。

反応式を実際の実験を通して、その面白さに触れたことが理系への道に進まれたきっかけになったことがよくわかりました。

では、大学で工学部に進まれた背景について聞かせてください

製造業により近い化学の「ものづくり」を学びたかったので、理学部ではなく、工学部を選びました。当時、化学反応に面白さを感じていましたが、試験管の中ではなく実際に製造し世の中に流通させるためにはどうすればよいのかを学びたいと考えていました。しかし、大学に進学し四年生では、製造技術よりも製造の副産物である廃液や廃棄物の処理技術を学びたくて研究室を選びました。1年間ですが、廃液中の有害物質を気泡で濃縮除去する基礎研究をしていました。

化学そのものを追求するというよりも、どうやって私たちの手に届くのかというところに目を向けて工学部を選ばれたということがよくわかりました。

では、現在までに経験したお仕事を選ばれた理由について教えてください

大学の就職活動時期は「超氷河期」の時代を迎えていました。バブルがはじけ、世の中は不景気のまっただ中でした。当時理系女子はそもそも人数が少なかったですが、理系女子の求人は男子学生に比べさらに少なく、研究室で就職が決まったのが最後でした。所属研究室の教授に何通も推薦状を書いてもらいながらなかなか内定がもらえず、辛い就職活動でした。

結局、アルバイト先の上司の紹介で地元の製薬会社に就職が決まりましたが、希望していた研究開発や生産技術ではなく、配属先は「品質管理部」での検査業務でした。就職活動中に品質管理の業務内容について知識はほとんどなく、品質管理の業務につくとは全く考えていませんでした。化学実験が楽しく化学が大好きでしたが、品質管理の仕事を理解していなかったこともあり、ただ検査をする毎日にモヤモヤした気持ちで過ごしていました。

しかし、自身が検査し合格した製品が病院及び患者様に処方されていることを実感する機会がありました。そのことがきっかけとなり、不良や不良製品を探知し排除すること、良品を市場に提供することが私の仕事の重要な使命であることがわかり、次第にやりがいを感じました。

私も製造業で働いて品質管理の重要さを知りましたが、中に入ってみないとわからない仕事の1つだと思います。薬という、人に直接影響を与える部分の品質の仕事だからこそ、その意義を体感されたということがとても良くわかりました。

では、お仕事の中でご自身が「理系が出ているな」と感じたことなどあれば、是非教えてください

「どうしてこうなる?」「どうして?」と、発生した現象に対して分解して深掘りしたくなるところです。例えば、趣味でパンやお菓子を作りますが、砂糖や塩の役割を調べたり、なぜこの手順でしないと美味しいパンやお菓子ができないのか、単なるお料理ではなく化学反応として考えてしまいま。また、日々の生活の中での話にはなりますが、食品や洗剤、化粧品の裏面に書かれている成分表をまじまじと見てしまうところですね。この化学品が入っているのならば、これに効くな?など薬品名の効能や添加の目的などに意識が向いてしまうところだと思います。

起こっている現象などに対して、そうなる原因や根拠を突き詰めるという部分は、まさに理系で培ってきた部分ですね。

では、「理系を学んだこと」や「リケジョ」に対して何か思うことなどあれば、教えてもらえますか?

興味をもったことを突き詰め学ぶことは「理系」と「文系」の差はないと思っています。しかし、昔に比べて、世間の目は変化しているとはいえ、「理系は女性が学ぶ学問ではない」といった偏見もまだまだ残っています。過去に「リケジョ」としてメディアで持ち上げられていた際、理系分野が好きで勉強し、職業としているのが「女の子」ということで目立ってしまうことに違和感を持ちました。しかし、偏見を排除するのは、簡単なことではないと思います。理科に興味を抱かせるきっかけを作ること、興味を持ち学べる環境を作ること、学んだことを活かせる環境があること、これら3つが今後重要になってくると思っています。

25年たっても女子が理工系に進学する割合が変わらず10人に1人という事実に加え、大学関係へのヒアリングや研究結果からも、「理系は女性に向いていない」という偏見が大きく影響を与えているということがわかってきています。一朝一夕で変わるものではないですが、AWESOMEとしてできることを一つずつ届けて行きたいなと思っています。

では最後に、これからの進路を考える女子中高生や理系学部で学んでいる学生の方などに向けて、ぜひ一言アドバイスをお願いします。

興味を持った分野について、とことん追求し学びを深めてほしいと思います。女性だからこその観点やアイデアが発揮できることはあると思います。反対に男性だからこその観点もあるかと思います。性別関係なく、お互いの良さや欠点を補って知識を高め合うことが重要だと思います。

最後に

化学の道に進み、就職超氷河期時代と言うこともあり自分が希望した職種ではない品質管理の仕事に就くことになった伊勢さん。自分の仕事が、目に見える形でよい影響を与えていることを知ったことがきっかけで、やりがいを見つけ、長く品質管理の分野で活躍されているということがよくわかりました。伊勢さん、貴重なお話ありがとうございました。更なる活躍を応援しています!

あとがき

いかがでしたか?
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