あわやまり

詩人。自分で書いた詩や、詩を織り交ぜたり織り交ぜなかったりしたエッセイを書きます。 詩…

あわやまり

詩人。自分で書いた詩や、詩を織り交ぜたり織り交ぜなかったりしたエッセイを書きます。 詩集「記憶クッキー」(七月堂)販売中です。 公式HP https://awayamari.net

マガジン

  • エッセイ

    日常の中から感じたことや、思い出などを織り交ぜてをエッセイに書きます。

  • 記憶クッキーからあふれた物語

    ちょっと不思議な物語のような詩たち。 詩集「記憶クッキー」に収めきれなかった詩を投稿します。 2022年から渋谷〇〇書店にて、1冊ずつ手製本で作成し、少しだけ展示をした詩たちです。

  • 詩エッセイ

    自作の「詩」を織り交ぜて書いたエッセイ。時には「物語」や「お話」が織り交ぜられることもあります。

最近の記事

父は今、地上4階くらいにいる

わたしの家は2階建てだ。 その上にあるのは空。ときどき鳥、飛行機。 夢に父が出てきた。 「父さん、これから色々忘れちゃうから、教えてくれよ」 といつもの口調で言う。 「いいよ。あのね、お父さんはね、昔わたしのこと、まりすけって呼んでたんだよ」 すると父はいつもの笑った顔で言った。 「そんなの知ってるよ」と。 夢から覚めて、 「ああ、お父さんだった」と思った。 その夢を見たのは、父が亡くなって、もうすぐ3年という頃だった。 そして、ああ、お父さんはもうすぐ地上4階に行くん

    • あなたのまばたき、いいですか?

      一瞬いいですか? という言葉は、意味はわかるが矛盾している。 一瞬。 つまり、そう言った時点で、一瞬は終わる。 けれどその一瞬いいですか?が、ちょっといいですか?と同義なことくらい、わたしも分かっている。 一瞬。 なんと刹那な言葉だろう。 一回またたき(まばたき)する間。 それを何回重ねて、わたしたちは生きているのか。 職場では、まばたきを何度も借り合う。 今一瞬、大丈夫ですか? ちょっと今、いいですか? ぱち、ぱちぱちぱち。 カタカタカタ、カタ。 何度まばた

      • 真夜中のハーブティー

        夜 なかなか寝付けず キッチンで いつものように 用意をする 陶芸教室で作った マグカップに ハーブティーを入れて 蓋をする 蓋も自分で作ったものだ するとしばらくして 小さな声が聞こえてくる あなたの 今日 よかったこと 三つ言いましょうね 昼に食べたうどん あれ、最高でしたね 夕焼けがものすごく綺麗でしたね ベランダに出て大正解でした 久しぶりに友達から メッセージもらいましたね 気にしてくれて嬉しかったです そしていつも このマグカップとハーブティーは こ

        • 光るごまと読書

          夜 寝入ろうとすると 胸のあたりに かすかな違和感を感じる ほんの小さな ごま一粒ほどの違和感 横になると 胸のあたりが光り 部屋が明るくなって 眩しいほど 胸のあたりにいる ごまに聞いてみる なぜそんなに光るの? するとごまは 胸のあたりから応える おさまらないんです どうにもこうにも ふにおちないし おさまらないんですよ 何が? 何がおさまらないの? わたしにはわからないんです だからこうして光るんです うんでも ちょっと明るくて 眠れないんだけど す

        父は今、地上4階くらいにいる

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        • エッセイ
          2本
        • 記憶クッキーからあふれた物語
          8本
        • 詩エッセイ
          5本

        記事

          キラキラさんとスムージー

          学生時代 バイト先で知り合ったキラキラさんは 小さなライブハウスで歌っている人だった バイト中に 思い浮かんだ歌詞をメモしたり 無意識に鼻歌を歌っているような人だった   彼女の独特な詩の世界 上手いだけじゃない歌声は ファンをどんどん増やし テレビで使われた歌が大ブレイク 誰もが知っている存在になった   彼女のことが広まるにつれ 「百カラットのダイヤモンド歌姫」 などとキャッチフレーズがつき それと同時に 「見た目がダイヤモンドには程遠い」 「絶対にせもの!」 という批判

          キラキラさんとスムージー

          カモさんのちから

          迷っているとき 動けないでいるとき カモさんの出現で 少し動けるときがある 霧がかった 心の湖に すぅーーーっと 音もなく 現れる カモさん すると もしかして明日行ける、かも ひょっとすると出来る、かも 霧が少し 晴れてくる カモさんのちからは 結構大きい 見えないところで エネルギッシュに 足をバタつかせながら 平気な顔をして 泳いでいるのだから でも、もし やっぱり無理、かも が出てきて 大きくなったら とりあえず無理はしない 夜なら一晩寝て 次の日に

          カモさんのちから

          リンゴがやるべきこと

          リンゴは今日まで もうこれ以上 出来ないというほど 働いた ひとり、ふたりと 辞めていく職場で その人たちの分まで働いた それなのに 理不尽な圧をかけられ続け ぞんざいに扱われた リンゴは 内側から痛んでいた もう 腐るほかなかった 贈答用のリンゴに なれなくてもいい あたたかいアップルパイにも もう なれなくていい ただ 誰のためにもならずに 腐っていく 腐って最後には 真っ黒の固まりになる と 考えもしたが やっぱり それはよそう と思った それが 本当に自

          リンゴがやるべきこと

          しっかりさんとゆったりさん

          私は靴下を十四足持っている 春夏用と秋冬用 それぞれ七足ずつ その七足の中の 三足はしっかりさん 四足はゆったりさんだ 私は週三日 派遣で働いている その三日に履くのは しっかりさん 他の日は ライフワークである 刺繍をしている 作品も最近ではまあまあ売れる その四日(休日も含む)に履くの はゆったりさん けれど今週 混乱が生じた 派遣の仕事を 週四日に増やせないか と言われたのだ 少し考えます と言って もやもやした気持ちで帰ってきた その日履いていたしっかりさ

          しっかりさんとゆったりさん

          カタマリコの主張

          午後三時 カタマリコが出てきた   ねー、見て! 今日髪のアレンジ上手くいったの   カタマリコは 私の肩や首や腰から出てくる バービー人形のような 小さな小さな女の子だ そしていつもアピールする   今忙しいから、あとで そっけなく返すが   いいじゃん、ちょっとだけ ほら、すごくない?   私はちらっと見て うん、すごいね かわいいー と返す   ねー、もうお茶ないんじゃない? あったかいの入れに行こうよう   もうちょっとしたらね   ふうん せっかくリラックス系のお茶

          カタマリコの主張

          おしゃべり石鹸

          同級生から 連絡があり 使ってもらいたい石鹸がある と言う もう何年も会っていないし 石鹸、買わされるのかな と思ったが 彼はとても興味深い人で なんというか 高校生の頃でも 高校生には見えず 頭脳明快で落ち着きがあり それでいて わたしが話すくだらないことにも いつも面白いアドバイスをくれた とりあえず いいよ と返事をしたら 直筆の手紙と 石鹸が入ったボトルが送られてきた 急なお願いをしてしまい、申し訳ありません。 先日は以前と変わらぬ声を聞くことができ、嬉しかった

          おしゃべり石鹸

          みんなそうだよ、と言われると

          自分が迷っている時、背中を押してくれるような、何か気づきをあたえてくれるような、そんな言葉を求めたりする。 そしてあの人はいつも良いアドバイスをくれるから、とか思っていると、その人からは欲しいい言葉はやって来なくて、意外な人が言った一言が心に響く、なんてこともある。 「神様の用意したリュック」それには 言葉がたくさんつまっていて その人に一生のうち必要な 言葉たちが入っている ふとした時に 人生の重要な局面で 神様は誰かに その言葉たちを言わせる そのリュックに もうひ

          みんなそうだよ、と言われると

          ばいばい、こうでなくちゃいけないわたし像

          今の自分を、結構好きでいる。 病気もあって、大変なこともまあまああって、だからこそ今があると思える。 でも今の時点で人生を振り返って、一番輝いた日々は間違いなく「地球一周の船旅」で過ごした日々だ。 わたしは大学に入学後、体調を崩して中途退学をした。今考えると、その大学はわたしに合っていなかったし、その後美術専門学校で学べて本当によかったと思う。 でも、それは今思えるのであって、当時はそんな風には思えなかった。 どこにも属していない日々。 原因不明の心の不調もあり、かなり不

          ばいばい、こうでなくちゃいけないわたし像

          ひるねはきもちいい、と書いた日記

          大人の自分と、子どものときの自分。 どっちが自分らしいんだろう。 今のわたしは、色んなことに過敏で、聴こえ過ぎたり、気になり過ぎるのだけれど、実は小学校の頃はかなりぼんやりした子だった。 片方靴下が下がっていても全然気にもしないような感じだった。 喘息持ちで発作のため、かなり学校を休んでいたから、授業にもついて行けずなかなか大変なことも多かった。 けれども、1年生の冬休みに書いた日記から読み取れるのは、自由さだ。 先生は赤ペンの綺麗な字で、毎日コメントを書いてくれている

          ひるねはきもちいい、と書いた日記

          カセットテープの声の便り

          「エモい」と言う言葉を最近使うようだけれど、最初聞いた時、その響きから「きもい」が連想されて、意味が分からずにいた。 でもそれを、若い人は褒め言葉として、レトロな懐かしい何かをさして、言うらしい。 1980年代、ウォークマンを買ってもらった時のことを忘れない。 流行っていた音楽をカセットテープに入れて、車で聴いたり、そのウォークマンでも聴いていた。 余談だけれど、カセットに音楽を入れる時、カセットテープにはA面とB面があるため、A面の終わりで歌が途切れることもあった。それを

          カセットテープの声の便り

          記憶と詩で編み物をする

          人はどれくらい覚えていられるのだろう。 今までの記憶はハードディスクのようなものに入れられて、ほとんどが思い出されない。開かれないフォルダに入っている画像のように。 「今」というときを存分に生きているのだったら、それはそれで幸せで、過去の記憶なんて眠っているままでいいのかもしれない。 「線香花火のさきっぽ」 火がついたその時から だんだんと大きくなり 今 火花を散らして 生きているわたし 長いたましいの旅の 一番さきっぽで 一瞬のようないのちを 生きている いつか 火

          記憶と詩で編み物をする