スナック社会科×ふれしゃか生誕祭~ケイン樹里安さんの論考をいま横串に通してみる~に向けて②
開催まで10日を切ってしまいました。当日までぽつぽつ書くnote、今回はご登壇の皆様を紹介したいと思います(書籍刊行順)。それではいってみましょう。
上原健太郎さん
うえはらけんたろう 大阪国際大学教員。共編著に『ふれる社会学』、共著に『地元を生きる』『社会再構築への挑戦』など。まち歩きが好き(プロフィールより)
スナック社会科では過去に、2020年12月【スナック社会科vol.3 沖縄から問いを立てなおす】、2023年8月【スナック社会科 meets 絵本のこたち 企画#01『ケイン樹里安にふれる 共に踏み出す「半歩」』ZINE刊行記念トークイベント】と、ご登壇いただきました。『ふれしゃか』の衝撃も冷めやらぬまま、その翌年に出た『地元を生きる』(ナカニシヤ出版)で目をガっと開かされ、『ふれしゃか』が社会学の入門書なら『地元を生きる』は社会学の底力を見せるようなもので、共著者の岸政彦、上間陽子、打越正行各氏の章もさることながら、上原先生執筆の第一章「沖縄の階層格差と共同性」で、単純化されて(またはイメージだけで)語られることの多い沖縄の「貧困率の高さ」や「基地依存経済」の実態などが歴史とともにみっちりと数字と図表をもって書き記され、この章があるからこそ後の各担当章のそれぞれの参与研究や聞き取りがより立体的に浮かぶ形になっており、凄い!!!と思ったのでした。
ご本人はそんな凄い素振りも見せず、いつもにこやかで腰が低くこちらの言う事も全て真摯に受け取って下さりながら、真面目が度を過ぎておかしくなる事も時折あり、ケイン樹里安さんとは同じゼミの先輩・後輩という間柄だったそうですが、こんな先輩がいたら楽しかっただろうなと思います。
山本泰三さん
やまもとたいぞう 大阪産業大学教員。編著に『認知資本主義』、共編著に『プラットフォーム資本主義を解読する』など。音楽が好き。(プロフィールより)
スナック社会科では昨年10月、【スナック社会科 meets 絵本のこたち 企画#02『プラットフォーム資本主義を解読する』を解読する】にご登壇いただきました。樹里安さんを介してTwitter(当時)で相互フォローだったもののお会いしたことはなく、初対面は昨年春の入管法改悪反対スタンディングの国会前という印象的なものでした。そしてその場でスナック社会科登壇をお願いしたのでした。また、『プラ解』は昨年夏に貪り読んで、それまでの「政治ー経済ー社会ー個人」という世界に「プラットフォーム企業(経済)」というものが張り巡らさられ、かつてのわくわくしたインターネット創世記から四半世紀が過ぎ逃れられない常時接続社会の時代への変化を実感し、氏の前著にあたる『認知資本主義』を遡って読み、この頃にはもう資本主義の変容はとっくに始まっていたんだなと痛感させられ、縁のないと思っていた「経済学」というものも、こういうふうに接続できるのだなと思いました。
そして、山本先生はどんな方かというと、10.7以降の世界やこれまでとこれからを考えるにあたって、資本主義を押さえておきたいなと思いレクチャー願いたいと申し出たら、居酒屋でみっちり授業をしてくださったり、私の雑な発言や運営にちょいちょい苦言を呈してくださったり、面倒見のいい人だなあという感じです。学生さんは色々と聞きまくるといいと思います。また、「何でマルクスが好きなんですか?(雑)」と聞いたら「…優しいから」と答えるお茶目な一面もあり、そういうところが、#万国の労働者よ団結せよ で樹里安さんと意気投合したのかなあと思いました。
稲垣健志さん
いながきけんじ 金沢美術工芸大学教員。編著に『ゆさぶるカルチュラル・スタディーズ』(北樹出版、2024年)、訳書にガルギ・バタチャーリャ『レイシャル・キャピタリズムを再考する』(人文書院、2023年)など。ビールが好き。(プロフィールより)
スナック社会科では今年3月に【スナック社会科presentsゆさカルツアーin金沢】にご登壇いただきました。稲垣先生には、昨年『ゆさカル』が刊行される前に稲垣先生の論文を漁っていて出会ったシヴァナンダンが衝撃的で感謝しております。もうその時は周りの友人知人に「ヤバい人いた!」と触れ回るほど。
「パンクの研究をしたい!」からカルチュラル・スタディーズの道へ進んだ稲垣先生ですが、やはりパンクがイギリスで生まれ鳴り響いた時代を紐解けば、当時の世相とそこに至る歴史は切り離せず、かつての植民地政策の終焉から格差や移民、根深い人種化の問題が出てくるのですが、そこをクラッシュやトム・ロビンソン・バンドなど名だたるバンドやスチュアート・ホールやポール・ギルロイなどのカルチュラル・スタディーズを代表する研究者たちだけでなく、イギリスの人種関係協会の来歴とアジア系移民でアカデミアの人間でもなかったシヴァナンダンがその人種関係協会をハックした過程を取り上げることで移民や移民ルーツのマイノリティの中で生まれる差異や研究者とアクティビストの間の差異を知ることができ、またそれはこれからの社会を生き抜くために違いを尊重(差異を認識)して架橋することが必要だと思うので今に使えるヒントと言うか示唆に溢れていて、稲垣先生自身は羨ましくなるくらいとても健やかな人だなあと思うのですが、健やかでパンクが好きでという割に、その論考は一本道をひた走るのではなく側道や歩道も視野に入れてドライヴさせるという複雑なことをしていて全く門外漢な私にも読ませるし、学べるし、凄い人だなあと思ったのでした。
また、その後に続く、翻訳された『レイシャル・キャピタリズムを再考する 再生産と生存に関する諸問題』では一読するだけでは難しい人種化と人種資本主義の関係と歴史と現在地についてが書かれており、この辺の議論は樹里安さんの同時期に執筆された「人種化するプラットフォームと向き合う」(プラ解)、「モバイルメディアの殻・繭・棘」(ゆさカル)との接続点にもなっており、当日のお話がとても楽しみなところです。