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加工肉の日

いつもより少し駆け足で家のドアを開ける。

電気をつける。迎えてくれるのは机と椅子とベッド、結んだ段ボールが並んだ味気ない部屋だ。

でも、今日は心なしかその部屋も輝いて見える。

いつぶりかわからない「いい肉」を買ってきたからだ。

海外から輸入されたブツをさらに加工したような木っ端肉ではある。だがいい肉はいい肉だ。

なんてったって、牛肉なのだから。


最後に食べたの、いつだっけ。


1年と6カ月前、大きな変化で世界は一変した。

生活も変わった。

それまでは歩けば商店街にぶつかるような場所だったのに、近所は畑になった。

未舗装の道が当たり前になった。散歩しているとカメが道端で寝ているときもあった。

食生活も変わった。ファストフードやレストランに行かなくなった。当たり前のように食べていた肉は、手がなかなか伸びない嗜好品になった。

そして今日、今手に持っているのは、いつぶりに手にしたか覚えていないような加工肉なのだ。


新品の本を開けるように緻密な手さばきでトレーのビニールをはがし、フライパンにのせる。赤く輝く立方体が、年齢を重ねた皮膚のように徐々に黒みがかっていく。同時にわき出てくる脂を急いでふきとる。

肉を焼くのは、年をとることと似ているのかもしれない。

最後に胡椒をガリガリ振りかけ、皿にのせればできあがりだ。


いただきます。

四角い肉が整列している。その一つにフォークを突き立て、口に運ぶ。舌に幸せが広がった。

思わず立ち上がる。ガリガリと大根をすり、肉に添える。醤油をかけた。

うん、この味だよ。

世界が変わっても変わらないものがある。我が家でこれを食べるときはいつもこれだった。

200グラムの加工肉は、気づいたらすべてなくなっていた。

次手に入るのはいつだろう。

安く仕入れてくれる日がまた来る日を夢見ながら、固いベッドに横になった。


(1.5年前に一人暮らしを初めて牛肉が気軽に買えなくなったけど、サイコロステーキは牛肉なのに安くておいしくて助かるって話でした)

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