伝統の福井やさい・勝山水菜(test)
▪️勝山水菜
「勝山水菜」は、福井県東部、霊峰白山に連なる山々に囲まれ、例年1m以上積雪のある勝山市で栽培されている。その歴史は古く江戸時代にはすでに栽培が始められていたといわれている。
冬場の水田を利用して栽培され、JA福井県勝山南支店の勝山水菜出荷組合では、現在14人の組合員で勝山水菜が守られています。同組合の平成23年度の栽培面積は約2.5ヘクタール、生産量は約15トンでした。
▪️勝山水菜の特徴
同じ水菜から想像される京野菜の水菜と異なり、菜種群に近い品種であり、春先に出てくる花茎を利用し、その太い茎(とう)が特徴。独特の甘み、そしてほろ苦さを兼ね揃え、地域の人々に春を告げる野菜として、心待ちにされている食材である。
茎は太くて固そうに見えるが、軽くゆでるととても柔らかく甘味も感じられ、おひたしにして醤油をかけて食べれば口いっぱいに早春の香りが広がる。勝山水菜は、2月下旬が旬の時期です。
栄養面では食物繊維が豊富で、ポリフェノールなどの抗酸化性物質もバランスよく含まれています。また、冬場の野菜のため病害虫の発生が少なく、ほぼ無農薬で栽培されており、体にうれしい野菜です。
▪️融雪作業
勝山水菜は、稲刈り後の9月中・下旬に種をまき、雪の下で越冬させた後、新たに出てきた新芽を2月中旬から4月上旬まで収穫します。栽培方法にはトンネル栽培と露地栽培があり、JA集荷の8割はトンネル栽培によるものです。
越冬後はまず、ほ場の融雪作業から始まります。トンネル栽培の場合、勝山水菜に覆いかぶさった一面の雪を手作業で畝間の通水に落とします。その後、1月上旬頃からビニールを被覆してトンネルを張り、生育を促進します。
多い時は一晩で50cmの積雪になるため、トンネルを張った後も雪の重みで潰れないよう、融雪作業は欠かせません。トンネル栽培による生育促進で出荷は早まりますが、寒い中での融雪作業やトンネル張りは、生産者にとって一番の重労働となります。
勝山水菜の農家の多くは、家族で栽培を行っているため、これらの作業や収穫作業は一度に行えず、各戸計画的に作業を進めます。なお、露地栽培ではトンネル張りなどの作業が省けますが、収穫時期は3月中旬以降と遅くなり、価格も下がるようです。
▪️ブランド化と課題
勝山水菜は、勝山市内でも地域や集落ごとに受け継がれている系統が異なり、葉形や茎の色の違いなどから、北市水菜、郡水菜、さんまい水菜、平泉寺水菜の四つに大別されます。
北市水菜を栽培する勝山水菜出荷組合では、ブランド化を図るため、栽培は北市地区に限定、種は組合役員が採種し門外不出です。40センチ以上、400グラムをひと束とし、北市の商標ロゴをつけ、伝統的な「わら」で束ねて出荷し、差別化を図っています。
北市水菜は現在、地元市場や地元のスーパーなどへ出荷され、評価も高く、ほうれんそうの4~5倍という高値で取引されているそうで、冬場の貴重な収入源となっていますが、市場での引き合いが強い一方で課題もあります。
栽培地域の限定によって、ブランド力のある栽培に取り組んでいますが、新規に栽培をはじめる生産者は少なく、農家数も今では半減し、高齢化もすすんでいます。需要に応え、産地を守るためには、今後この問題をどう解決していくかが大きな課題となります。
野菜ソムリエ pro. 土橋登喜雄