見出し画像

583

 どうしていつも、鍵の在り処ばかりを気にするの。爪に宿った青い獣が、午後の太陽を待っている。君は綺麗で、だから今日が、美しくなければならない義務なんて何処にもなくて、白い奇跡のかたまりが、空の先へと影を造ってゆくばかり。
 君は本当に、あの鳥居の先を目指していたの。あの日と今が、同じ空で繋がっている、と知った時、本当に、落胆せずにいられた?あの日と同じ風が、もしも今、吹いたなら。君は躊躇わずその風に、乗ることができるの。
 何もいらない、要らなかった、君の指先だけ欲しかった。美しくて、何の役にも立たない、だから欲しがった。鉛筆を筆に持ちかえた時、地図が見えると思っていた、だから、持ちかえることができなかった。
 その先の未来をいまだ、確かめられずにいる。
 此処で、この場所で、いまだに、僕は。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?