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スープカレー屋にて

今日は渋谷で仕事があった。昼過ぎに仕事を終え、遅めの昼食のことを考える。道玄坂を上ったところにあるリンガーハットをなんとなく目指して歩いていたが、その途中でふと、昔行ったスープカレーの店のことを思い出した。たしかこの辺りだったはずだ。心当たりの場所をしばし行ったり来たりしてみたが、私が記憶していたその場所に店はない。閉店してしまったのかと思い、スマートフォンのマップで調べてみると、店は以前あった場所から少し歩いたところに移転したようだった。マップの指示通りに路地に入ると、記憶にあった店名の書かれたオレンジ色の看板が真新しく光っていた。

階段を下って地下のドアを開くと、前の店より少し手狭になったように見える店のテーブルに中年の女性と若い男性が向かい合って座っていた。食事をしているようには見受けられず、ふたりとも入ってきた私を見て「あっ」と気まずそうな顔をした。この感じはたぶん、従業員の面接かなにかだろう。もしや営業時間外だったか、と私も入りかけた体を少し引っ込めたが、キッチンにいたもうひとりの男性が「こちらへどうぞ―」とカウンターの席へ案内してくれたので、軽く会釈をしてその席に腰を下ろした。

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