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ちゃっかしいの謎

小学校の高学年のとき、突如として謎の言葉が流行した。たぶん最初に言い出したのは、学校の中でもやんちゃで目立ってた稲村くんだったと思う。ちなみに私は稲村くんのことが好きだった。小中学生の頃は、私も例にもれず足が速くて少しやんちゃな男子を好きになりがちだった。まあ、この件と一切関係ないそんな話は置いといて、稲村くんはあるときからこんなことを言うようになった。

 「ちゃっかしい」

ちゃっかしい。それは私が今まで聞いたことのない表現だった。ちゃっかしい。聞いたことがなかったどころか、小学校を卒業して30歳が近づいてきた現在に至るまで、その言葉は、あの頃の校舎の4階でしか使われているのを聞いたことがない。私たちがその「ちゃっかしい」という言葉をどのように使っていたのか、いくつか例文をあげておこう。

 「5時間目算数だわ~ちゃっかしいわ~」

 「佐々木嫌いだわ。ちゃっかしくね?」

 「おいお前らちゃっかしいから黙れよ。」

だいたいこんな感じである。「ちゃっかしい」はほかにも多様な使われ方をしていて、発信源の稲村くんに至っては、一時期すべての表現にこの「ちゃっかしい」を用いていた。ちゃっかしいは、推測するにおもに不快感を表すときに使われていたようだ。大多数に伝わる表現を代入するならば、おそらく「だりぃ」が適切だろう。

さて、ちゃっかしいは一体どこから来たのだろうか。小学生のときはわけもわからないまま飲み込んでいた言葉の出どころを、今さらになって考えてみる。聞き慣れない表現に遭遇して、私たちがまず最初に考える可能性は「方言」だ。稲村くんは転校生でもなんでもなかったから、きっと稲村くんのご家族か近しい誰かに地方出身の人物がいて、その人が何の気なしに使っていたその地方の表現を稲村くんが共通言語のように使っていた、というのが私の最初の仮説だ。さっそく手元にあったスマートフォンの検索欄に「ちゃっかしい」と入力してみる。サジェストに「ちゃっかしい 方言」と出てきた。それに従って検索にかけると、検索結果のいちばん上に「ちゃっかしいはどこの方言ですか?」という内容のヤフー知恵袋があった。サイトを開いて下に掘ってみると「東北だと思います」との回答。

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「もっと知りたい。こんなとき、貴方になんと伝えようか。もっと聞きたい。貴方はなんて言ってくれるの。」 月2回更新します。

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