再度見る 発見の後

八月の終わり
四周年を迎えた
遠くの友人と
近くの友人に
感謝を
時間軸が
変わったような
体感は
九月に入って
保坂さんの
小説的思考塾に
久しぶりに行ったら
離れていた時間軸が
からだに戻った
何かを信じ続けるような
時間の流れが
戻ってきたように
風が通った
お店を始める時
どうしたらよいものか
本当にわからず
わからない中
作り続けた
わからない場所を歩くのは
心細いので
いくつかの文章を
繰り返し読みながら
作業した
今年になって
青山真治監督の
「ユリイカ」を二度見直した
行き先のわからないバスに
最初に乗り込むのは
少女
バスが動き出してから
乗り込むのは
青年
その間で乗り込むのは
少年
バスを運転するのは
帰る場所を消失した中年
行く先のわからない
バスに乗るのは
心細い
なのでたまに
バスの扉を叩いてみる
それに反応した
音が聞こえたら
少しだけ
ひとりじゃない気がする
お店を開けることは
どこかにいるのか
いないのか
わからないところに
バスの戸を叩いているような
ものかもしれない
音は返ってくるかはわからない
でも
訪ねるように叩いてみる
二度目に
映画を見終わったら
鍵に付けていた
熊避けの鈴の紐が
切れていた
発見をした後は
前には戻らない
新しい音を
出してみる
たまには
どこかからの音で
こちらを
励まして欲しい
そのくらい
心細い
道を進んで
いる
心細いとは
なんて
自由でも
あるんだろう
発見した後に
風景は色彩を持って
動き出す
来てくださった方へ
感謝を
まだお会いしていない方へ
無骨な音を



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