巳の日の弁財天と海
巳の日に弁財天詣でをしようと Hと鎌倉に向かう 鎌倉駅で降りて駅にある地図で弁財天の位置を確認する 「こっち方面ですね」とHが言うので 言われるままに歩く Hはバイクで来たことがあるという 「鎌倉ってこんなだっけ 景色がいいよね」「違いますね」 弁財天へ行ったのはもうだいぶ前で 鎌倉を歩くのも久しぶりなので 初めて来た感じで歩く 住宅街にあるカフェの前を通り 弁財天の入口まで来ると 犬が一匹繋がれて飼い主を待っている 「こんなだったかな」小さな社に参拝し 小銭を洗う場所に入る スマホの画面を拭いている人もいる中 小銭をザルに入れ 他の人の真似をしてお札も水に浸けて洗う ザルを引き上げて 手拭いでお札や小銭を拭き ジップロックに入れる こんな場所だったのかと思いながら 外で祈祷を受けている人を眺めていると 「あそこ」とHが指す方向を見ると 樽酒にあるバンドの名前が書いてある 「へええ 来るんだね こういうところに」「ですね」境内の地図を見ると近くに稲荷神社があるので そこへも寄ってみようと 路地を歩いて稲荷神社も参拝する 「昔は稲荷神社って行かないことにしてた」「大丈夫ですか?」 「大丈夫 願うことはしないから」子どもの頃に父に稲荷神社の近くを通った時に行かないようにとなぜか言われたことを守っていたけれど 最近はそこまで何か思わない また弁財天に戻り すこし休憩してから 来た道を戻って駅の方へ向かう 「荒れる予報だったけど 天気大丈夫だね」 「大丈夫そうですよね」 本屋を見つけ中へ入る 一階は絵の展示がしてあって 二階が本屋になっていた Hとそれぞれ 無言で本を見る 本のタイトルからイメージされたアロマスプレーを購入 Hは古本を購入 「こういう本屋さん 久しぶりかも 何買ったの?」 「これですよ」 赤瀬川源平の本を見せてくれたので 「らしいね」 駅に出て 右方向へ歩く 「この先をずっと行ったところにさ 駄菓子屋みたいのがあった気がする」 「行ってみますか」「この踏み切りは見覚えがある」駄菓子屋はわからず 踏み切りを渡る 大通りに出て 野菜の直売所に立ち寄る ピーナッツの形をした南瓜や葉物野菜が並ぶ 「持ち帰るのがね」 「そうなんですよね」少量の野菜を購入して 小さなお店が並ぶ古い建物の中を見てまわる 古道具屋さんでアルミの弁当箱が気になり それを購入する 「何か 食べる?」駅周辺のお店を見ながら歩く 「お好み焼き 中華」「どうかな」 「喫茶店があった気がする ここだ」「いいですね ここにしましょう」 入ると奥の方の席に案内される 「こうだったかも ここも20年以上振りだよ」 メニューを見る ホットケーキが人気メニューとなっていたが 「エビタルタルサンド フルーツサンド ホット珈琲二つお願いします」 まわりのテーブルを見る「ホットケーキ多いね」 先に珈琲が運ばれ Hは砂糖とミルクを入れる 自分もミルクを入れ少量の砂糖を入れる サンドイッチが運ばれ 「すごいね」 「うまっ」 「フルーツサンドって食べんよね あんまり」「食べないですよ」「甘くなくておいしいね」「エビもうまい」サンドイッチを食べ終わって 追加でデザートを頼もうとメニューを見る 「ホットケーキはもう無理でしょ?」「きついかも」「プリンは?」「いいかも」 運ばれてきたプリンは小さなプリンが二つあって分けやすい 会見して外へ出て 小町通りを歩き 「ミルクホールってあった気がする」とHが言うので 途中で路地を歩いて探す 「そこだ」 ミルクホールの前を通り 鶴岡八幡宮の方へ出る 「このあたりに 梅宮辰夫の置物あった気がする」「たっちゃん漬け?」「そうそう」八幡宮も通り過ぎ 「海行けるかな?」「向こう行けば 海に出るはず」 「コンビニの配色が控えめだね」「鎌倉ですから」 薄暗くなってきて 海を目指す ご自由にお持ちくださいの看板があって Hは迷って鍋を持ち帰る 右側に銭湯があって 「この銭湯 来たことありますよ」「へええ」「まだあったんだ」海の匂いはするけど海がまだ見えず
路地を歩く 途中Hがスマホで地図を見て 「こっちで」海から戻ってきた感じの サーファーの人とすれ違う 「近いね」 トンネルのような道を通り 階段を上がると 砂浜で 海が見えた 遠くの人工的な光 空と海は 同じトーンの灰色 「着いたね」 「着きましたね」 トンネルを戻って帰る 今は海から遠い場所にいる
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