クイーン和訳「バイシクル・レース」②~ただの自転車の歌じゃない!天才フレディが込めた本当の意味とは~"Bicycle Race" by Queen
フレディ・マーキュリー作詞作曲の「バイシクル・レース」の和訳分析を始めました。
前回は直訳の和訳だったので、今回から分析です。
はじめに
はじめに、前回の内容をちょっと要約しておきます。
大好きな曲、バイシクル・レースやドント・ストップ・ミー・ナウを分析するにあたり収録アルバム「Jazz」を改めて聴き、驚くべきことがありました。
バイシクル・レースの演奏時間はなんと3分1秒と書いてありました。しかもフレディ作の5曲中3曲が3分1秒。これはなにかありそう。
バイシクル・レースの時間配分をはかってみると、1分目と2分目のところで切り替わりがあります。4拍子から3拍子になるところ、次に、自転車ベルの音(リンリン)にギターソロが入るところです。
よってこの曲やアルバムはよく練られて作られていることが改めてわかりました。
こうしてテンションが上がったところで、和訳分析を開始します。
だいたい分析は3回くらいにわける予定です。
バイシクル・レース分析
"Bicycle Race"
Written by Freddie Mercury
Bicycle bicycle bicycle
I want to ride my
bicycle bicycle bicycle
I want to ride my bicycle
I want to ride my bike
I want to ride my bicycle
I want to ride it where I like
You say black, I say white
You say bark, you say bite
You say shark, I say hey man
Jaws was never my scene
And I don't like Star Wars
You say Rolls, I say Royce
You say God, give me a choice
You say Lord, I say Christ
I don't believe in Peter Pan,
Frankenstein or Superman
All I wanna do is
Bicycle bicycle bicycle
I want to ride my
Bicycle bicycle bicycle
I want to ride my bicycle
I want to ride my bike
I want to ride my bicycle
I want to ride my
Bicycle races are coming your way
So forget all your duties oh yeah
Fat bottomed girls, they'll be riding today
So look out for those beauties oh yeah
On your marks
Get set
Go
Bicycle race, bicycle race, bicycle race
Bicycle bicycle bicycle
I want to ride my
Bicycle bicycle bicycle
Bicycle bicycle bicycle race
You say coke, I say Caine
You say John, I say Wayne
Hot dog, I say cool it man
I don't want to be the President of America
You say smile, I say please
Cartier, I say please
Income tax, I say Jesus
I don't want to be a candidate
For Vietnam or Watergate
Coz all I wanna do is
Bicycle(yeah) bicycle(hey) bicycle
I want to ride my
Bicycle bicycle(come on) bicycle
I want to ride my bicycle
I want to ride my bike
I want to ride my bicycle
I want to ride it where I like
自転車、自転車、自転車
自転車に乗りたい、
自転車に乗って
好きなところに行きたい
あなたは黒と言います、私は白と言います
あなたは吠えろと言う、私は噛め(かめ)と言う
あなたはサメと言います、私はちょっと待ってと言います
ジョーズは私の好みではありませんでした
そして、私はスターウォーズが好きではありません
あなたはロールスと言います、私はロイスと言います
あなたは神と言います 僕にも選ばせてよ
あなたは主と言います、私はクライスト(キリスト)と言います
私はピーターパンを信じていません
フランケンシュタインやスーパーマン
私がしたいのは
自転車、自転車、自転車
自転車に乗りたい
自転車レースがやってくる
だからあなたの義務をすべて忘れてください
おしりの大きなガールズが今日は乗ってくるでしょう
だからその美女たちを見に行こう
位置について
よーい
ドン
自転車レース
自転車、自転車、自転車
自転車に乗りたい
自転車のレース
あなたはコーク(コーラ)と言います、私は「ケイン」と言います
あなたはジョンと言います、私はウェインと言います
ホットドッグ、私は落ち着けと言います
アメリカの大統領になんてなりたくない
あなたは「笑って」と言います、私は「やめて」と言います
カルティエ、お願いします
所得税、私は「ジーザス」と言います
ベトナム志願兵になんてなりたくない
ウォーターゲートの候補もまっぴら
私がやりたいのは
自転車、自転車、自転車
自転車に乗りたい
自転車に乗って
好きなところに行きたい
ダブル・ミーニング対策で、また自動翻訳の手直しです。
今回は上記の太字の部分を分析します。
まずこの曲の背景から。
曲の予備知識
この曲は、アルバム「Jazz」の先行シングルで、メイ氏作の「Fat Bottomed Girls(ファット・ボトムド・ガールズ:おしりの大きな女の子たち)」と両A面シングルとして出されています。インテリで上品なメイ氏がなぜこんな下品な曲を?といわれる曲らしいです。
※ちなみにレコードについて補足。1978年はまだレコードの時代。シングル・レコードは1曲出されますが、裏にも録音できます。たいてい推しの曲と、裏(B面)にはそれに比べて微妙な曲が入ります。「先行シングル」はアルバムに先駆けて発売され、プロモーションの一つです。クイーンの前アルバム時には、ロッキー・チャンピオンの2曲で珍しいことに両A面という手法に出て、成功しました。ちなみに印税は裏面の作者と同等に入ります。
ということで、両者にはリンクするフレーズが入っています。
また、PVは有名で、裸に靴下と靴とヘルメットだけの美女65人がウィンブルドン競技場で自転車に乗って競います(いろんな意味で危険)。
これは、同じ収録アルバムの「ドント・ストップ・ミー・ナウ」のレディー・ゴダイバ(ゴディバ)というイギリスの伝説的の伯爵夫人だと思います。勇気ある女性、イギリスの誇りです。
そして、これは先行シングルで、しかも両A面なので、おそらく相当練って作られています。音楽的な面だけじゃなく、詩も凝っていないといけません。
前回のアルバムは、「ロッキー・チャンピオンズ(ウィー・ウィル・ロック・ユーと伝説のチャンピオン)」が両A面で大ヒットしたので、プレッシャーです。
では歌詞分析です。
歌詞分析
最初のコーラス、「僕の自転車に乗りたい」部分の和分析は、省きます。
イメージからいうと、自分の自転車を乗りこなして、自由に羽ばたきたい感じです。なんか可能性や未知のワクワク感を感じさせるサウンドです。
バイ(bisexual)の意味とも思われますが、もっと深い意味があると思います(それにフレディは厳密にはバイではないかもしれません)。
相反する2つの面をもっており、それを乗りこなし、自由な新たな世界に行きたいような。
では詩の部分。
You say black, I say white
You say bark, you say bite
You say shark, I say hey man
Jaws was never my scene
And I don't like Star Wars
You say Rolls, I say Royce
You say God, give me a choice
You say Lord, I say Christ
I don't believe in Peter Pan,
Frankenstein or Superman
All I wanna do is
まずは太字から。
ここは言葉遊びが楽しいです。
何を言ってるかわからなくてもテンポがよく、韻を踏んでいて、スター・ウォーズなど知ってる単語も聞き取れます。
You(コーラス)に対し、私(声はフレディのソロ)が掛け合います。
ビートルズの「ハロー、グッバイ」のよう。
Black And White
black and whiteには、白黒つける、の意味とか、善悪などの意味もあります。つまり真逆です。しかし、それ以外の意味もあります。
表面上は、相手が黒いと言うと白いというので、あまのじゃく的な、一筋縄ではいかないような人物像を感じます。
または世間に反発している様子。ロックです。
そして、白人社会では、肌の色のことも示します。
「黒と白」は、フレディの詩にたびたび出てきます。
クイーンの最初のビジュアル面でのコンセプトは白と黒でした。コスチュームやマニュキュアなど白黒で、装飾品や模様は+金と銀のみ。
アルバムの2作目、「クイーンⅡ」もジャケットも白黒、レコードもサイド・ホワイトとブラックという愛称があります。(フレディがブラック担当、代表曲はブラック・クイーンの行進)
マイケル・ジャクソンともセッションしたフレディ作の「生命の証(There Must Be More To Life Than This)」にも、白とか黒じゃないという詩があり、クイーン共同名義の1986年の"One Vision(ワンビジョン:一つだけの世界)"も「白とか黒じゃないといいたい」と歌います。マイケルは「Black Or White」という話題作を1991年(フレディの死の直前)に発表しています。ざわ。。ライブ・エイドもエチオピア救済。
また、タイトルのレースには、human raceなど、人種の意味もあり、これもたびたびクイーンのタイトルに出てきます。
まずは、「オペラ座の夜」の次のアルバムは、同じくマルクス兄弟の映画からタイトルをつけて、「華麗なるレース(A Day At The Races)」ですが、racesが入っています。
中身はとてもロマンチックな曲が多いですが、異彩を放つのがメイ氏の2曲、最初の「Tie Your Mother Down(タイ・ユアー・マザー・ダウン:君のママをやっつけて僕と過ごそうみたいな)」と、「White Man(ホワイト・マン)」です。クイーンはもともとハードロックバンドなので保守的ともいえますが。
ホワイト・マンは、アメリカ大陸に入ってきた白人によるインディアンの物語らしく、人種の問題を、殊に白人がしてきた罪の歴史を語っているような歌です。フレディがハードナンバーとして熱唱します。ちょっと複雑。
前作の「世界に捧ぐ」でも、「伝説のチャンピオン」に、「僕はそれをwhole human raceを前にした負けられない受難とみなす」というセリフがあります。
このように、当事者としても、人種問題をいつも気にしていたと思われます。(フレディは現タンザニア、旧イギリス領ザンジバル島出身。アフリカが身近にありました。自身は白でも黒でもなく、もっと他の視点もあると訴えているよう。)
また、音楽的な面で、ブラックミュージックか、ホワイトかというのもあります。ローリングストーンズはブラック系を宣言。クイーンのメンバーもブラック系のアメリカ音楽が子供のころから大好き。ロンドン行ったけどジミヘンとかも。とくにディーキーさんとフレディは初期マイケル(子供)のようなモータウン系も好きです。
まとめると、「自転車レース」は、2つの相反する価値観を併せ持つ新しい人種という感じが私にはします。
そして、次。
barkとbite
whiteとbiteで「ァイ」と韻(いん)を合わせています。
(そもそも「I want to ride my bicycle(bike)」も「like」も全て「ai」です。raceもsay?I sayもbicyにも聞こえるような。。。)
また、blackとbarkも、最後がkで韻もあっており、頭文字bも一緒です。
barkとbite自体も頭文字bであっています。
吠えろというと、さらに凶暴な噛め(かめ、またはかんでやる)といい、凶暴性や積極性を感じさせます。吠えるは、犬など動物を連想させる単語ですが、人間では怒鳴るという意味もあります。
barkとbiteで「吠えるイヌはめったに噛まない」という言い回しもあります。
さらに、biteにはかむ、軽食以外にも「食いつく」という意味もあり、釣りにおけるヒットを示します。
それが次の「shark(さめ)」につながると思います。
barkとsharkで韻を踏みます。
サメは、オペラ座アルバムの最初の超悪口ソング「Death On Two Legs」にも出てくるし、インタビューでも語られることが多い単語で、金を巻き上げる詐欺師的な意味だと思います。音楽業界の重役や上の方の人が、若いミュージシャンを食い物にする守銭奴だとかなり怒っています。
それを今度は、フレディが言われてしまうのか、僕は「Hey man」と抗議します。Manは、よくしゃべり言葉で使われる、注目を集めるかけ声的な、意味のない言葉です。
次につながるのが、Jawsです。
サメといわれたので、「聞いて(hey man)、ジョーズは好きじゃなかったよ。」というのかもしれません。
次に「スター・ウォーズが嫌い」というので、映画のジョーズのことだと思われます。ジョーズは1975年のスティーブン・スピルバーグ監督作品、彼はフレディと同年代です(彼も生まれの宗教を重視してないといいます)。大ヒットし、音楽も有名です。
スター・ウォーズは1977年に大ヒットしたジョージ・ルーカス作品。もともと、SF漫画「フラッシュ・ゴードン」の大ファンでしたが、大物のディノ・デ・ラウレンティス(ロレンティース)監督に権利を持たれていたので、自ら作ったといわれています。彼は黒人女性と結婚して驚かれています。スピルバーグとも組んでいます。彼は3つ下くらいです。
is not my sceneでは、自分の好みでないという意味ですが、sceneには、映画という意味もあり、ダブルミーニングです。なぜ過去形なのかはわかりません。neverもついてるしアメリカ的な現在分詞なのか(好きだったことはない)、好きじゃなかった(つまり今は好き)という意味なのか。
このように、アメリカの流行っているものをちりばめます。これは当時アメリカで売る戦略だったからだと思います(同アルバムのフレディ作の「レット・ミー・エンターテイン・ユー」には、昔からいますが、アメリカ人のツアーの責任者ジェリー・スティッケルさんの名や英国EMI、米国エレクトラ・レコードの名も。ロジャーさんなどメンバーもマネジメントしていたとのことですが。)ツンデレでしょうか。フレディはスター・ウォーズが好きだったといわれていますが、ロジャーさんもSF好きなのですきでしょうし、メイ氏も好きでしょうし、ディーキーさんも若いから好きじゃないかな。坊やもいるし。
もしかしたらこの一言(スターウォーズ嫌い)で、フラッシュ・ゴードンの制作に呼ばれたのかもしれません。
manは、コーラスを超えたあとの詩の2番とも韻を合わせています。
Star Warsは次のセクションの最後と韻が合うと思います。
You say Rolls, I say Royce
You say God, give me a choice
You say Lord, I say Christ
I don't believe in Peter Pan,
Frankenstein or Superman
All I wanna do is
ロールスロイスもフレディに欠かせない単語。
サメたちが自分たちのヒットを搾取して買っていたイギリスを代表する高級車。フレディもマネジメントを映画にも出てきたジョン・リードに変え、復讐の証に買いました。
1978年に3年の契約の終わりにリード氏と別れたのも、フレディのロールスロイスの中で契約したとのこと。(ドキュメンタリー:輝ける日々より)
これは、ロック・ユーと永久の翼のPVを録りに、大ヒットした楽曲ボラプのB面で印税ががっぽりになり、豪邸を買ったロジャー氏の邸宅でサインされたといいます。
フレディは酒をあおり泥酔状態で歌っていて、スタッフに心配されています。フレディは全てのPVの中で一番ワイルドないでたちになっており、あまり美しくありません。メイキングでは運動神経抜群なのに雪で滑ったりします。私はたぶん、リードと別れさせられるの悲しくてしょうがなかったと思います。
これがロールスロイスの逸話です。
またこの車は、映画ボラプの冒頭にもでてきます。エンブレムの「フライング・レイディー(空飛ぶ淑女?)」は正式には「spirit of ecstasy(恍惚の精?)」とよばれ、エクスタシーはドントストッピーナウやボーントゥーラブユーでもおなじみの単語。Xjapanのヨシキさんの若い時立ち上げたレコード会社もこの名前。
どっちもrで頭文字が同じ。もとはエンジニアが車会社の人と組んで作られた会社。ロールズさんとロイスさんです。
You say God, give me a choice
You say Lord, I say Christ
ここは問題の箇所。
神の名をみだりに使用することは白人社会ではあまりいい顔はされません。
ののしり言葉でもつかわれます。
GodやLordは、祈るとき、おどろいたときにも使われますが、やはりみだりに神の名は使えないとされます。どちらもdで韻を踏みます。
Christと、コーラスをまたぎ、2番に出てくるJesusは罵りっぽい感じ。どちらも上の2つが広い意味の神をさすのに対し、キリスト教の、ジーザス・クライスト(イエス・キリスト)を指します。
なぜ急にGodが出てくるのかわかりません。ロールスロイスのことでしょうか?掛け合いが「僕にも選ばせてよ」、という変化球になっているのも意味ありげ。ちなみに1981年に南米に西洋のバンドとしては初めてくらいの勢いでクイーンが訪れると、フレディは国民に「神だ」といわれたということです。
あなたが神だと上品に言うのに対し、自分は罵り言葉を使うのでしょうか。
こういった部分はロックンロールではありかもしれません。汚い言葉は当たりまえ。
とにかくここでは実は宗教に言及しているとにらんでいます。
人種、宗教と話が進んでいます。
韻は、直前のRoyceとchoiceで、オィスで踏んでます。
I don't believe in Peter Pan,
Frankenstein or Superman
All I wanna do is
believe inには(宗教、神などを)信じるという意味があります。
ピーターパンはイギリスの劇とそれを本にしたもの。never-never landの永遠の少年の話。ディズニー作品もあり。
実話じゃないのは分かりきっているので、わざわざ「「ピーターパンを信じない」というのは意味が分かりません。僕は子供じゃない、という意味?
初期のフレディはおとぎ話のような妖精の世界をうたっていたので、もうそんな自分から卒業した、みんなも期待しないでくれ、という意味でしょうか。
カンマでつながり、フランケンシュタインかスーパーマンといいます。
この3つを信じないように聞こえます。ピーターもスーパーマンも飛ぶけど。因みにスーパーマンは宇宙人です。スターウォーズも、ジョーズも好きじゃないのでつながりはとれます。しかし、ロールスロイスは好きみたい。
実物主義でしょうか。
フランケンシュタインかスーパーマンのところ。
正式にはnorかもしれません。Frankensteinはnで終わるのでnorにきこえるかも。でもorを使う場合もある。この3つのファンタジーを信じないと言っているようです。
フランケンシュタインもイギリス人女性(メアリー・シェリー)の作です。
新しいアメリカ文化だけじゃなくおなじみの自国の文化も入れています。どれも好きじゃない感じで歌っていますが、少なくとも紹介はしています。あと、ピーターパンもフランケンシュタインもアメリカの映画として知られるようになっています。
私は、このsupermanが怪しいです。
78年のアメリカのコミック映画の気もしますが、ニーチェの「超人」を指すかもしれません。アイルランド人のバーナード・ショーがドイツ語から訳しました。
最後に「私が信じ入るのは超人」と言っているのかもしれないのです。だからこの一連の流れは宗教がらみなのです。(コンビニ漫画「ニーチェ先生」の決め台詞を思い出して下さい)
そして、Peter PanとSupermanは韻を踏んでいます。
最後のAll I wanna do Is
は、最初の詩のStar Warsの「ズ([z])」や、コーラスを超えて2番と韻を踏みます。
そしてまたコーラスがきます。
そして、次の変調部分の歌いだしまでが、ほぼ1分なのです。
3分1秒の曲なので、1/3です。
続きは次回。お楽しみに。
お読みくださりありがとうございました。