ボヘミアン・ラプソディ和訳・深掘り④バラード3/4
フレディ・マーキュリー作詩の楽曲ボラプの和訳の続きです。
前回までは、バラードパートのうち、1番を深堀りました。
今回は、残りの2番のうち、その前半です。
※バラードには1番と2番があり、さらにそれを2つづつに分け、計4回でお送りします。
ここら辺は、オペラパートよりはまだ意味が分かるような気がするので、一語一句、しつこく分析していきたいと思います。
また、フレディの視線誘導的なものが随所にちりばめられているので
(こういうビジョンで観客には見てもらいたいけど、実は本当の意味は深いところに隠されている)、それを避けながら慎重に前に進みたいともいます。時には深読みしすぎかもしれませんが、それも含めてお楽しみ下さい。
Bohemian Rhapsody
Written by Freddie Mercury
~バラードの2番~
Too late, my time has come,
Sends shivers down my spine-
Body's aching all the time,
Goodbye everybody-I've got to go-
Gotta leave you all behind and face the truth-
Mama, ooo- (Anyway the wind blows)
I don't want to die-
I sometimes wish I'd never been born at all-
今回はこの太字の部分のみ解説します。
まずは、その一部からです。
②-A
Too late, my time has come,
Sends shivers down my spine-
Body's aching all the time,
便宜上、この部分をバラード2番のA(②-A)と名付けます。
訳は、
もう遅い、僕の時間が来た、
(そのことで)背骨に何度も震えがはしる。
体はずっと痛んでいる、
としました。
今回も”ー”(ハイフン)をセリフの区切りとしてみなし、カンマ(,)とは分けて考えています。
その前に前回をちょっと思い出してください。
前回は、ママに殺人告白を淡々と行い、「人生を投げ出してしまった」でメロディが盛り上がりはじめ、「ママ、ウ~」、「ごめん」、「もし自分がいなかったら」で最高潮に達し、「明日」でちょっと解放され、「続けて、なにもなかったように」でまた、静かに戻っていきました。
そして静かな感じから再スタートです。1番の殺人告白と同じ部分とメロディで、穏やかです。今回はリズムギターも加わります。(すごい可愛い音です。)
Too late,
は簡単。It’sが前に省略されている。遅すぎる、手遅れ、というネガティブめな意味です。
my time has come,
は、現在完了。私の時間が来た、ということ。現在完了の中でも「完了」です。しかしその意味は?
my timeもちょっと変わっているかもしれません。the time has comeならついに時はきた、という感じ。私の番が来たならmy turnです。とにかく、個人的に何か時が来たようです。もう遅すぎる、ということなので、何か悪いことの時間が来てしまったようです。
sends shivers down my spine.
主語がありませんが、Itが略され、カンマで続いてるので、直前を指すと思われます。もう時が来てしまったことが、この震えを起こすようです。send shivers up (and down) one's spineで、モノが主語になり、何かが誰かに恐怖や興奮をもたらすという意味です。
注意点は、興奮ももたらしうるので、悪いことばかりではないということです。
Body’s aching all the time,
注意点は、前の文(背骨が震える)はピリオドが打ってあるところです。この文は新たに始まり、カンマで区切られ、後に続くようです。歌うとこの前後2文はつながっているようですが、切れています。
文法的には、所有格がまた喪失し、「誰」の体かが略されています。一人称だし、”my”でいいかと思います。
(My) body is aching all the time.
「体がいつも痛んでいる、」ということです。
この2文だけつなげて聞くと、「背筋に震えが走り、体が四六時中痛んでいる」ので、もうすぐ死ぬ人を連想させます。しかも前の2文が、「もう遅い、僕の時間が来た」、です。死期が迫っていそうな感じです。自分が人を殺しているので、次は自分の番、という感じもします。なぜか死期が迫るのかは分かりません。(しかし、後ろの2文はピリオドで区切れています。)
次の文が気になりますが、その前にこの部分の韻を見ましょう。最後の単語だけ抜き出すと、
late
come
spine
time
です。
最後の2個、spine,time(スパイヌ、タインム)の[ai]の部分の母音が踏んでいます。
バラードの1番のAも、最後の2個がheadとdeadで韻を踏んでいました。同じ構造です。
メロディ部分の考察としては、
1番の同じメロディで、かなり穏やかに歌います。何か不気味なことが迫り、体が異常事態になっているのに、どこか客観的です。
「背骨に震え」のところで、カラカラというきれいな金属音が入るのはちょっと楽しいです。
②-Aをまとめると、
「自分の時間がついに来てしまい、背筋に震えが走る。体はいつも痛んでいる、(次に続く)。」
が訳です。
謎の部分は、自分の時とは何か、体がおかしいようだが、何が起こっているのか?です。
殺人告白同様、淡々と穏やかに語ります。むしろ恍惚?
では次です。
②-B
Goodbye everybody-I've got to go-
Gotta leave you all behind and face the truth-
前の、「体がずっと痛んでいる、」から続きます。
訳は、
(体がずっと痛んでいる、)さようなら、みんな。
僕もう行かなくちゃ。
あなたたちをみんな後に残して、真実に向き合わなきゃ。
です。
ちょっと言ってみたいセリフです(英語で)。とても劇っぽいです。映画などで、何かを抱えたヒーローが自己犠牲で去るような。メロディも、1番と同じくここから盛り上がりを見せます。
それでは個別に見ていきましょう。
Goodbye, everybody-
ですが、よく、フレディが観客に呼び掛けるときにeverybodyを使いますね。しかし、みんなとは誰でしょうか。
I've got to go-
have got to doやhaveのないgot to doで~しなくては、となります。
「行かなくちゃ。」どこへ行くのでしょうか。
Gotta leave you all behind and face the truth-
"I"が略されていると考えます。
gotta = got to なので、前の文と同じ「~しなくちゃ」です。
「あなたたちみんなをあとに残し、真実に向き合わなくちゃ。」
真実とは?
②ーAの思わせぶりの感じでは、主人公に死期が迫っていそうな感じで、
それに続く、
「さよならみんな、行かなくちゃ。」
は、ついに、死ぬのかな?と思っちゃいます。
「みんなをあとに残し、」
は、この先も生き続けるであろうみんなに対し、自分は違う道だというような。でも、
「真実に向き合わなければ」
で、ちょっと違和感。
あれ、すぐに死ぬんじゃないんかい、となります。不謹慎ですが。ここまでかっこつけておいて、ここへきて、死ぬまでになんかグズついて時間とってる感じがします。真実に向き合う=死ぬ、とはすぐには考えにくいです。
メロディも、「真実に向き合わねば」が急に盛り上がるところで、かなり伸ばして歌います。
「真実」とは何でしょうか。
3つ考えました。
1.殺人をしたこと
2.自分の人生を台無しにしたこと
3.これから自分が死ぬ運命にあること
です。
1.真実=殺人したという現実。
これは普通に考えられます。冒頭で、「殺しちゃったんだ」といってから、私たちの頭は常にこのことでいっぱいです。「真実に向き合う」とは、自分がしてしまったことの罪を一生背負うということ、殺人者としてこれから起こる人生を受け入れる、または自首することなどが普通の現実世界だと考えられます。
2.真実=自分の人生を捨てたこと。
バラード1番では、冒頭の殺人告白は穏やかなのに、最後の「人生を投げ捨ててしまった」、が一番盛り上がっていたので、この線も捨てられません。
これは自分に対してより、ママに対してごめん、と言っている感じはします。真実に向き合うとは、失望させてしまったママの前から姿を消す、二度と現れないことなのではないか。一部の人にとって死ぬことよりつらいのかもしれません。ママは家庭の入り口でもあります。
3.真実=これから自分が死ぬこと。
これは、そういう風に聞こえるからです。2番の冒頭部分は、ハイフン、カンマを無視して、耳だけで聞くと、死期が迫っているように聞こえるのです。さらに、「さよならみなさん」、ときます。(しかもカンニングをすると、この先に「死にたくない」が来ます。)なぜ死ぬ運命なのかは、殺人を犯した神からの罰なのか、誰かに追われているのか、理由は分かりません。そして、すぐに死ぬわけではないけれど、みんなの前から姿を消して、残りの余生は避けられない死に対峙していく、という響きがあります。
また、日本人的な考え方では、「罪を償うためこれから自殺する、その決心のために姿を消し時間をとる」、という線も考えられます。しかしフレディの属するイギリスなどキリスト教世界では、自殺は殺人という罪の一つなので、はっきりとは自殺は言いづらいことです。
そして、この3つの仮定を基に、前の、「行かなくちゃ」を考えると、行く場所は
1.天国(地獄)
2.逃亡
が考えられます。
なぜみんなの前から姿を消すのか、は、
死ぬから、ママ達に罪の意識があり離れるため、(殺人をしたので)追っ手に追われているから、死ぬ前に一人になりたい(自分のしたことに向き合う)から、
などが考えらえます。
最後の謎である「みんな」がだれかというこのに関しては、
ママ達家族、友達や関係者みんな、このまま生き続けていく人類すべて、(観客)、
などが考えられます。
つまり、ここまできてもなお、色んな可能性を考えられる詩であるということです。やれやれ。
そして、もう一つポイントがあり、それは私の想像になります。
長くなるので、次回書きます。
メロディ的考察としては、
1番の同じ部分のように、「行かなくちゃ。」「みんなを残し、」でかなり高くなり裏声になります。「真実に向き合わなきゃ」で、急降下し、地声にこぶしが入ります。低いエレキギターも入ります。
②-Bをまとめると、
主人公は、みんなの前を去り、孤独に「真実」に向き合うようです。
謎の部分は、
みんなとは誰か、どこへ何しに行くのか?「真実」とは何か、
などです。
音的には、「真実に向き合う」ところで盛り上がります。
バラードパート2番のA,Bの総括です。
Too late, my time has come,
Sends shivers down my spine-
Body's aching all the time,
Goodbye everybody-I've got to go-
Gotta leave you all behind and face the truth-
訳:「自分の時がやってきてしまい、背骨に震えが来た。
体はいつも痛んでいる、さよならみんな。
みんなを残し、ひとり真実に向き合わなきゃ。」
謎:「時が来た」とは?主人公の体に何が起こっているのか。「みんな」とはだれか、どこに何しに行くのか?「真実」とは?(全部、謎じゃん!)
構造:1番のA,Bと同じで、時間が来て、体の異常がでる部分では穏やか→「真実に向き合う」のところで、感情がこもり始めます。
バラードパートの2番の前半はここで打ち切ります。
次回はいよいよ、バラードのクライマックスです。
お楽しみに!
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