【Fragment #02】ちいさい秋
9月に入ってから晴れの日が多かった利尻。どこか暖かい空気を漂わせて、けれど吹く風は秋風そのもの。今年の夏はあまり夏らしい日がなかったためか、暖かく感じているだけできっと例年こんなものだったのだろう。
長かった昼が少しずつ短くなり、これから夜が長くなる。子どもの保育所帰りに園庭で遊んでいれば、すぐに日が暮れていってしまう。そのうち、保育所が終わった頃には薄暗くなってしまう。
私は秋が好きだ。季節の中で一番秋がいい。秋の空は雲の表情が豊かだし、空の色もどんどん変化する。暑かった日差しは落ち着き、眩しいけれどひんやりとした秋風の中で散歩ができる。美味しいものもたくさん。夏の忙しなさがなくなり、本をゆっくり読む時間も少しできる。秋は短いのが惜しいほど私には合っている季節だ。
道端にあるノブドウが色付いてきて、そこに秋を見つける。風の冷たさとにおいの変化に秋を感じる。ジャガイモやカボチャをいただくことが増え、秋を味わう。
ちいさい秋を見つけるたびに、なんだか少し嬉しくなる。ひとつひとつを宝物のように慈しむというほどではないけれど、確かに嬉しくなる。
私は北海道にしか住んだことがないのでわからないのだが、本州ではキンモクセイやヒガンバナがきっと秋を感じるもののひとつなのではないかと思う。キンモクセイの香りやヒガンバナが咲き乱れる景色も堪能してみたいものだ。
あちこちに見え隠れする秋を、また今日も探してみよう。