第1回森の道整備活動
2024年2月28日から3月1日まで、高田造園設計事務所スタッフを中心に、安房大神宮の森の道の整備・施工の第1期工事で入らせていただきました。
このプロジェクトへのご支援をいただいているみなさまに、この場を借りまして、心より御礼申し上げます。
この施工の模様をスタッフ最年少の林大介が記録しました。
ぜひお読みくださいませ!
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今回の施工は沢山の方々からのご支援で成り立っています。
多くの方が株式会社森と海のこれからの事業に期待を寄せてくださっていると思うと、関わる私たちもより一層力が入るような気がしました。
安房大神宮の森の道
この森の中を通る道は、昔農道や生活道として人の暮らしと密接に関わってきました。
隣町への買い物や田圃の整備、引っ越しなど、色々な人、色々な物、色々な動物の往来でにぎやかだったかもしれません。
いま、森の中の道は形こそ残っているものの、倒木やガタつきを直さなければ車も重機も入って行けない程の荒れようです。そのため、人の力のみが道を整えるための唯一の手段なのです。
施工
記念すべき第1期の作業は、山側に積もった土を麻袋に入れ、谷の崩壊箇所に土嚢(どのう)として積み、路肩を上げる作業から始まりました。
土を麻袋に入れる際に混じっていた石を取り出し、土嚢と一緒に地面に刺したり、積み石にしたりしました。肩をより一層安定させ永久的なものにするためです。
私達は、主な資材のほとんどを現場で出る土、石、枝を用いて施工を完結させます。このような施工体制をとることで山の掃除と同時に道の補強を行えるようになります。
資材を外から持ち込む必要がないので、ダンプなどの大型車両で山道を傷める必要がなくなります。つまり道作りが最低限の機材や資材で行なえるだけでなく、通常つけられる作業道その後にかかる整備の手間が大幅に減ります。
現場で出たものを使うので資材費はほとんどかかりません。
もう一石何鳥か数え切れないほどのメリットがあります。
昔は百姓も林業家もこのように山を守り続けていたのでしょう。
現に今回の施工中にも、昔の人が道の肩を守るために刺した石に苔が厚く生え、列状に連なっているところを見つけました。
個人的にとても不思議に思うのですが、人が正しい場所に正しく据えた石には綺麗な苔が厚く生え、人が乗ったりしても動かないくらいしっかりと道を守っていました。
一方で木が倒れて土に埋まり、埋まった枝が新しく若木を芽吹かせていました。つまり長い時間人の往来もなく、当然のことですが道の整備をする人もいなかったのでしょう。
そんな中でも道の肩に据えられた石は崩れず、風化することもなく、それどころか綺麗な苔を羽織り鎮座し続けていたのです。
人の営みが自然と共生することにより作られた、美しくかつ永久的な道普請の手本がありました。
インフラの発達などにより人が立ち入らなくなった道は、動物達の住処となっていました。
沢の水を飲みにきていたのでしょうか。道を横断する形で山と沢を繋ぐ獣道ができていました。それに伴う崩壊箇所が所々ありました。
私たちはこの崩壊箇所をただ元に戻すのではなく、動物達が通っても崩壊しないように獣道に石を組むなどして安定した道にしました。
動物と共生するような道普請は、旧来では考えられなかったことです。しかし人間の往来が減ったこの道を保全していく上で、現状の環境を踏まえた人と動植物の棲み分けが必要です。そのためにはこのような「積極的な自然との共生」の必要性を感じています。またそれについて思考することが「自然との対話」であると考えます。
私達の施工はこのような先人の技術、伝統の継承、そして自然との対話を軸にした活動といえます。
終わりに
現代では生産性や効率を主とした経済活動が主流となり自然は蔑ろにされています。しかし私たちは先人に倣い「自然との対話」を中心にすることで1000年先も残り続け、真に持続可能な遺産として、この安房大神宮の森を残すことができればと考えています。