Black Lives Matter 〜私たちに何ができるか〜
(以下、2020年6月投稿のあぼカド日記より、2022年1月改訂・再投稿)
こんにちは!あぼです。
前回ブログを更新してから、約1年も経ってしまいました。
ブログをかくよかくよ詐欺をしてしまい、気づけばあっという間に2020年6月(も終わりに近づいていますね)。
今日本当に久しぶりに閲覧数をチェックすると、まだまだあぼカド日記を読んでくださっている方が思っていたよりも沢山いて、嬉しくなりました。
と同時に、せっかく読んでくださっている方がいたのに、長らく更新することができず申し訳ない気持ちになりました。本当にごめんなさい。(;;)
この度、ものすごく久しぶりなのにそれでもブログを書こうと思ったきっかけ。
それは、皆さんもご存知のアメリカ全国(ヨーロッパの国や日本でも)で起きているBLM:Black Lives Matter 運動です。
このものすごく重たい、深い、そして複雑な問題。正直に、この数週間書くべきか、書かないべきか、ととても悩みました。
とても重要であり、繊細な問題であるからこそ、自分の言葉が誤解を招いたらどうしようと不安にもなりました。
6〜7年前にこのBLMが始まった時、私は日本に居て確かニュースでなんとなくこれについて知りました。
正直にその時は、本当になんとなく、ぼんやりニュースをみながら、「へーそんなこともあるのかね。」くらいにしか思っていませんでした。
日本に住んでいて、人種問題にあまり出くわすことがない状況、知らない状況だと、当たり前の反応だったのかもな、といま振りかえって思います。
でも今は、
本当に本当に多くの人々が「平等」を手にするために行進するのをみて、
家々に掲げられるBLMのポスターをみて、
人々の悲痛な叫びを間近で聞いて、
わたしも「何か」をしなきゃいけない。
日本にいる一人でも多くの人に、このことについてもっと詳しく知ってもらうきっかけを作ることができたら。
と強く思いました。
もう、「わたしたちには関係ない」ではすまされない、ということをどうしても伝えたくて、
また、この重たい問題について、これを読んでくださる方々に、BLMについて考えたり話し合おうと思って頂けるようなきっかけを作りたくて、
自分にできることはこれだ、ということで、今回初めて多民族国家のアメリカに居て見えたこと、気づいたこと、それを通して思ったことについて、少しでも多くの人に伝えることができたら、と思い、記事を書くことに決めました。
言葉が足りず、うまく伝えられるか不安ですが、自分なりに頑張りたいと思います。
まず、
Black Lives Matter とは何か
2013年にフロリダ州で無防備の黒人少年が自警ボランティアの人によって射殺された事件、そしてその後射殺した人が判決で無罪になったことがきっかけでこの運動が始まったと言われています。
最近よく、SNSの投稿やコメントで
「なんで黒人の命’だけ’について触れているの?」
「アジア人として、アメリカで差別にあったことがある!!アジア人のことは大事じゃないの?」
という言葉を目にしました。
Black Lives Matter 運動は、「黒人の命’だけ’が大切だ」と言っているのではありません。
All Lives Matter 「全ての人の命は大切」という当たり前の大前提の上で、「黒人の命’は’大切だ」といっているのです。
つまり、現状で「黒人の命が大切にされていない」のです。
(「黒人の命’も’大切」という訳し方も最近目にしますが、Black Lives Also Matter「(他の人種の命も大切だし)黒人の命’も’大切」という雰囲気になり、個人的には少し訴えが軽くなっている気がします。もちろん、「黒人の命’も’大切」という意味でもあるので間違いではありません!英語のニュアンスって難しいですね;;そして日本語でもこの感じをなんて説明したらいいかわからない!!笑)
NASCAR(アメリカモータースポーツ統括団体) の唯一の黒人カーレーサの、Bubba Wallace さんのインタビューで、わかりやすい文章を見つけたのでシェアします。
(和訳:あぼ風意訳)
「いま何がおきているのか、そしてどうやったらこの世界で平等を生み出せるのか、どうしたら一つになれるのか、ということについて学ぶためにも、こうゆう(BLMに関する)重たい会話をするのはいいことだと思う。」
「もちろん。全ての命が大事だよ。でも、黒人の命も大事。それなのに黒人コミュニティの中では、そんな風に感じられないんだよ。ただ黒人だから、という理由だけで、差別されているように感じるんだ。僕たちは、自分たち(黒人)の命が他の人たちと同じくらい重要なんだということを訴えかけようとしているんだよ。」
今から書く文章は、言い方がちょっとだけ乱暴になります。
(ですが、人種差別に重い・軽いの度合いがあるとは思っていないので、どうか勘違いしないでください。そして、どうかわたしの説明を最後まで読んでください。)
上に挙げた「自分も人種差別を受けたことがある。なぜ黒人だけについて触れてるの?」という質問への答えです。
このBLMでフォーカスしなければならないのは、「全ての人種の命」でも「その辺に転がっている人種差別」でもなく、
「黒人の命」。
今、特にこの問題で集中しなければならないのはどの人種でもない、
「黒人の」「命」(特に命!!!)
なのです。
Black Lives Matter 運動は、黒人の命が他の人たち同様に重要なんだということを訴えかけようとしている運動です。
じゃあなぜ?
なぜここまで必死になってその事実を訴えなければならないのか?
その理由を一緒にみてみましょう。
黒人である、という事実だけで、警察に殺される確率が高くなる
思い切って書きました。
このタイトルが、「黒人の命」が大切であると強調しなくてはいけない理由です。
上のグラフ、一つ目のバーは、アメリカ国内の人種別人口比です。
61% 白人
18% ヒスパニック
12% 黒人
ですね。
下の二つ目のバーは、警察に殺される総数の人種別割合です。
50.3% 白人
18.7% ヒスパニック
26.4% 黒人
(Washington Post から引用)
目を疑いますよね。これについて初めて知ったとき、データ収集を間違えたのでは?とまで思いました。
前グラフと少し似ていますが、下のグラフは、
横軸:人種がアメリカの全人口をしめる割合
グラフの高さ:その人種の100万人あたり何人が警察によって殺されているか
を示しています。
(The Washington Post より引用)
一目で、黒人が警察に殺される確率は他の人種のそれよりもはるかに高い、ということがわかりますよね。
今回のニュースで知った方も多いかとは思いますが、アメリカでは本当に数え切れないほどの黒人の無実の方が警察(時には市民や自警団の人)に射殺・殺害されています。
調べても挙げ切れないほど、そして中にはメディアに名前を出されていない被害者も多くいると言われています。
2020年になってからのこの6ヶ月間でも、たくさんの無実の黒人の方達が、警察により射殺・殺害されました。
看護師になろうとしていた26歳のブリオナ・テイラーさん。
何もしていないのに犯罪者と疑われ白人親子に殺されたアフマド・アーベリーさん。
そして今回のジョージ・フロイドさん。
彼ら以外にも多くの人々がその命を落としました。
先に、「なぜアジア人の命は大切じゃないの?」というコメントをみた。と言いました。
もちろん。大切です。
そして確かに、差別もたくさん受けます。
無意識の差別も含め、本当にたくさんの差別が、アメリカの(そして全世界の)日常に転がっています。
レストランで明らかに他の人たちとは違う対応をされた。話しかけて完全無視された。Uberで目の前をスルーされた。
学生の頃も含めて、Philly暮らし2年のなかで、わたし自身も色々な差別を受けてきました。
でも、今回集中しなければならないのは、「命」「社会組織の中の差別」。
アジア人だからといって、真昼間に、なぜ高級車に乗っているのか、と不審に思われ警察に車を止めさせられるか?
アジア人だからといって、フードを被って歩いていたら突然なんの理由もなしに追いかけ回されて、警察や自警団の人に射殺されるか?
そんなこと、想像もできないですよね。
黒人の方達は、この恐怖や理不尽と向き合ってアメリカで生きているのです。
そして本当に悲しいことに、彼らは警察に殺されるかもしれない、という危険性について自分の子供達にも教えなければならないのです。
奴隷制度から400年たった今も、当時と全く同じ問題がまだ、この国では起きているのです。
Black Lives Matter 運動は、
「肌の色が黒いというだけで、自分たちの命が危険に晒されている。」
「僕たちの命を助けてくれ。」
という悲痛な叫びが本当に痛いくらいに伝わる運動です。
社会の中にある、制度化された人種差別(Systemic Racism):刑事司法・医療・住居・政治・教育の中に組み込まれてしまっている人種差別を終わらせようと必死に声をあげているのです。
今回、わたしの住むフィラデルフィアでも大きなデモ活動が数週間に渡り続きました。
ジョージ・フロイドさんの死から4週間以上が経ったいまでも、フィリー市内の各地域でデモ活動がみられています。
今回、コロナウイルスが蔓延し、感染のリスクも高いなかで、自身の命の危険を冒してまでも、黒人たちの命の重要性を訴えようとしているのをみて、どれだけ彼らが必死なのかということを強く感じました。
もちろん、大坂なおみさんのBLM運動の呼びかけに対する批判のように
「他の人に感染するかもしれないじゃない!!」
「自分達のことしか考えていない!!」
という方達の意見も理解できます;;
きっと自分がもしも日本にいてニュースを見たら、
「うわぁ…コロナウイルス…」
と絶対思っていたと思います。
でも、
多くの人がこのBLM活動で平等を訴えたことにより、たくさんの変化も目にすることができた今、このデモの意味が全くなかった、とは絶対にいえません。
人々が命の危険を冒してまで起こしたこの行動で何が変わったのか、少しだけ例をあげてみます。
Black Lives Matter 運動は社会をどう変えたか
ジョージ・フロイドさんの死から約1ヶ月、Black Lives Matter 運動は世の中を具体的にどのように変えたのでしょうか。
チョークホールド(しめ技)の使用の禁止:ミネアポリスやワシントンD.C.、シカゴやデンバーを含む様々な地域で、警察によるチョークホールドの使用が禁止された
ジョージ・フロイドさん殺害に関わった警察官4人の罪状がより重たくなった
警察による武力行使のルールの変更:ニュージャージーやダラスにて、警官が過度の武力行使をしているさいに、他の警官が介入しその警官を止める、というルールができた。
人種差別や奴隷主義にかかわりのある歴史的人物の銅像の撤去。
ブリオナ・テイラーさん殺害に関する捜査開始。
他にも、ドラッグストアにある黒人ヘアケア用商品についた棚の保護ロックが廃止されたり、
スポーツ団体で奴隷制のシンボルとも取られているアメリカ連合国の国旗を掲げることが廃止されたり…
と、BLMのプロテスト活動により法律、警察のルール、組織改革、エンターテイメントの世界、スポーツの世界、とさまざまな場所・分野でたくさんの変化が起きています。
(CNNより引用)
日本人の私たちに何ができるか - わたしが思う3つのこと -
ここまで、
Black Lives Matter について
そしてこれまでのデモ活動が社会に与えた変化について
書きました。
わたし自身、上にあげてきた事実について、BLM運動がきっかけで今のいまになって学びました。
そしてこれらを知ったあとで、
アメリカや世界にはびこる人種差別や制度化された人種差別をなくすため、少しでも減らすために、私には何ができるんだろう と考えました。
・プロテストに参加する?
- プロテストの一部が暴徒化したときなど、危険にまきこまれる可能性もある。コロナウイルスも怖い。やっぱりプロテスト参加は自分にはできない。
・選挙・投票で自分の声を政治に届ける?
- アメリカ市民権がない。選挙での投票はムリ。
じゃあ私には何ができるのか。
最初のデモが始まってから1週間ほど、ずっとこのことについて考え続け、これに対してわたしが見つけた答えは3つあります。
まず一つめは、
Black Lives Matter について少しでも多くのことを知る。
インターネットで、ニュースで、方法はたくさんありますが、一体何が起きているのか、なぜ人々がここまで声をあげているのか、学ぶ。
最近よく、「Educate yourself」の言葉をSNSでも目にします。この運動について、人種差別の歴史について、「自身を教育する=学ぶ」
二つめは、
Black Lives Matter について語る。
家族と、パートナーと、友達と。
重たいことだから、なんだかよくわからないことだから、と避けるのではなく、思っていることを話し合う。
一つめで学んだことを、周りの人とシェアする。意見を交わす。
少しでも多くの人がこの問題について知るためにも、そしてわたしたち自身や私たちが生きるこの社会がこの問題に対してどんな行動を取るべきなのかを真剣に考えるためにも、これはとても大切なことだと思います。
そして三つめは、
Black Lives Matter を支える団体や、黒人人種差別による政治や教育・医療への影響を少しでも減らそうとしている団体へ募金する。
わたしとカドさんもBLM運動について語るなかで、自分たちに何ができるかね、という話し合いをしました。
そこで見つけたのがこの記事。
New York Magazine の中のブログ the Strategist に載せられていた記事です。
「黒人や有色人種の命・コミュニティーをサポートする募金:142の方法」
(個人的にこの英語の使い方が引っかかって、タイトルはあんまり好きではありませんが)
被害者家族のメモリアルファンド
保釈金を集める団体(特にいま、たくさんのプロテスターの方々がプロテストが原因で拘留されており、保釈金なしでは解放されない、という事実があります。)
黒人で身体障害をもつ方々を(医療・教育・経済的に)サポートする団体
黒人LGBTQのかたを支える団体
などなど、
合計142の募金先をさまざまなカテゴリーごとにあげてくれています。
またまたこの複数の団体について調べていて知ったことなのですが、
例えば黒人の方で乳ガンを患っている方達は、白人の乳ガン罹患者に比べて明らかに十分な医療を受けることができていない、など、乳ガンに限らず本当に多くの分野で理不尽な扱いを受けていることを知りました。
これはあくまでもわたしの例なのですが、参考までに、わたしがどの団体に募金したかシェアしたいと思います。
色々と考えた末に、
第二の地元であるフィリーを支えたい、という意味でもBlack Lives Matter [Philly] という地元のBLM団体と、
看護師としてコロナウイルスのことも気になっていたので、BET + United Way COVID- 19 Relief Fund というコロナウイルスにより多大な影響を受けた黒人の方々をサポートする、という団体に募金しました。(黒人やラテン・ヒスパニック系のコロナウイルスによる死亡率は白人の6倍以上と言われています。)
最後の3つめのできることとしてこれをあげましたが、
募金先や募金するかしないか、というのは本当に人それぞれだし、どんな選択をしても間違いはないと思います。
わたしとカドさんも、夫婦ですがそれぞれ別々に自分たちの選ぶ場所に募金しました(^^)
何かできること、としてこれら3つをあげました。
ですが、もちろん、わたしの記事に興味を持ってくださって、ものすごく長い記事をここまで読んでくださった方。
読んでくださったということそのものが、この運動を支える一つの力になる、とわたしは信じています。
長い長い文章、ここまでお付き合いくださって、本当にありがとうございます。
最後に
はー!!!!!
ブログ史上、おそらくいちばん力を込めて頑張りました。笑
書くのにも、ブラッシュアップするのにも、数週間かかってしまいました。(それでも誤字脱字などがあったらごめんなさい;;)
ここまで、悲惨なものを目にして、憤りや悲しみを感じて、人種差別に関わるいろいろなことについて考え続けた1ヶ月でした。
「でした。」と言いましたが、大切なのは、これを過去形にしないでこの先もずっと考え続けることだと自分の中でも言い聞かせています。
Michael Jackson の有名な曲の一つ、「Man in the mirror」からの一節です。
とても小さな一歩に見えますが、人種主義社会に埋もれてしまいそうな気がしても
この歌詞のように鏡にうつるひと = 自分 をまず変えること。
意志を強く持ち続けそれを周りに見せ続けること。
が、この問題の中でいちばん大切なことなのではないかなと思いました。
ここまでお付き合いくださって、本当にありがとうございました!!!
あぼ