ハードウェアデバイスがあるときのアプリデザインの難しさ
この記事は株式会社ビットキー Advent Calendar 2024 18日目の記事です。
UI / UXデザイナーのあぼねこ (@avocadoneko) が担当します🥑🐈⬛
この記事では、スマートロックを中心としたハードウェアデバイスが絡むアプリデザインの難しさと、その中で得られた工夫について紹介します。
ハードウェアデバイスが絡む体験との出会い
ビットキーでは、スマートロックデバイスをはじめさまざまなハードウェアデバイスを扱っています。
そのため、UI/UXデザイナーはデジタルな画面上のデザインだけではなく物理的なデバイスを含めた「現実世界とのやり取り」の体験も構築しなければなりません!これがビットキーならではのデザイン上の特徴といえるでしょう🔥
私はこのようなハードウェアデバイスと紐づく体験設計に挑戦してみたいという思いがあり入社しました。
前職ではアプリを使って謎を解き、現実世界で宝探しを行うゲームのUI / UXデザインに関わっていたため、すでに「現実世界に存在するものとの連携」というテーマ自体にはなじみがありました。
ところが、スマートロックなどのハードウェアデバイスは、それらとは異なる性質を持っていました。
例えば、スマートロックデバイスは宝箱のような受動的なただの「オブジェクト」ではありません。アプリとの通信を行い、状態が変化します。電池残量など条件をもったハードウェアデバイスだからこそ生じる課題があったのです。
事例:デザインする上で難しかったこと
🤯 目の前の扉のスマートロックと開け閉めボタン
弊社のアプリには、目の前の扉に取り付けられたスマートロックを開け閉めするためのボタンがあります。ユーザーはこのボタンをタップして解錠を試みますが、タップ後はアプリ画面ではなく扉そのものに注意を向けてしまいます。結果を画面上に表示しても、ユーザーはほとんど見ていないのです…
そこで、視覚以外の手段として、スマートフォンの振動を用いることにしました。触覚的なフィードバックを与えることで、ユーザーは画面を見なくても操作の結果を知ることができます✨
このように、ユーザーがアプリ画面以外にも注目すべき対象が存在する状況では、視覚以外の手段で情報を伝えるフィードバックが重要になります。
今回の例では、操作の成功・失敗をユーザーに伝えるため、触覚フィードバックを採用しました。iOSアプリの場合、Appleが定義している標準的な触覚パターンを利用できます。これらの触覚フィードバックパターンについては、下記のHuman Interface Guidelinesにまとめられています。
触覚フィードバック以外にも、音によるフィードバックが利用できると思います。スマートフォンはユーザーの設定で音が鳴らない可能性があるため、音声通知が必ずしも有効とは限りません。
一方で、音声を自由に制御できるハードウェアデバイスであれば、デバイス自体から音を発することも可能です。これにより、ユーザーがハードウェアに直接触れていなくても、その操作結果を認識できます。
🤯 スマートロックデバイスの設定画面のトグルボタン
アプリには、スマートロックデバイスの設定変更ができる画面もあります。一般的なアプリの設定画面ではトグルスイッチをタップするたびに即時反映されるのが当たり前です。
しかし、スマートロックデバイスの場合はBluetooth通信を行う必要があるため、変更がアプリ上で完了した後もハードウェアデバイス側への反映を待たなければなりません。
当初わたしはこのラグを十分に考慮せず、トグルをタップすれば即座に状態が切り替わるデザインを提案しようとしていました。ところが、実際には設定反映に時間がかかり、ユーザーは何度も待たされることになります…
そこで、複数の設定項目をまとめて変更し最後に「保存ボタン」を押すことで、一括してデバイスへ反映する方式を採用しました。これにより、ユーザーは複数の項目を自由に切り替えた後、一度の通信で全ての変更を反映できます。
🤯 ハードウェアデバイスの種類による難しさ
弊社では、スマートロック一つをとってもマンションの共用部向けから専有部向けまで、さまざまな種類のデバイスを扱っています。それぞれ基本的な機能は「扉の開閉」ですが、設置環境や用途・利用者層によって求められる体験は微妙に異なります。
こうした違いを踏まえると、単に「スマートロック用のUIを作る」だけでは不十分です。各デバイスの特性や設置環境やユーザーが置かれるシーンを整理し、それぞれに適した操作フローや通知方法を検討する必要があります。
おわりに
ここまで紹介してきた例はスマートロックを中心としていますが、こうしたハードウェアが絡むことで生まれる難しさは、モビリティや家電など他のデバイスでも同様に起こり得ます。確かに制約は多いものの、その分やりがいも大きいと感じています。
これからも、さまざまなハードウェア×アプリのデザインに挑戦し、よりよい体験づくりを楽しみながら続けていきたいと思います🌟
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明日、19日目は株式会社ビットキー Advent Calendar 2024は、@otakakot が担当します!お楽しみに🎉