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人ん家のことを言ってる場合じゃないけれど

見に行ったのだ。

1月。出張先の夜をどう過ごそうか。「侍の名のもとに」を見ようと映画館を検索していたら、目に飛び込んできた「TIGERS THE MOVIE」の文字。

知らなかった。タイガースが映画を作っていたなんて。球団創設85周年の記念映画。ウチの50周年は、つばめ刑事だったなぁ。侍は、来週までか。これは、今日まで!?

まぁ、見てしまった。

ストーリーテラーのミスタータイガース・掛布雅之の語りと、タイガース現役・OBのインタビューを交えながら紹介される名勝負。タイガースファンなら垂涎の貴重映像なのだろう。

ヤクルト戦の映像も出てくる。ライト・若松勉。うわぁ。大変だったろうな、甲子園のライトの守備は。どんなヤジが飛んできただろう。若松さんを救いに、今すぐこの画面の中に入りたい。

そんな中、後半で監督・矢野燿大のインタビューが流れた。あの、「矢野ガッツ」について語る。

現役時代は、“野球を楽しむ”なんて余裕はなかった。
だから、今の現役には野球を楽しんでもらいたい。
そう思って“矢野ガッツ”を始めた。
するとシーズン後半、コーチたちが同じく笑顔でガッツポーズをしていた。
自分からそうしてほしいと言ったわけではないのに。

指揮官の気持ちが、チームに伝わった瞬間だった。うれしかっただろうな。聞いているこっちも元気になる、いいエピソードだと思った。阪神というチームがうらやましくなった。

矢野ガッツに苦言を呈する重鎮の野球解説者もいた。指揮官の威厳が薄れる、という意味なのだろう。私は、「まあまあ、そんな堅っ苦しいこと言わないで」くらいに思って受け流していたが、もし本人の耳に入っていたら、迷い落ち込むこともあっただろうと思う。

9月、矢野がベンチで高橋遥人を叱っていたシーンが中継で流れた。しくしく泣く、高橋遥人。こんな時もある。頑張って。そう思いながら見ていたが、なぜ矢野がこのとき高橋遥人を叱ったのか、翌日のインターネット記事で知ることとなる。

点を取られたこと、失敗したこと。そのことじゃなくて、3塁ベースカバーに入らなかった怠慢プレーを叱っていたのだ。

全力で野球をするということ、当たり前のことを当たり前にすること。チームの一員としてそこの態度を信じられなければ、野球が成り立たない。

矢野が笑えなかった厳しい現役時代で培ったものは、チームのために全力を尽くすこと。それだった。

威厳があるかどうかは別として、矢野は選手に媚びて矢野ガッツをしていたわけではなかった。矢野ガッツの矢野の笑顔は、自身の評価には向いていない。チームがベストの状態で野球をすることの、一貫した行動のひとつでしかないということが、よく分かった。

矢野の爽やかな笑顔は、現役時代と変わらない。今の現役で言うと、嶋基宏のような印象だ。嶋も矢野も、野村克也の教え子だね。

人ん家のことを心配してる間に、こっちの足をすくわれたら大変よ。
下から一位だったチームに、そんな余裕はない。ウチだって、必死。
だけどさ。

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この笑顔、私なら見たいけど。

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