敵から送られた拍手 ○T×S●19回戦

え、泣いてる?

私がソファーに着弾した、7時40分。画面の向こうは阪神甲子園球場。映し出されていたのは、今日先発の歳内宏明がマウンドを降りる姿だった。

4回1/3、2失点。このまま投げさせてやってもよかったのではと思うのは、勝負を賭けずに情けを掛ける、無責任なヤクルトおばさんの采配だ。

カメラは、ベンチの歳内を追う。歳内は、今治浴巾の黄緑色のバスタオルで顔を覆う。しばらく表情はうかがえない。泣いているのか?それも分からない。でもきっと私は、歳内が泣いているストーリーを想像していたと思う。

歳内が古巣・阪神相手に先発した。凱旋登板。そう言えるのか。一度は育成契約の時代もあった、歳内。私は、阪神時代の歳内を知らなかった。
だが、小川淳司GMは、阪神時代からその才能を見極めていたそうだ。
いいピッチャーが、四国アイランドリーグで「歳内無双」と話題になっている。声を掛けない理由がない。そうして、ヤクルトは歳内獲得に至った。

初勝利は甲子園だったらしい。相手は、東京ヤクルトスワローズ!燕(縁)があったと、言えるのか。笑

マウンドに向かう歳内に、阪神ファンからも大きな拍手が湧き上がったそうだ。
降板時にも送られたその拍手は、歳内宏明という野球選手を尊敬する、野球ファンの愛情だった。

泣くな、歳内。いや、泣いてもいい。これから、未だ見ぬ野球場の風景が待っている。どうか顔を上げ、これからもたくさん投げてくれ。
今日の“敵から送られた拍手”は、歳内の旅立ちを後押しする、惜別の拍手だ。ありがたい。

頑張れ。頑張ろう。歳内!早く神宮に、“帰ってこい”。

R2.10.16 fri.
T 5-0 S
阪神甲子園球場

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