また、なおみちが私の背中を押した ●T×S○22回戦
私は、広くて、高いところにある野球選手の背中が好きだ。その背中は、たくさんの野球ファンの夢と希望を乗せている。
私はその背中を押したい。
せっかく憧れの野球選手になったのだ。野球選手でいるうちに、思う存分、野球を堪能してほしい。
乗っかるばかりで、その重さに野球選手がつぶれてしまわないように。
いつもそう思っている。
◇◆◇◆◇
今日は祝日。でも私は、朝から出勤していた。午後は在宅勤務。マイペースなものの、気を張る時間は続く。仕事は溜まる一方だ。振り返るとこの数年、うまくいっていない。
なんだか、寝不足だ。変な時間に寝て、変な時間に起きて、不十分な二度寝をして、仕事になんか行くからだ。でもそれには、心当たりがあった。
シーズン中でありながら、オフシーズンが始まった、11月2日月曜日。ヤクルトファンに突きつけられた現実は、過酷だった。
7人の戦力外通告。こんなに一気に仲間を失って、私はどうしたらいい?
たくさんの野球選手が、私の大好きなヤクルトスワローズのユニフォームを着てきた。私は、赤い縦縞のユニフォームを着て野球をするヤクルトの選手が大好きで、こどものころから誇りだった。
しかしそれは、たくさんの野球選手が、ヤクルトのユニフォームを脱いできたということでもある。そんなことに思いを馳せる季節が、またやってきてしまった。
画面の中では、燕軍団が戦っている。そんな姿も、なんだか他人事のようだ。距離を感じながら、仕事を続ける。スコアは1-1のスコアレスドローで延長戦。応燕と仕事。どちらも中途半端。まるで、今の私を表しているようだ。決着がつかない。気は滅入る一方だった。
ホームランというものは、閉塞感を吹き飛ばす。思わず「やったー」と声が出る。近所迷惑ではなかったか。両手が上がる。背中と肩がバリバリと音を立てる。画面の中のビジタースタンドは、跳ねながら喜んでいる。今の自分の姿そのものだ。
延長10回、代打・西浦直亨のホームランで3点追加した東京ヤクルトスワローズが勝利した。
思い出すのは、6月25日木曜日。この日は、もう明日から仕事ができないというくらい、職場に打ちのめされた日だった。
無観客試合だったこの日、スタンドに誰もいない神宮で、西浦直亨が打った逆転サヨナラ3ランに背中を押され、次の日も職場に向かうことができたのだ。
決して大げさに言っているのではない。あのサヨナラホームランがなければ、私はきっと出勤できていなかった。
背中を押しているつもりが、私が辛い思いをしているとき、気づけば私の背後に回り、私の背中を押してくれるのが、西浦直亨という野球選手だった。
そう思い、泣いた。
ありがたくて、泣いたよ。なおみち。
なおみちが壁にぶち当たったとき、私にできることなど、きっとない。それでも、こんな私の人生を救ってくれるなおみちに、私はどうしても恩返ししたい。
せめて、応燕だけでも。声燕も応燕歌も消えた球場でも、どうか、この思いがなおみちに伝わりますように。
最後に勝ったのは、10月24日。8試合ぶり、10日ぶりの勝利。今年はそんな、シーズンだった。
R2.11.3 tue.
T 1-4 S
阪神甲子園球場
ありがとう。頑張ります。
この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?