川端慎吾の教育
フェニックスリーグは、1990年にNPBが立ち上げた「秋季教育リーグ」が始まりの、育成リーグだ。試合経験の浅い若い選手たちが、実践を通して学ぶ場として、シーズン終了後に開始される。
若手の教育の場といっても、一軍の試合に出ている選手の顔も並ぶ。最高峰の舞台を知ってもなお、まだまだ経験を積まなければならない。野球選手は、いくつになっても修行が続く職業だ。いくつになっても。
だからか。だから、ここにいるのか。川端慎吾!
明らかに違う。若手育成の場にそぐわない、まとうオーラ。それでも慎吾は、教育リーグで実践を重ねるオフを選択した。
慎吾は1月、二度目の腰の手術を受けた。どうしても腰の痛みが消えず、バッティングの感覚を取り戻せなかった。勇気を持って、再びメスを入れ、神宮に戻ってきた慎吾。
神宮の有観客試合初戦を引き分けで終えた翌2戦目、待ちに待った慎吾のサヨナラタイムリーで、その苦労は報われた。はずだった。
代打で結果を残せず、シーズン後半ファームにいる慎吾を、私はどう受け止めればいいか戸惑っていた。
腰は大丈夫なのか。大丈夫だったとして、手術前、手術後では、きっと体の使い方は変わっているのだろう。手術前に“戻す”のではなく、手術後の体に合わせて模索しなければならないのだとしたら。
こんな、ベテランと呼ばれる年齢になって、体のコントロール法を再構築しなければならないなんて、とても辛い作業だ。
慎吾が選んだ、若手に交じって実践を重ねるというオフの過ごし方。慎吾の好きなように野球をしてもらいたい。そして、慎吾の野球を見続けたい。その一心で、テレビの前でフェニックスリーグ観戦をした連休最終日だった。
今日の慎吾は、3塁打を含む3安打。慎吾に教育することなど、いまさらないようだ。でも慎吾がいる教育リーグは、慎吾に野球という教育を与えていた。
R2.11.23 mon.
S 5-1 DB フェニックス
宮崎・アイビースタジアム
……雄平みが足りないシーズンだったな。よくない。