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樹理が戻ってきてくれたから ●DB×S○4回戦

原樹理 登録。

待っていた。みんなで待っていた。

原樹理。東京ヤクルトスワローズ、投手。5年目。27歳。

あの!あの、“世紀の大誤審” ならぬ “ただのミス”、真中満の「高山俊交渉権獲得未遂事件」のドラフトで、樹理は東京ヤクルトスワローズに入団した。沸きに沸いた「ガッツポ事変」の陰に隠れたドラ1ボーイだったが、東洋大主将としてリーグ優勝を手繰り寄せたピッチャー。ヤクルト連覇の立役者として、高山同様、慣れ親しんだ神宮で躍動してくれる。いいドラフトだったと喜んだことを思い出す。

人気はすぐ出た。端正なお顔立ちとキャッチーな名前。三人兄弟の末っ子らしく、山田哲人に甘える様子はヤクルトファン界隈に「あざとかわいい」という新たなムーブメントを巻き起こした。なにより、イケメン。写真誌からも狙われる、人気者だ。

私が神宮で樹理とすれ違うとき、一人で歩いていることが多い。ヤクルトファンは優しいとはいえ、万単位で人が集まる野球場は、どんな人がいるか分からない。クラブハウスと室内練習場の往復は、警備員と一緒に数名でまとまって歩くか、自転車移動だ。
危ないと思うのだが、危なくない気もしてしまう。なぜか。

近くで見る樹理が、イメージと違うのだ。

背が高くて浅黒い顔の、すれ違う寸前まで樹理だと気づかないほど、精悍さあふれる青年に、私は何度も驚かされた。サングラスをかけていると、ますます分からない。「え、樹理?」そのくらい、マウンドや画面越しに見る樹理とは乖離があるのだ。

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2019年4月16日。松山坊っちゃんスタジアムで完投勝利を挙げた、樹理。その勝利は、小川淳司監督400勝のメモリアル勝利だった。
完投のボールを監督に渡す樹理。なぜか小川監督は「いいよ」と受け取らない。何度かお互いボールを押し返し合う二人。樹理は、少し困ったような表情で静かにボールを渡す、謙虚な青年だった。

マウンドのガッツポーズもある。ベンチで泣きべそをかいているときもある。
打ち込まれ交代するとき、直前にエラーをし頭を下げる村上宗隆に力強く声をかけながら降板した時もある。

いろいろな表情を見せてくれる、樹理。樹理から目が離せない。
だから、樹理がいない日々は、さみしかった。

樹理が戻ってきてくれた今日の勝利は、あの、重苦しい連敗脱出の、2019年6月2日以来のことだった。場所は同じ、横浜スタジアム。

いい日だ。勝ったからだけじゃなくて、これからまた、いろんな樹理を見られる始まりの日だから。樹理!おかえり!今季初勝利おめでとう。すわほ。じゅりほ。

R2.7.21 tue.
DB 4-6 S
横浜スタジアム

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