熾烈を極めるキャッチャーの争いと、這い上がってきた野球エリート

1勝8敗2分。勝率.111。ここからどうしていくか。このままいくのか、お前ら。

京セラ3連戦の最終日。2連勝の良い流れをつかんで、ここから浮上したい。そんな、正念場の試合で見せてくれたのは、絶対に引かない野球選手の「負けん気」だった。

清水優心

ファイターズは、若いチームだ。ここ2年は方向転換をしているようだが、ドラフトではたくさんの高卒ルーキーを入団させ、育成のファイターズという球団方針を打ち出していた。

そんな中、キャッチャーの二極化という課題があった。本日40歳になった最年長の鶴岡慎也は、兼任コーチとしてマスクを被っているが、昨年、黒羽根利規が退団したことで30代のキャッチャーはいなくなってしまった。
黒羽根がトレードでやって来たのが2017年。当時は、28歳の大嶋匠もいたが、その大嶋も2018年に退団している。

そこでファイターズは、2019年のシーズン途中、トレードで讀賣から宇佐見真吾を獲得した。その下に、石川亮25歳、清水優心24歳と続く。
だが、宇佐見が来た2019年、清水優心は1月に受けた腰椎椎間板ヘルニア手術の影響で、戦線離脱していたのだ。

自分がいないとき、層の厚みを持たせるために実績あるキャッチャーが入団したとなれば、面白くない。術後のリハビリを続ける中で、焦りもあっただろう。

だから、存在感を示す必要があった。

清水優心は、昨日も勝ち越しタイムリーを打ち、プロ初安打の万波中正をホームに帰している。その後、同点に追いつかれ、9回、野村ジェームス佑希の二度目の勝ち越しタイムリーに話題をかっさらわれてしまったが、勝利の立役者であることは間違いない。

郡拓也

郡拓也は、2016年ドラフト7位で、帝京高校から入団した。杉谷拳士、松本剛、石川亮に続く、帝京魂四兄弟の末っ子だ。まだ、一軍経験がほとんどない。
いつも鎌ヶ谷スタジアムで見てきた郡拓也が、今日、プロ初打点をあげた。

清水優心のタイムリーでなお2アウト1・2塁となった場面、石井一成の代打で登場した郡は、レフト前にフェンス直撃のタイムリーツーベースを放ち、ファイターズは逆転に成功する。
終盤のこの畳みかけは、大きい。一気に波に乗りたい場面で、しかも代打で登場した郡が、しっかり結果を出した。

キャッチャーの熾烈なポジション争いに加わりたい。二塁上で力強くガッツポーズを見せた郡の表情に、気迫を感じる。
清水優心の次の打席での、この結果。清水だけでなく、今日は控えだった宇佐見も戦々恐々となる。
厳しい生き残りの世界、神経をすり減らす日々が続くだろう。それを癒やすのは、一軍の舞台で躍動し、勝利を自ら引き寄せること。これしかない。

髙濱祐仁

髙濱祐仁は、清水優心と同じ2014年ドラフト組だ。一昨日のヒーロー、淺間大基とは横浜高校の同級生。淺間が3位、髙濱が7位でファイターズに入団した。
千葉ロッテマリーンズに在籍する髙濱卓也を兄に持ち、ソフトバンクホークスジュニア出身でもある。兄の背中を追って横浜高校に進学し、自身もプロ野球選手になった。

そんな野球エリートの人生に、事件が起こった。2019年オフ、契約解除となったのだ。その後、育成契約を結ぶことが発表され、背番号は「62」から一桁増えた「162」となった。

兄の卓也も、腰椎椎間板ヘルニアの影響で、同時期に育成契約となっている。エリート街道まっしぐらの髙濱兄弟であっても、生き残りは難しいのか。そんな、エリートばかりが集まる場所がプロの世界なのだ。

髙濱祐仁は、育成選手として歩み始めた2020年シーズン、イースタン・リーグで打ちまくった。そして早くも7月に、支配下登録を獲得した。以前の背番号は、もう別の選手のものになっていた。
登録直後に一軍招集された、髙濱。新たな背番号「91」のユニフォームが間に合わず、三桁のユニフォームで出場し、センター前ヒットを放った。

自らのバットで再起を祝った京セラで、今日はホームラン!これがプロ入り初打点になった。相性の良い球場になったのはもちろんだが、同期同級生の活躍に割って入るこの負けん気が、何より頼もしい。

一度地獄を見ている選手の根性は、計り知れない力を持っている

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この3連戦、若い力の躍動を、これでもかと見せつけられた。そして、それがチームに勝ちをもたらした。全員、必死に戦っている。

だから今日、やはり勝ちたかったのだが。勝負の世界に絶対はない。ファンはいくらでも支える。だから、心置きなく野球をしてほしい。

R3.4.11 sun.
B 4-4 F
京セラドーム大阪

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