野球で野球以外を振り向かせる、村上宗隆がつくりあげた付加価値
その姿を見たのは、昨年11月27日のスワローズファン感謝DAY以来だ。
しかし、今日この日を迎えるまで、村上宗隆を見ない日はなかった。
テレビ、新聞、トークライブと、出ずっぱりの毎日。
当然だろう。18年ぶりの三冠王誕生。平成の間に1人しか生まれなかったタイトルを、最年少22歳で獲得した。首位打者、打点王、本塁打王(2021年)も、最年少記録だ。
そして、世界のホームラン王・王貞治(現・福岡ソフトバンクホークス会長)の持つ55本を抜く、日本選手シーズン最多の56本塁打を記録した。
ホームランでは他にも、史上最年少150本塁打、プロ野球史上初5打席連続本塁打を記録し、たくさんの冠を頭上に、セ・リーグMVPに輝いた。
数々の実績を残したことで、スーツ・オブ・ザ・イヤー 、熊本県民栄誉賞を受賞し、第73回NHK紅白歌合戦の審査員も務めた。
まさに、村上宗隆イヤーと言っていい2022年。新語・流行語大賞「村神様」も納得の結果だった。ただし、
ヤクルトファンにとっては。
「村神様? 聞いたことない」「あー、野球! 知らない」。
昭和の時代、「大衆文化」だった野球は今、野球好きが深く掘り下げる「ヲタク文化」に変容した。
誰でもが口にする流行語というカテゴリーに、一部の野球ファンによる造語は、世間に通用していないようだ。
だが、数々の記録を塗り替える村上に、野球ファンがざわつき始めたころ、そのざわつきは、野球以外にも広がっていった。
毎日のように村上の記録達成か? というニュースが流れ、シーズン最終戦で達成した56号を、大々的に放送した。
野球人口の減少も言われて久しい現代で、野球ファンコミュニティもまた、一部のものに留まっている。
野球の衰退を防ぐために、新規開拓を進める方策を考えなければならない。“中の人”である野球選手にできることは、なんだろう。
村上宗隆は、野球を磨くことで、野球以外からたくさんの声がかかり、年末年始、奔走した。
それもすべて、「ぜひ球場に足を運んでください」の一言につなげるため。
自分が球界を代表する選手だという気概を持って、ユニフォームを脱いで仕事を請け負う。勘のいい受け答えと、健康的な肉体、そして、笑顔。
もう自分のための野球だけじゃないという自覚に満ちた村上は、確実に野球の付加価値を上げていた。
そして、野球選手が、野球で、野球以外の世界にある人々を振り向かせるその正当性と、正義。
「村神様」と神格化されてもおかしくない功績だ。
◇
野球ファンは、春季キャンプの始まる2月1日に、新年の挨拶を交わす。
「あけましておめでとうございます」。
そうして、心機一転、新たな年へ一歩を踏み出す。
令和5年の年明けは、オールドスタイルで迎えていた。
村上宗隆さん 23歳のお誕生日おめでとうございます。
新たなシーズンが始まりますね。オフは忙しそうで、寝る暇もなかったと思いますが、体大切に。
あ、あと、私は「村神様」と言ったことはないよ。だって、神様は寝坊しないもん、多分。笑
人間・村上宗隆の野球を、楽しみにしています。
今年も、さあ、行こうか! むねちゃん!
22歳
21歳
20歳