CS考
余談。
私は、CS廃止論者だ。日本シリーズの舞台というものは、1年間戦って掴んだリーグ勝者に用意されている「ご褒美」であってほしいと、常々思っている。
クライマックスシリーズ、略してCSは、いわゆる「消化試合」を減らす目的で2004年にパ・リーグに導入された「プレーオフ制度」がその起源だ。
シーズン成績上位3チームによるトーナメント制の試合を経て、日本シリーズ進出チームを決定する。
3年後の2007年からセ・リーグでも採用され、名前も「クライマックスシリーズ」と変更された。
両リーグでのCS導入から18年が経過している。
導入の目的は、消化試合=順位に関係ない試合を減らすというものだ。それならば、下位3チームにはまったく関係のない話ということになる。
盛り上がっている上位3チームを尻目に、下位3チームのファンは、早々に秋季キャンプの見学に舵を切り、OBその他のトークライブの予約を入れる。
自力優勝消滅、優勝完全消滅となったBクラスのチームは、機会すら与えられない。「弱いんだから当然だ」と言われればそこまでだが。
ただ、消化試合の有り様は、導入当初とは大きく変化している。
たしかに、導入された2007年頃の秋の明治神宮野球場は、ガラガラだった。特にビジターチームの応援席である三塁側内野席からレフトスタンドは、当日券でも確実に入場でき、のんびり野球を見るという独特な雰囲気を楽しむことができた。
しかし現在、イベントや入場者プレゼントの効果で、優勝の可能性が消滅し、消化試合となった後でも入場者数は減らず、ガラガラのスタンドなど遠い昔となっている。
特に、シーズン最終日やその周辺は、試合後に引退選手のセレモニーを開催するため、ファンクラブに入っていてもチケットは入手困難になるほどだ。
2024年の入場者数は、セ・パ公式戦の入場者数が2019年の最多記録を塗り替え、史上最多を更新したと発表されている。*1
消化試合でも、球場は常ににぎわい、入場者数も伸びている。
目的の向こうにある興行収入獲得という目標は、CSに頼らずとも達成可能なのではないか。
ガラガラの球場が懐かしい。
しかし今後、コロナ禍で落ち込んだ興行収入の回復を目的に、試合数が現行の143試合から148試合に増える予定だ。*2
大きな収入源となっているCS制度を止めるという議論になどならないだろう。
私は以前から、ポストシーズンを引き延ばしたいなら、サッカー天皇杯のようなトーナメント方式の別リーグを1か月間で行うのはどうか、という持論を友人に展開し、熱弁を振るってきた。残念ながら、変革する立場にはない。
サッカー天皇杯に倣うなら、NPB12球団以外のチームも参戦することとなるため、全国の独立リーグや社会人、クラブチーム、大学などのアマチュア野球との調整や、すでに行っている10月のフェニックス・リーグ(秋季教育リーグ)との兼ね合いを考慮しなければならない。
最初はNPB球団のみでスタートさせてもいいと思うが、2004年の球界再編問題から構想が見え隠れしている16球団4地区制を視野に入れて議論を進める日が来るかもしれない。
いずれにせよ、選手の体に負担がないような仕組みづくりが条件だ。
オフシーズンも体のメンテナンスや新たな技術の取得で忙しい選手たちを拘束する制度は、もちろんあってはならない。
今季も、ポストシーズン終了は11月3日までかかっている。
私の主張は、「日本シリーズは優勝チーム同士で」、一貫してこうだ。
だからこそ、リーグ優勝からCSファイナルも無難に勝ち進み、パ・リーグ王者として日本シリーズを戦うソフトバンクは、1位のチームが日本一になる権利を持つという付加価値のために、決して負けてはいけなかったのだ。
CS廃止論者として、心底残念に思う。
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