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NHK野球・実況の流儀 ○S×D●2回戦
今日の東京ヤクルト対中日の試合は、CS・フジテレビoneと地上波・NHK総合のダブル中継だった。
試合開始の1時間前から、戸田の試合をイレブンスポーツの配信で見ていた。今日はファーム開幕戦だ。そして、戸田の開幕投手は、あの奥川恭伸。奥川は、1回無失点2奪三振のデビューを飾った。プロ初投球の球速は、自己最速タイの154km/h。デビュー初球がキャリアハイ。やっぱりそうか。そういう星の下に生まれた子なのか。
三元中継のザッピングは、困難の様相を呈した。いや、勝手に困っているだけか。いやいや困ってもいない。楽しい。野球のある日常を堪能した。
地上波中継自体、今はない時代。希少な野球中継の機会を去年の5位6位のチームが担うこともまたおもしろい。いや、この2チームの野球は、本当に楽しいよ。普段野球を見ない人も、おうち時間をおうち観戦時間にしてみてほしい。そう思いながら、NHK中継を見る。
解説は、中日OB・和田一浩。名スラッガーに実況の伊藤慶太アナウンサーが質問する。
「雄平のバットコントロールというのは、どうですか?」
「食らいついていくタイプですが、そういうタイプはボールを追いかけすぎるとバランスをくずしてしまいます。そのバランスを取れればもっと打てると思います。ヘッドスピードが速いですね」
総じて褒めていたのだが、野球の素人のおばさんが拾えた言葉はこの程度。ダブル録画しておけばよかった。しかし、その雄平への助言を聞いた私は、年齢をものともせず「毎年キャリアハイを目指してます」と言い切り、止めに入らないとずっとバットを振っている雄平の将来性を感じることができ、うれしかった。
それと同時に思い出したのが、去年の5月12日、対讀賣戦のNHK中継だった。
ピッチャー・梅野雄吾。ストレートは150km/hを越え、変化球も持ち合わせたパワーピッチャーだ。生来の負けん気の強さもあり、マウンド度胸もある梅野は、セットアッパーとしてキャリアを積んでいる。
梅野がマウンドに上がった時、実況の豊原謙二郎アナウンサーが、解説の大野豊に聞く。
「大野さん、クローザーの先輩として。梅野はまだ二十歳の若い選手です。そんな梅野がこれから成長するためには、何が必要ですか?」
「若い投手だが、クローザーは信頼される人が任される。自信を持って投げること。ストレートを怖がらずに」
「昨日見ていて、ウイニングボールの精度が悪かったが、失敗しても切り替える気持ちの強さ、攻めるピッチングが必要」
「(フォークボールは)ベース前じゃなくて、ベースを通過してからワンバンすること。フォークの落ちる位置の調整は、緩いところからどこでボールを落とすか探る」
「投げ急ぐとすっぽ抜ける。速球に魅力があるストレートはコントロールが甘くなることもあるがそれを恐れていちゃダメ。強いボールを投げている」
抑え・大野豊は、野球が地上波放送されていた昭和の時代に、しょっちゅう見ていた。ベンチから出できた古葉竹識監督が球審にピッチャー交代を告げる。古葉監督の口が「おおの」と動いているのがよく分かる。また大野?毎日投げてるじゃん。ほとんどのピッチャーが中○日と言われている中、何故この人は毎日投げるのだろうと、不思議だった。
ピッチャー分業制創成期に、毎日投げていたレジェンド・大野豊が、豊原アナウンサーの質問に、ここまで答えてくれた。細かなアドバイスは「梅野が成長するために」。指導者としての熱が伝わる、いいコメントだった。
しかし、プロのピッチャーというのはフォークボールの落ちる位置まで調整しているのか。そもそも、調整して何とかなるものなのか。野球のことを何も分からないヤクルトおばさんは、こういった野球の奥深さに触れるたび、どんどん野球を好きになる。
なにより、豊原アナウンサーの「梅野はまだ二十歳の若い選手です」の短いセンテンスに、若いピッチャーへの愛情を感じた。1年経った今でも、マウンドの梅野を見るたびに思い出す、本当にいい実況だった。
▼2019.10.2 wed. ラグビーワールドカップ ニュージーランド対カナダ@大分
豊原アナウンサーの名前は、それから約半年後に聞くことになる。
ラグビーワールドカップ。日本代表・ブレイブブロッサムズは、対アイルランド戦で、前回の南アフリカ戦での勝利をほうふつとさせる歴史的勝利を果たし、その瞬間の、「もうこれは奇跡とは言わせない!」という名実況は有名になった。
豊原アナウンサー自身ラガーマンだったこともあり、スポーツ実況は思い入れを持って実績を積んできた分野だった。「にわかファン」の生みの親でもある。
なんとなく名前に聞き覚えのあった私は、文字起こしのメモを見る。たしかに、豊原アナウンサーだ。あの時の、あの梅野雄吾への愛情を感じた、あの実況の人だ。
実況は、公平でないとならないのだろう。NHKならなおさらだ。しかし、梅野雄吾というピッチャーに焦点を当てた大野豊へのインタビューが公平性に欠けていたとは全く思わない。野球界を担う二十歳の若者を後押ししたいという情熱がなければ、人を惹きつける実況などできないと思う。実際、一視聴者の私は、とても楽しかった。野球ってすごい!雄吾に頑張ってほしい!そうワクワクしながら野球を見ていた。
そんなことを、今日の伊藤慶太アナウンサーの和田一浩へのパスで思い出した。梅野雄吾は、昨日、雨の中打ち込まれ、石川雅規の勝ちを消し、ベンチで顔を上げられず、今日は高津臣吾が「梅野でいく」と公言していた7回の登板もなかった。雄吾。あなたの成長を楽しみにしてくれているのは、監督コーチや、我々ファンだけじゃない。どうか顔を上げて、神宮に来てね。
ヤクルト?今日は、勝ったよ。デーゲームの神宮もまたよろし。塩見がね、初ホームランを打ったんだよ。
R2.6.20 sat.
S 6-2 D
明治神宮野球場