Crew Resource Management についてのお話。
「JAXAの方が面接試験の出題範囲を教えてくれました!」
こんな見出しの記事を書いたら、絶賛勉強中の宇宙飛行士候補生候補生の皆様はこの記事を読んでくれると思いますが、すいません、残念ながらそんな事実はありません。では、もし私が以下のような題の記事を書いたらどうでしょう?
「JAXAの方が教えてくれた、安全の極意が発覚!」
皆さんきっと、このタブをそっ閉じすると思います。ではこれら二つの間にはどんな違いがあるのでしょうか?
今の自分にホントに必要?
二つの題にある決定的違いは、今の自分にどれだけ関係あるかどうかです。水と安全は無料と言われているなか、そんなものは優先順位が低くなります。ではいくらか条件を付け加えてみてはいかがでしょう
上記はパイロットの聖書であるAIM-Jの抜粋なのですが、安全対策の項にデデンと「Crew Resource Management」という名前で掲載され、ほぼ全てのパイロットこれを元に安全施作をとっています。しかもJAXAが全面サポートしているのか、なぜかJAXAの文字が。
加えて、全く同じ内容のものが「ノンテクニカルスキル」という名前で、医療過誤を防ぐ目的で医療チームの方々が使っています。宇宙飛行士出身ソースの2大巨頭であるこれらの職業の人たちが全力で推しているこの施作、知らないとマズいと思いません?
と考えると、自然と知らないとマズい!という気持ちになってくる?と思います。
当事者意識を持つ難しさ
パイロットにとってCRMは口酸っぱく言われ続けるので正直耳タコです。私も頭では分かっているつもりでしたが、とある事件があり、それ以降本気で考えるようになりました。
当時、自分ともう1人にしかできない仕事がありました。非常にワークロードも高いもので、負担があったと思いますが、不思議とアドレナリンが出ていたのか、こなすことができてました。
難しい仕事が終わったあるとき、気が抜けた私は全く関係ないところでとんでもない凡ミスをします。世界中のパイロットが「は!?」と驚くような、前例も聞いたことないような凡ミスです。そのとき、原因究明と対策のために上のCRMロジックがゴリゴリに回されました。その中のひとつに、なぜあれだけ関係者がいて誰も止めることができなかったのか。その理由に「当事者意識がなかった」ということが問題になりました。もちろん状況が状況なら死んでもおかしくないので、この間に死ぬほどCRMについて考えました。
水と安全は本当に無料なのか
安全施作の一番の問題は、知らなくてもなんとかなるし、自分の身に降りかからない限り深く考える必要がないことです。じゃあ安全は無料なのか?というと実際自分の身に降りかかったときに、その対価を目の当たりにすることになると思います。無料より高いものはありません。
また、「CRM」「ノンテクニカルスキル」をおろそかにしている人は、間違いなく仕事を続けていくことができません。なぜならこれは自己能力ピラミッドの土台となるものなので、ピラミッドの天辺にくる「テクニカルスキル」が細いものになるからです。
ちなみに水も無料ではありません。日本にいるとあまり実感が湧きませんが、世界では水源確保を巡り第三次世界大戦を引き起こすのではないかと言われているほど深刻な問題です。詳しくは「チベット 水源」でググってみて下さい。
まとめ
今回は安全施作の内容を記事にしたわけではなく、どうやったら身につくのか、それは当事者意識がなければ永遠に身につくことはないというお話でした。
「私、失敗しないんで。」という某女医さんより、失敗はするものとして、それを如何に対策し、考え続けている人のほうがライトスタッフを持っていると思います。当事者意識がなければ安全施作はまず頭に入りません。なんでも良いので自分の身の回りの事象を当てはめてみて、繰り返してみて、もっと良い方法はないのかな?と探し続けて身についてくるものです。それでも正解に辿り着くことは永遠にないのですが・・・
Aviator.