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独女と結婚。

みなさま、こんにちは。自粛生活で顔がたるんできたので、リフトアップによいという頭皮マッサージをしたら翌朝ごっそり髪が抜けました。じじょうくみこでございます。

離島の民ザビ男と結婚して、もうすぐ5年になります。長い長い5年でありましたが、不思議と後悔したことはございません。そんなわけで本日は、結婚直後に書いたコラムをお送りします。今読むと、ちょっと新鮮。


カモメ


結婚する前、いくか心配ごとがありました。

ひとつは、独身者なら一度は考えるであろう
「長年ひとり暮らししていた人間が、はたして他人と暮らしていけるのかどうか問題」

それから、独女でなくても気になるであろう
「長年都会でひとり暮らししていた人間が、老いた義父母と同居的な環境でうまくやっていけるのかどうか問題」

そして、すべての人にとってかなりのハードボイルドであろう
「長年都会暮らししていた四十路独女が、《全員みな知り合いなムラ社会》でホントに大丈夫なのかどうか問題」

結婚して2ヶ月たった2015年8月。この3つのテーマについて検証してみました。今日はそのひとつについてお話したいと思います。

四十路独女が他人と暮らしていけるかどうか問題

年を取るごとにあちこちから「柔らかさ」がなくなっていくように、独女時代のわたしはひとり暮らしが長くなればなるほど、人に合わせることに億劫さを感じるようになっておりました。

40を超えたあたりからは、しょっちゅう一緒に遊んでいた友人ともたまにしか会わなくなり、好きなものに囲まれた空間で過ごす「ひとり時間」が長くなる一方になっていたのです。

ちがうのちがうの、ひとりが好きなんじゃないの! 誰かといる体力がないの! 結果的に、ひとりなの!

そう思っていましたが、世間的にはただの「年々ひとり遊びがうまくなる女」でしかなかったのでありまして、休日は1日中誰とも話さなかったりして、あまりに喋らなさすぎて休み明けに職場で「おはよう」と言おうとして声ガラガラ、みたいな人生でございました。

そんな感じでもはや誰かが家にいる図が想像できなくなっていたうえに、最初から遠距離恋愛で月に数日しか会えない離島の男と一緒になるのですから、いざ結婚生活が始まった途端に

「あ、やっぱムリでした」

ってなったらどうしよう、と内心かなり心配していたのでございます。

あれから2ヶ月。結論から申せば、率直な感想は


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「おや、意外といけるじゃないか」


でありました。


自分じゃない誰かが、家にいる。
わたしとは違う歩幅で、歩いている。
同じ食べ物を、食べている。
パンイチでゴロリ、くつろいでいる。

そのひとつひとつが、ひどく新鮮。もっと息がつまる感じかと思ったけれど、案外そうでもなかったです。五十路男子、もっと面倒くさいかと思ったけど、存外そうでもなかったです。むしろこんなおもろい人材が51年も保存されてて神様ホント感謝しますって気分でございます。

それにしても、じじょう家は女系家族なので男子の生態についてはほとんど知らなかったのですが、五十路男子のなんという味わい深さよ。

たとえばシャワーに入ったなと思ったら、リビングから脱衣所までの間を点々と靴下、ズボン、ベルト、ポロシャツ、メガネ、それらが脱いだ順番や姿勢までわかるくらい、セミの抜け殻のようにきれいに残されているとか。

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ちょっとしたヘンゼルとグレーテル感


料理とか手元で何か作業しているときは頭にのっけているメガネが、いい塩梅でスルスルと滑りおちて装着される「全自動老眼鏡システム」とか

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玄関先にミステリーサークルができていたから何かと思ったら

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あれな

「セミの幼虫が孵化する前に出てきてたから、かわいそうなので土に埋めてあげた。今日からあそこ進入禁止な!」

って小学生男子的発言を連発したり。


あー、うん、やっぱりちょっと面倒くさいな。

とにかくオッチャンの生態は、まったくもって予測不能。飽きるヒマがありません。せっかくなので、このまま観察していこうと思います。


Text by じじょうくみこ
Illustrated by カピバラ舎

*この記事はウェブマガジン「どうする?over40」で2015年に掲載した連載の内容を一部アレンジして再掲載したものです。


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じじょうくみこ
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