祝宴狂想曲(1) はじまりはいつも姉。
みなさま、こんにちは。「では、また明日」なんて言って3日もあけてしまいました。自粛解除した途端、一気にいろいろなことが動き出して、頭と体がまったくついてこない混沌くみこでございます。
というわけで、前回は5年前にザビ男とわたしが結婚するにあたり、「祝宴を催してほしい」という両方の親からのリクエストを受けたものの、直前にそろって東京祝宴をドタキャンされ、かわりにそれぞれの地元で祝宴を開くという「祝宴全国ツアー」を敢行するハメになったいきさつをお話しいたしました。
東京での祝宴は両親不在という軽く訳ありカップルの挙式風に終了しましたので、今回からしばらく後日談をお伝えいたします。しばらくの間おつきあいいただけますと幸いですm(_ _)m
さて。
まずは島での生活がスタートしましたので、島で祝宴を開くのが自然な流れだろうと思っておりました。いつやるのか、どんな人が来るのかとドキドキしながら日々暮らしていたのですが、実家のザビ家に何度足を運んでも、いつまでたっても話が出てきません。
そうこうするうちに続々とご祝儀が届くようになり(くわしくは「独女と村民」をどうぞ)、いただいたままにしておくわけにもいくまいと、ザビ男と夜な夜な挨拶行脚をした結果、なんとなくそれがお披露目しました的な流れになり。
挨拶といってもひとことふたこと話すだけでしたので、わたしとしては宴席でゆっくりお話を聞かせてもらおう、そんでもってわたしのことも知ってもらえるとありがたい、と思っていたのですが見事に当てが外れました(´Д` )
まあザビパパ・ママもお年ですし、ご祝儀をくださった方も大半が80、90当たり前という想像以上に超高齢メンバー。みんなで食事を共にするのは難しい気がしましたし、そうこうするうちに夏のトップシーズンに突入してシマ島全体が慌ただしくなりましたので、こりゃ祝宴はないな、ということで落ち着きました。
問題は我が実家、じじょう家であります。長年フラフラと生きてきた身だけに、親類縁者こぞって「くみこはもう一生独身だろう」と思いこんでいたようです。そこに「くみこが48にして結婚、相手は50すぎの独身男で結婚後は離島で暮らす」なんていうニュースが飛びこんできたのだからサア大変。母の強い要望もあって、これは是が非でも地元祝宴を!という話が持ち上がっておりました。
とはいえ、なにぶん遠く離れた故郷でございます。ザビ男とわたしは東京での祝宴でほとほと疲れはてておりましたので、じじょう家については地元に暮らす姉・きくえが幹事として仕切ることになりました。
東京では姉も参列してきっちり結婚式をやったことだし、地元では身内だけの簡単な食事会でいいよね、会場や期日、内容については母の好きなように決めてくれていいよ、ということで話は決着。そこそこ高齢メンバーですので、開催時期は真夏と台風シーズンを避け、涼しくなった10月11月に照準を絞ることになりました。
ところが、ひと月たっても、ふた月たっても、姉きくえからいっこうに連絡がありません。しびれを切らせて姉に電話をかけてみると、
「いま休みのたびに、お母さんとあちこち試食に回っているの。もうちょっと待ってて」
え? 試食に行ってるの? 身内の食事会なのに? と思いましたが「どうせならおいしいお店に行きたい」という母上たっての希望らしい。最近は通院以外まったく外出しなくなった母だけに、そういうことなら心ゆくまで食べ歩いてくださいという気持ちですが、看護師で休みが不規則な姉と、週の半分は透析の母がスケジュールを合わせて行くとなると、こりゃ祝宴は年明けかなと考えておりました。
そんなこんなで油断していた9月上旬のある日、姉きくえから電話が。
「10月4日にホテルのレストランを予約したよ。大丈夫?」
「え、いきなり来たね! まあ大丈夫にするよ。いろいろ試食して、そこがおいしかったの?」
「ううん、そこは試食してない」
「え」
「いろいろ考えて、そこがいいかなーと思って」
「あ、そう、まあみなさんがそれでいいなら構わないけど…」
その時点でアレっという気はしておりましたが、期日と会場が決まったことでホッとしたので、そのときはそのまま電話を切ったのです。その後、姉からの連絡は再び途絶えたのですが、シマ島の生活で頭がいっぱいだったわたしは祝宴どころではなく、姉がよろしくやってくれているだろうという希望的観測で放置。それでもあまりにも連絡がないので、気になって電話を入れてみることに。
「例の件って、どうなってる?」
「え? 特に何もやってないんだけど」
「そうなの? 別に普通に食事するだけなら構わないけど…」
「それでさ、くみちゃんにはドレスを着てもらいたいんだけど」
「へ?」
「お母さんがくみちゃんのドレス姿を見たいって言うんだよねえ。どうかな」
「んーんー、まあ…ホントは着たくないけど、お母さんが喜んでくれるならしょうがない」
「いいなあああ、ドレスうううう~~私も着たいなあ❤︎」
「姉ちゃんが着ればいいんじゃない」
「そういうわけにもいかないでしょう~~うらやましいなあ」
「じゃあ一緒にドレス借りたらどう」
「えええ~~\(//∇//)\ それもいいなあ~~いやーん、どうしようう~~~☆*:.。. o(≧▽≦)o .。.:*☆」
「…………」
さすがザビ男と結婚の挨拶をしに行った折、離島に行くと聞いて
離島→南の島→リゾート❤︎
とひとり脳内ヴァカンスを楽しみ始めた女であります。頭はすっかりキラキラお姫様ドレスでいっぱいのようでありますが、
「ドレス着るのはいいけど、10人ぐらいの食事会でわたしだけドレスっておかしいでしょ。せめてお花を飾るとか、何かウエディングっぽくしてくれない?」
「えー」
「えーって何。ホテルのレストランならそういう対応もしてくれるでしょ」
「そうだけどお」
「できないならできないで考えるから、まずは聞いて!」
「うーん…」
「で、ドレスはどこで調達するの」
「えっ」
「えっ」
「わかんない~」
「わかんない~じゃないよ! 姉上にがんばってもらわないと、離島じゃどうにもできないよ。無理ならどこかで取り寄せることも考えるけど、もう9月半ばだよ? これから借りるのは大変だし、頼むから今すぐ聞いてみて!」
「うーん………人生って厳しいね……(´・_・`)」
「いやいやいやいや」
あーそうだったそうだった、このひとはディズニーランドが好きで好きで好きすぎて「ディズニーランドで働きたいなー(//∇//)」とか本気で言い出しちゃうようなビッグスケールきくえ49歳❤︎なのだった。
そんな姉上が幹事をして、コトがうまく運ぶと思ったわたしが甘すぎた。そして予想通り、祝宴の行方はとんでもない事態に発展していくのでありました……。
次回につづく。
Illustrated by カピバラ舎
*この記事はウェブマガジン「どうする?over40」で2015年に掲載した連載の内容を一部アレンジして再掲載したものです。
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