島の朝は、いくさです。
「離島の朝は、早い」
よく聞くフレーズじゃないでしょうか。
早朝まだ暗い頃の、港。海から戻ってきた漁師たちが港に集い、水揚げ作業でおおわらわする、そんな風景。
あるいは、森の中。小鳥のさえずる声、木々のせせらぎ、川の流れる音。自然の中の音は意外と大きくて、めざましの鳴る前から目覚めてしまう、そんな風景。
あるいは、町の中。朝の市場で働くおばちゃんたちのかしましい声、長いエプロンにねじり鉢巻き姿でだみ声をはるおじさんの声。そんな風景。
島の朝というと、そんなイメージがあるんじゃないですかね。
ノンノノン。
シマ島の朝は、そんなうるわしいものでは決してございません。
橋がかかっていない島というのは、船の発着時間に合わせてすべての生活リズムが決まります。人、手紙、宅急便。全てが船で運ばれ、出ていきます。そしてシマ島では、本土からの船が早朝に着いて、いったん他の島を経由して、本土へ向かう船が昼前にやってきます。
夏の観光シーズンになると、船の時間がサマータイムになります。つまり、1時間早くなるのです。来客があると、7時に港へピックアップに行きます。寝坊厳禁。これが意外とつらい。宿を営む人たちは、これを毎日続ける地獄。
それでもシマ島はマシなほうで、もっと本土に近い島では5時台に船が毎日着くらしいから、さらなる地獄です。
郵便局、荷物も船に乗せるので、当日の船に乗せる〆切時間というのがあって、朝の郵便局は長蛇の列。これに間に合わないと翌日まで待つ羽目になり、翌日の船が時化で欠航したりするとさらに待つことになります。〆切厳守。これも地味につらい。
〆切直前に、漁師系のクセツヨなおっちゃんおばちゃんが飛び込んでくることも日常茶飯事。「これ、冷蔵品だから!先にいいわよね!」的な感じで割り込んできます。そこをいかに笑顔で交わすか、静かなる攻防。
ちなみに、シマ島でも朝から虫や鳥が鳴いています。鳥のさえずり、どころではありません。ジージー、ジャンジャン、すいっちょんすいっちょん、景気よくギャン鳴きしていて休めません。
島の朝は、いくさ場です。