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<10>半世紀前のヤマトナデシコ七変化、てか母。

じじょうくみこが誕生して丸10年。というわけで勝手に生誕記念⁉でウェブマガジン「どうする?Over40」に連載していた処女作の「崖っぷちほどいい天気」をこちらに転載しております。

今回は第10回。前回失敗したゲリラ見合いに、なぜかこだわる我が母。理由を探るうちに、母の新婚時代に起きたとんでもない騒動が明るみに……。

50年後は魔性の女として幾多の老人を翻弄している母も、50年前はただの恋に悩む乙女だったという話。

それでは、どうぞ~。


*** 2013年7月13日の記事***

半世紀前のヤマトナデシコ七変化、てか母。



インドのコンカツ事情から目が離せません。

お読みになりましたか、当『別冊どうする40』内でインド在住・青蓮さまが書いておられる『マサラをちょいと〜人生にもスパイスを効かせて』の最新作。「インドは親の決めた相手とのお見合い結婚がほとんど」とインド人の知り合いから聞いてはおりましたが、お見合い相手を新聞で公募するとは知りませんでした。進んでるんだか古いんだかわかりません。

そういえば、お見合いじゃないけどアメリカの新聞にも恋人募集欄があったのを思い出しました。身長・体重・ルックスなどの詳細条件はもちろん「こんな性癖の人募集」と堂々と書いてあったりして「さすがはユナイテッドステイツオバメーリカ!」と感心いたしました。

インドにはインド、アメリカにはアメリカの事情がございます。そして今回は我が「じじょう家の事情」にまつわるお話でございます。

前回、キヨちゃん74歳プロデュース縁談話をいたしました。残念ながら成就はしませんでしたが、「今さらコンカツなんて、どうせ四十路なんて」と固定観念で自縄自縛状態だった私にとっては、肩の力が抜けるいいチャンスになったのでヨシという気分。

そもそも酔っ払ってるうちに始まって終わった見合いなので、そうそう心も痛みません。キヨちゃんも「人の気持ちはどうにもならんし…ねえ?」と相変わらずラブ&ピース&ロケンロールで世界を包み込んでおりました。

ところがひとり母だけが「ダメなの? ねえホントにダメなの? 会って確かめてみたら?」としつこく食い下がってきました。何事に対しても冷めている母が、こんなに熱くなるのを初めて見ました。不審に思って「なんでそんなにトシちゃんにこだわるわけ?」と聞いてみたのです。

「トシちゃんのお母さんのハツエさんには、昔ずいぶんお世話になったことがあるのよ。ほらお母さん、家出した時にいろいろ面倒見てもらったじゃない」

ほらも何もありません。いきなりの飛躍に頭がついてきませんが、家出って何。もの心ついてからこっち、母が家出をしたという記憶は一切ありません。

「あら話してなかったっけ? お父さんと結婚してすぐの頃だけどね、お父さん愛人作っちゃってワタシ家出ちゃったの」


コラコラコラ

いきなりドエラいのブッこんできたな


母はお見合いで知り合った父から熱烈求婚を受けて20歳で結婚し、すぐに姉が生まれて、そのあと私が生まれた…と長らく聞かされておりました。ところが実際は、どうも父には結婚前につきあっていた女性がいたようなのです。その人は、車で2時間ほど行ったA市でスナックだか飲み屋だかで働いていた年上の女性。仕事でA市にひんぱんに行く機会のあった若き父は、何かの拍子でその人と知り合い、ずぶずぶの恋愛関係に陥っていたのでした。

あの父が
あの物静かで優しくて面倒見がよくて
口を開けばオヤジギャグしか言わなかったあの父が
オナラが兵器並みの殺傷力を持っていたあの父が

愛人ですとな?



父の家系はわりと厳格な家だったらしく、「水商売をしている年上の女」と大事な長男を結婚させるわけにはいかなかったのでしょう。父の母、つまり私のおばあちゃんは「直接交渉」の末に女性を父と別れさせ、一方で父と母との縁談を強引に進めたのでありました。

ところが結婚して少したつと、父は再びA市に通うようになり、夜になっても帰らない日もちらほら。不審に思った母は、ようやくそこで父と愛人がよりを戻したことを知ったのでした。

「なにしろ新婚でしょう。お母さん、ショックだわ腹立たしいわでプイッて家出ちゃったのよ。その時ハツエさんがすごく親身になってくれて、おうちにしばらく居候させてもらったり、アパートを探してもらって1人暮らししていたの。半年くらいだったかな。トシちゃんもその頃小さくてね、一緒に遊んだりしてね、なつかしいわあ〜キャッキャ」

それ以来、母とハツエさん一家とは親交が続いていたようで、一番つらかった時に助けてくれたハツエさんと母親思いのトシちゃんに、母が並々ならぬパッションを抱いていることがようやく理解できたのでした。

しかし、もはや私の中でトシちゃんは宇宙の彼方にブッ飛んでいます。問題は父です。どうして彼は年上の愛人に走ったのだろう。そして、どうして母のもとに戻ってきたんだろう。

「お父さんは小さい頃にお母さんと生き別れになったから、年上の女性に甘えたかったんじゃないの。でもその頃ワタシは20歳だったし、女として完成されてなかったから物足りなかったんじゃない」






女として完成されてなかったってどゆことどゆこと、父が帰ってきたってことはつまりお母さんは女として完成されたってこと、だから私が生まれたってことどういうことそういうことヤダこわくて聞けなさすぎるううう〜〜

お見合いデビュー戦の背景に、よもや半世紀前の痴情もつれ話を聞くことになるとは…。人に歴史あり、男女にワケあり。純情感情過剰に異常、あっちもこっちも恋せよ乙女。

くじけず、がんばれオレ。

By じじょうくみこ
Illustrated by カピバラ舎

★おまけの人物相関図★

実家ゾーンが詰まってきた



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じじょうくみこ
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